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勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
諸国動乱編
191/227

ホタテから真珠へ

クロウは魔法で巨大塩田のプロセスを加速させ、結晶池に早速析出直前の塩水を流し込んだ。そうして海水も蒸発池に流し込み、残りは太陽光に任せて2人は古い壊れた桟橋の跡地へ向かった。


「これは...まあ直せばいけるか???」

「お恥ずかしい、私も申し訳程度に使っているだけで..」

「よし、直そう」


クロウは近くの山から魔法で木材をあっという間に作り出す。それと同時に古い桟橋を完全に破壊して、アイテムボックスからも耐潮性のある釘を取り出す。そのままクロウは新しく大きな桟橋を作り出した。大きくて巨大な桟橋は作業中に大きな音を出してしまい、おかげで周囲の村人もクロウの作業を見に来た。


「よし、巨大な豪華客船が泊まれるくらい巨大な港を整えよう」


そうしてクロウの急な思い付きにより、桟橋は巨大な鋼鉄の埠頭に様変わりした。


「うわぁ!すっごい!」


アサリが数少ない語彙力で必死に鋼鉄の巨大埠頭を形容している。村長も巨大なクレーンや鉄のコンテナ、さらにいつの間にか現れた蒸気船に腰を抜かしてその場に座り込んでしまった。


「停泊場所に余裕があるな、小型ヨットもいくつか作るか」


クロウは再び魔法で木々を裏山から引っこ抜き、小型ヨットをいくつか作る。その後、クロウは<スキャン>機能を使って海底資源を再び探す。埠頭と蒸気船に大量の鉄を使ったので、ホタテ村の豊富な海底資源を問答無用でアイテムボックスにしまう。


「村長、今まで黙っててごめんな」


クロウは意を決したように空に魔法で信号弾を打ち上げる。北燕商会の紋章が空高く打ちあがると、数分後には、水平線の彼方からクロウの作った蒸気船よりさらに数倍大きな蒸気船が5隻やってきた。


「マスター、ご指示を」


クロウの作った埠頭に北燕印の蒸気船が停泊する。そして天高く聳える蒸気船から無数の人物たちが降りてくると、全員クロウに元へ跪いて指示を待った。


「この村が気に入った。1年で巨大な港町にしてくれ」

「了解しました」


クロウの指示を聞いた身なりの良い男は、直ぐに手下に村長を連れて村の現状を聞き出した。村長は質問攻めにされて驚いていたが、彼らは大まかな話とクロウの作った装置や塩田を見ると、直ぐに発展計画を書きだした。夜にはクロウと村長と彼の三大巨頭会議のような晩餐会が行われ、翌朝には村長の全村会が終わると同時に、北燕商会のホタテ村開拓が始まった。


熟練の建築家や鍛冶師、その他大勢の人物がホタテ村の開拓を始めた中、クロウは村長と共に村の展望台で話をしていた。


「恩師殿、まさか貴殿があの北燕商会の管理人だったとは」

「ここまで名が知れているのか?」

「もちろんですとも、北燕商会は既に全国各地に支店を構えております。近くの町にもいくつか北燕商会の支店があり、私達も時に食料品や日用品を買いに行っています。彼らは決して我々の獲った海産品を押収したりはせず、市場価格でいつも買ってくれるため、我々の命綱でもあります。恩師殿、こんなに良い商会を、心からお礼申し上げます」


村長は土下座しそうな勢いでクロウに礼を言った。


「村長、良いんですよ、私はここの村の温かさに惹かれました。なので、この村を発展させようと思ったのです」

「ありがたや、ありがたや」

「さて、村長、今は北燕商会だけですが、今後はこの村の、<ホタテ塩>を中心とした観光名所として売りだしていくので、忙しくなりますよ」

「お任せください、私にできる事があればなんでも!」


そうして北燕商会でもホタテ村の塩田から作られる塩、ホタテ塩を売り出し、その美味しい味に引かれ、櫂国だけではなく、他国にも流通するようになり、宣伝効果も相まって、数多くの商人や商会がホタテ村にやってきた。そのおかげで、噂が噂を呼び、多くの村人がホタテ村に帰還。それだけではなく、多くの近代的なレストランや民宿を新しくやってきた商人達が作り上げたおかげで、人が人を呼び、たった1年の間にホタテ村は本当に付近の町を超えるほど豊かな街になった。


***


「クロウ、行っちゃうの?」

「ああ、ここの街はもう俺が居なくても大丈夫だ」

「兄ちゃん!行かないでよ兄ちゃん!ずっと一緒だって言ったじゃん!」

「アサリ!」


アサリは荷支度をするクロウの足にしがみつく。昔はクロウの太ももくらいしか背丈が無かったのに、いつの間にかクロウの腰まで背が伸びていた。


「シャコ、アサリ、泣くな」


クロウは2人に小さな貝殻で作ったアクセサリーを渡す。それはまだ村が小さかった頃、2人で海辺に遊びに行ったとき、日が沈むまで必死に探した<虹色貝>の殻だった。綺麗に加工されたネックレスは、光に照らされると虹色に輝く。


「いつか、お前たちが大きくなったら、また会おう」


クロウは2人のほっぺに口づけをする。そして彼は北燕商会の貨物船に乗り込み、ホタテ村全村民に見送られて、出航した。


夜明街(イェミンガイ)


ホタテ村の特産でもある、夜に発光する真珠、夜明珠にちなんで付けられた大陸南部有数の一大商業都市であるこの街は、そこから更に発展し、中小国レベルの資金と武力を手に入れる事になる。


それからさらに数年後、夜明街は<真珠>と呼ばれる稀代の才女、アサリと<瀧の忘れ人>と言われるシャコの2名によって、櫂国の国王選出に影響を及ぼせるほど富貴福沢になった。

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