表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
諸国動乱編
198/227

瑠果の修行日その2

昼、全員から汗を流し、肩で息をしている瑠果は、再び自分の荷物を持って武青山を登り始めた。


「よいしょ、食堂は確か、こっち!」


瑠果はずんずんと食堂へ向かっていく。途中で何人かとすれ違ったので、瑠果はきちんと挨拶をした。


「今日は、ここに座る!」


瑠果は外れの席に座って1人で荷物からクロウの作った昼ご飯を取り出し、周りの目も気にせずもぐもぐと食べだした。


「瑠果ちゃん、隣良い?」

「うむ、涼もまだ食事が必要なのか?」

「うん、金丹期を超えてからはもう食べなくても生きていけるんだけど、癖かな?」

「師匠のか?」

「そう」

「確かに、師匠の飯は美味い」

「それも師匠の?」

「うむ」

「少し貰ってもいい?」

「いいぞ、交換しよう」


他の弟子達からしたら2人はまるで兄妹のようだった。だが、誰も彼らのいう師匠について知らない。曰く、涼の師匠は隠居した物凄く強い老人で、齢2000年を超える本物の仙人だとか、本当は迷いの竹林の奥に住む月からの使者だとか、誰も天仙郷最強格の1人である涼の師匠について本当の事は分かっていなかった。


昼食後、


「ありがとう、涼、では今日は掃除を手伝う」

「助かるよ、最近宝物庫が手狭になってきてね、欲しい物が有ったら隙に持っていっていいよ」

「ありがとう」


瑠果は自分の空になった自分の弁当箱を片付け、足早に掃除用具を取りに行った。


午後、宝物庫の掃除を終えた瑠果は特に何もいただかず、ただ整理整頓をしたり、ゴミを片付けたりするだけだった。


「瑠果~、迎えが来たよ~」

「分かった!今行く!」


瑠果は涼に手を引かれ、そのまま仙船乗り場に向かっていく。


***


今日も師匠が迎えに来た。毎日欠かさず迎えに来てくれる師匠は大好きだ。美味しいご飯もくれるし、暖かい家から追い出すこともない。優しい兄弟子もいるし、私は師匠が大好きだ。えへへ、このままずっと大きくならなければいいな。そうすればずっとずっと師匠と一緒に居られるのかな?


***


「今日も買い物してから帰るか、何食べる?」

「今日もお肉食べたい!」

「またぁ?お前野菜も食べないとダメだぞ、おっきくならんぞ?」

「いいもん!おっきくならなくても!」

「お前なぁ....」


日が沈んできた頃、クロウと共に家に帰った瑠果は、クロウの残した宿題をリビングのテーブルで必死にこなしていた。


「むむむ」

「ん?1つの魔粒子核分裂を起こすのに必要な魔圧は400万オブリュウム、温度は200万マギアフリント、だから....?」

「あっ!分かった!」

「よしよし、瑠果は賢いな」


夜ご飯作りも一段落したので、瑠果の宿題を手伝いつつ、きりの良い所で切り上げて一緒に夜ご飯を食べる事にした。


「「いただきます」」


2人で楽しく食事をした後、一緒に風呂に入り、その後クロウはいつものように外の庭で瑠果と魔法を見せる事にした。


「<鏡の世界>」


世界を反転させ、まずはいつものように瑠果の最近の修練の調子を見る。ふむふむ、順調な様子。仙気も充分操作できるし、魔気との親和性も日に日に上昇している。


「<魔炎鉄槍>!」


瑠果はクロウが用意した泥人形を容赦なく魔法で貫く。火土混合魔法も問題なく使えている所から、瑠果の魔法の腕前も上がっていることが見て取れる。


「いいね!しっかり勉強できてるな瑠果、偉いぞ!」

「えへへ」


クロウは瑠果をなでなでする。


「よし瑠果、たまには俺もいい所を見せよう、宿題の内容は覚えているな?」

「うん」


クロウは身体中に魔力を循環させ、体内の魔素粒子も加速させる。その過程で、クロウの身体は暴風を伴いながら浮かび上がる。


「仙壁」


世界を隔てる強力な防壁で瑠果を守る。クロウの周囲は既に魔力圧と高速高圧加速させた魔粒子の影響でズタズタに引き裂かれている。


「第四法則歪曲、魔粒子集合体出現、加圧開始」


クロウはそれほど遠くない場所に青い球体を出現させる。そして手を伸ばし、そのまま<見えざる悪魔の右手>と言うスキルで圧縮を開始する。


「400万オブリュウムまで少し手動だと時間がかかるが...しっかり見ておけよ瑠果」


クロウはさらに力を入れていく。青かった球体は手の中で赤くなっていき、更に橙色に、黄色に、青色に、そして最終的には白色の光を発しだした。


「<イフリート・ハンド>」


今度はスキルで高温を発する左手を出現させる。そしてそのまま右手を握りしめたまま左手は加熱を開始した。


「200万マギアフリント、瑠果、ここから瞬きするなよ?」


クロウは左手に力を入れ始める。そうして加圧と加熱、双方共に臨界点に達すると、糸が切れる音と共に白い球体が破裂した。


コンマ数秒で尋常ではないほどの光と熱量を発し、際限なく膨張するその球体はあっという間に周囲を破壊、蒸発させ、次に瑠果が目を開いたとき、見知った世界は全て廃墟と化していた。


「これが魔素粒子核分裂、いわゆる魔核崩壊だ。俺のいた世界ではこれを兵器運用してたんだが、それ以外にももっと安全に似たようなエネルギーを引き出す事の出来る方法もある。だが、それはまた今度の授業で話そう」


クロウは廃墟の中で立ち尽くす瑠果の肩を叩いて、彼女の意識を引き戻す。そうして魔法を解除し、いつもの天仙郷に帰ってきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ