御隠居様クロウ
中央山脈の山頂、大陸中の勢力の交差点にして、<柱天山>と山頂にて、クロウは北燕商会の副会長に今後の事について話し終えた後、クロウは背伸びをした。
標高8000mを超えるこの山頂は、凍えるように寒く、尋常じゃないほど空気も薄い。そんな場所の頂上にクロウは魔法で1つの石碑を掘って設置した。その後、その石碑を中心に長距離テレポート魔法も設置する。8000m峰をそのまま登らせては流石に過酷すぎるので、少し低い標高5000mほどの山にも同様にテレポート用の石碑を設置する。そうしてクロウはこの標高8000mの山頂に龍の心臓が結晶化した魔石、魔龍石を取り出し、その巨大な魔龍石に複雑怪奇な魔術刻印を施すことにした。空間置換に環境安定化、時間鈍化に生体素質の向上、その他数多くの天変地異を引き起こせる力の素を発生させるための魔術刻印等を施した。作業自体に3か月ほどかかってしまい、出来上がるころには北燕商会は既に大陸中の裏世界を完全に掌握していた。
「出来た!ぶあぁ!つっかれた~」
最後の刻印を終え、その場にへたり込むクロウ、後は少し休んだ後に魔石を柱天山の心臓部分に打ち込めばクロウの目論見は成功する。
クロウの無際限のMPをほぼ全て使用した魔術刻印は、もはや世界構築に等しい効果をもたらす。クロウは極・MP回復ポーションを飲み、自身のMPの8割を回復する。そうしてクロウは魔法で自身と魔龍石を浮かび上がらせ、底から更に上空、標高1万mを超える地点まで浮かび上がる。そうして魔龍石と自身に高圧凝縮した魔力を身に纏う。魔龍石は刻印が消えないように、自身に纏うのは打ち込むため、そうしてクロウは魔龍石を山頂の山穴に固定し、魔龍石に時間停止魔法をかける。そしてクロウは自身のステータス任せに無数の蹴りを入れる。数分後、時間停止魔法を解除した魔龍石は、蓄積したクロウの力によって一瞬で柱天山の最深部まで深々と打ち込まれた。
「やべ!」
死火山だったはずだが、魔龍石の刻印のせいか柱天山のマグマが加熱され、噴火しようとしている。クロウは急いで魔法で柱天山の山穴付近を囲み、周囲に壊滅的な被害が及ばないようにする。10分後、大陸中を震わすような爆音と共に、柱天山は噴火した。だが、クロウの空間魔法によってそのマグマは他の国に被害を与える事は無く、ただ標高8000m地点で何か見えない力に支えられるように、流動を停止した。そうして1か月をかけてゆっくりと冷えていき、標高8000m地点に大きな大地を生み出した。
クロウは完全にマグマが固まる間、魔法で柱天山の登山路を整備する。アイテムボックスに無数にある石を利用して、階段を作り出し、標高5000mの石碑までに階段は約6000段ほどになったが、まあ大丈夫だろう。その作業が終わった後、クロウは再び標高8000m地点に戻った。もう1か月以上かかっているが、まだまだ冷え切っていないようなので、クロウは大規模時空間魔法を利用して時間を加速させ、マグマを冷やしていく。
「よし、じゃあ準備も出来たし、完全に起動するか」
クロウは細い魔糸を火山穴から魔龍石の場所まで細く垂らしていく。そうして魔龍石に触れると、魔糸を経由して魔龍石に膨大な起動魔力を流し込みだした。
「うおおおおお、めっさ吸われる!」
メルティにドレインされたかと思うほどの勢いでMPを吸われていく。クロウのMPの半分ほどを吸い終わった後、魔龍石は大陸中に轟くような龍哮を上げ、巨大な金色の龍の虚影を空に浮かびあげ、そのまま柱天山に潜り込んだ。
「よし、成功した!」
クロウは魔龍石に刻んだ魔法の1つに、空間構築と言う物がある。つまるところ、クロウの柱天山の標高8000mに、天仙郷と言う新しい小型世界を構築したと言う事だ。
「実績<創世神>を達成しました。神格を昇格させます。おめでとうございます」
長い事忘れていたシステム音が響く。確か以前に半神とかなんとかになったはずだが、今回の行為で完全な神格を獲得したようだ。まっ、そんなことはさておき
「ここに好きな家を作るぞ!」
クロウはアイテムボックスから惜しみなく貴重な素材を使用して、数多くの巨大な邸宅を作り出す。この小型世界、天仙卿は数多くの動植物を内包しており、彼らもクロウの魔龍石の影響を受けて、生物としての力を日に日につける事が出来る。まるで伝説の生き物のように鯉は龍へ、火鳥は朱雀や鳳凰に、人は仙人になれるような、そんな世界だ。クロウは早速北燕商会の中の最も信頼する部下に知らせを入れる。
数週間後、訓練されたクロウの手下も流石に6000段の階段はキツイようで、彼らは肩で息をしていた。
「全員か?」
「はい、マスター、北燕商会の中上層部メンバー約80万人全員ここにおります」
「よし、じゃあ1人ずつ石碑に触れてくれ」
クロウは一足先に石碑に触れて天仙郷に転移する。クロウが転移を終えた後、すぐに次々と北燕商会のメンバーもやってきた。