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勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
諸国動乱編
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ホタテ村

ホタテ村で暮らしてから数日、クロウはホタテ村の現状を理解した。一言で言えば、ひもじい。産業と言う産業は無く、せいぜい村人が日がな釣りに出て食料を確保する。村税を用意できるのは船と4人の娘を持つ村長だけで、他の男手も若人が2名しかおらず、彼らも近々町に入って仕事を見つけに行くと言う。


「兄ちゃん、なにしてるの~?」


村長の四女、アサリはまだ10歳ほどの年齢で、元気わんぱくな少女だ。彼女は村長の養女であり、実の娘ではない。


「こらアサリ!危ないから作業中のクロウには近づいちゃダメって言ってるでしょ!」

「お、アサリお帰り、今日は何か捕ってきたのか?」

「おう兄ちゃん!今日は貝と蟹を取ってきたよ!」

「でかした!今日は御馳走だ!」

「えへへ~」


クロウは魔法をいったん中止し、アサリを頭を撫でる。そして彼女の手から蔦で編んだ籠を受け取ると、クロウは村長三女の<シャコ>に渡した。三女のシャコは村長の実の娘でもあり、特徴は背丈の高さと天性の怪力だ。おかげで未だに嫁ぎ先が見つからず、ずっと村に残って村長とアサリの面倒を見ていた。


「シャコ、そろそろ昼にしようか」

「分かった。準備をしてくる」


クロウが魔法を使えるのは既に村中に知れ渡っており、村人たちのためにクロウは惜しみなく巨大な海水浄化装置を作った。土魔法で巨大な窯を作り、圧力魔法と火魔法より強力な火炎魔法で強固に固めた窯の上部を炭や灰で黒く塗り固める。同時に窯の内部を上部と下部で分け、中央をくり抜いて筒状にした竹で繋げる。アクアランドや海水浴所規模の超巨大なこの海水浄化装置は上部だけで10万リットルの海水を貯蓄できる超巨大装置だ。上部で10万リットルの海水を太陽光により煮沸させ、蒸気はクロウ特製の逆凸の蓋を伝って上部と下部をつなぐ竹の管に落ちるようになっている。そうして下部にも10万リットルほどの蒸留水が溜まるような部分を作り上げている。それにより、村人は毎回水を使うたびに加熱式の海水浄化装置を使わないで済むようになった。


今クロウがやっているのは、天日塩の大きな畑である。クロウの裏には大きな平地が広がっており、満潮に成っても半分ほどしか海水が流れてこない。そこでクロウは村長に確認を取って、巨大な塩田を作ろうとしている。櫂国では塩の販売は自由に許可されているので、クロウはほぼ1年中雨の降らない、巨大な平地のあるここは天日塩を作るのに最適な場所でもあった。


「最初の村興し場所も内陸へ入るための山道を超えなければならず、一体どうやってこの村が出来たか疑問に思えてきた。だが、村の裏の山を越えると大きな平地が広がっていたので、クロウはまずは自分の家の付近に小型の塩田を作り、上手く機能するのを確認してから村の裏の山への道を整備し、より巨大な塩田を作る事にした。


1か月後、残念ながら村の最後の若人達は反対を押し切り、山を越えて町へ向かった。そうしてクロウだけが唯一の村の若人になった。


「調子はどうですかな?恩師殿」

「村長、だからクロウと呼んでください」

「いえいえ、そういうわけには貴方様は村の恩人です。巨大な浄水装置に、山の開拓、更には巨大塩田まで」

「何を言うんですか村長、これから村は大きく発展しますよ」

「あっはっは」


村長はクロウの言葉を社交辞令だと思ったが、当のクロウは既に未来が見てていた。ホタテ村は小さな村だが、クロウはここを貿易の要所として発展させれば、絶対に将来の一大都市になると見込んでいた。そのためにも、まずは塩田を作り上げた。


家の裏の塩田は地面に3つの大きな穴とホタテ村周囲の高い耐塩性の植物で作った梯子と仕切りで区切る。3つの穴はそれぞれ海に近い場所から貯水田、蒸発田、結晶田。それぞれ仕切りの上下で海水が流れ込むようになっており、貯水田は潮の満ち引きを利用して海水を引き込む。そうして海水を十分に引き込んだら仕切りを開いて貯水田から蒸発田へため込んだ海水を流し入れる。ここでは太陽光と潮風を利用して海水を蒸発させる。そうして塩の析出が始まる直前に最後の結晶田へ塩水を流し込む。それを繰り返すことで、大量の海塩が生成される。クロウは魔法を使ってこのプロセスを加速させた。そしてうまく機能する事を確認し、村長と共に家の裏の塩田を見てもらった。


「これは、売れますな!」


聡い村長はクロウの自宅の裏の小型塩田を見て、眼を見開いた。それから村長の承諾を得て、クロウは魔法で山道を歩きやすいように整備する。余分な木々を切り崩して村に運び、急な道は魔法で切り崩してできるだけ平らにする。そうして荷車を引っ張ってなんとか通れるほどなだらかな道の整備を終えると、クロウは改めて巨大塩田予定を確認する。潮の満ち引きの大まかな具合を調べ、早速巨大な穴を掘りだす。垂直距離で10m、幅6kmの巨大な穴を3つ掘り、同時に耐塩木をつなぎ合わせた仕切りを3つ作って設置する。そうして穴を掘り終わり、仕切りも設置し終わった後、クロウは村長を呼んできた。


「村長、この仕切りには滑車とてこの原理で....簡単に言うとこのひもを引っ張れば巨大な仕切りが上昇する。手を離せば勝手に降りていくよ」


クロウが作った簡易チェーンブロックで実際に仕切りを開けてみる。ゴゴゴゴと言う音と共に仕切りが上がり、轟音と共に貯水池から蒸発池へ海水が流れていく。もはや池に等しい広さのこの装置は、村長は魔法使いであるクロウしか動かせないと思っていたが、クロウに実際に装置の操作方法を聞き、試しに鉄の鎖を引っ張ってみると、村長のような老人でもゴゴゴゴと仕切りを開くことができた。


「この鉄の鎖は!?この装置は!?」

「鉄鉱石は海の底から取ったものだ、この装置は、まあ後で説明する。とりあえずこれで塩田は上手く機能するから、次はこの塩を売る方法を考えよう」

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