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勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
第一章 アズガルド大陸
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新学期開始です

それから数か月、教材に則り授業を進めていく。そうしているうちに、西部学園でも冒険者クラスだけでなく、一般クラスや貴族クラスの新学期も始まった。特待生寮もあっと言う間ににぎやかになり、学園はいつもの賑やかさを取り戻した。同時に、この学園内の矛盾も見えてくる。冒険者クラスは実力至上主義で、派閥争いなんてなく、危険な職業上、常に綱渡りな生活をしているので、魔法だろう魔術だろうと使えればなんでも使うと言うのが皆の心持ちだ。だが、魔法至上の貴族級や貴族クラスから非常に快く思われなかった。


「失礼する!」


いつものようにクロウが授業をしていると、金髪碧眼の青年が子分らしき人を二人連れて乱入してきた。


「ここが特別教諭のクロウのクラスか?」

「そうだが?」


クロウが少しドン引きしながら答える。

(見た目からして貴族って感じだが、上に立つものとしての教養とかそういうのないの?ノブリスノンオブリージュなの?)


「なんとみすぼらしい!愚民が使いそうな小賢しい技をこんなに多くの人に教えるなど、もはや我々への侮辱だ!」


(は??)

手に持ったチョークが半分に折れる。


「クロウ教諭!どうやら貴方もそこらへんに座っている愚民と同じ無能な教師のようだな!」

どうやら目の前の青年は<鑑定>に近い()の魔法かスキルが使えるようで、Lv30くらいのクロウを学園を騙して教諭を騙った詐欺師かなんかだと思っているようだ。

「拾え!詐欺師め!」


足元に投げ捨てられた左手の手袋を拾い上げる。確か拾えば決闘受諾の意味があるとどこかで見た事がある。


「馬鹿め!我は貴族級勇者/聖人クラスのクラウディア!その名を墓にもっていくがよい」


第一決闘場で戦闘着に着替え、貴族特有のレイピアを持ち、貴族特有の天性のMP量を大雑把に使った技術も何もないただ才能に甘えた魔法で攻撃してくる。クロウは魔王や魔帝の祝福があるので、魔法や魔術、魔導など魔素を含む攻撃は全て吸収できるが、他の生徒はそんな事も知らず、ただ魔法を延々ぶつけられているクロウ先生を心配するだけだった。


「クラウディア、お前は魔術は小賢しい愚策だと言ったな」

「そうだ!」

「ならこれはどうだ?」


クロウは右腕に刻んだ増幅術式の6%にMPを通す。そのまま右手を地面につけると、いつものような声で、


「クラスⅧ魔術発動<悪夢の世界(ナイトメアワールド)>」


クロウの腕から黒い触手が地面に伸びていく、その触手は数を増し、増しに増し、最後にはクロウとクラウディアを完全に包み込む巨大な半球体を形成した。皆が息を呑み、集中して状況の変化を確認しようとすると、


「あああああああ!やめて!やめてくれぇえ!痛い!苦しいぃ!」


中からクラウディアの悲鳴が聞こえてきた。喉を引き裂くような心の底から放たれる人間の慟哭と悲鳴は、異様なほど他の人に深く届く。


「嫌だ!頼む!許してくれ!いやあああああああ!ああがああああああ!」


再びクラウディアの悲鳴と懇願が響き渡る。それは止むことがなく、その場にいる全ての人間のキモが冷え、気分が悪くなったくらいに、黒い半球体はゆっくりと解けるように中にいる二人の姿を観衆に晒した。その場から何も動かず、ただ服の右袖を丁寧に下ろしているクロウと、地獄で長時間苦しんだかのような普通の人ではできないような苦しみの顔のまま気絶したクラウディアが身体からさまざまな液体を漏らしながら地面に倒れていた。クラウディアの取り巻き二人がかたき討ちをしようとクロウに襲い掛かるが、クロウの紅い眼を見ただけで怖気づいて、気絶したクラウディアを担いで逃げるように治癒室に向かった。


数日後、クロウはクラウディアの実家、西部王国3大貴族であるブルレー伯爵家に来ていた。


「貴殿、クロウと名乗ったか」


クラウディアの父、ブルレー伯爵が直々に聞いてきた。


「は!伯爵、その通りでございます」

「愚息が悪い事をした。すまなかった」

「!?」


西部貴族は誰もが傲り高く、貴族と皇族以外は全員見下していると聞いたが、クロウのような一般教諭に謝罪するとは思っていなかった。


「だが貴族として、このままと言うわけにはいかない」


そういうとブルレー伯爵は威圧をかけてきた。本人の性格通り、研鑽を重ねた結果の実力だろう。


「一体、なにをすれば」

「仕事を一つ頼みたい」


ブルレー伯爵曰く、伯爵領の南部に神出鬼没の青い狼が出ると言う。数多くの冒険者や軍隊を派遣したが、全滅に合うか、一晩中探しても見つからなかったの結果だけだった。そんな伯爵領南部、ブルレー森林の中、クロウはすんなりと噂を神出鬼没の青い狼にあった。どうやら<ファントム・ウルフ>と言うモンスターで、きっと神聖魔法やそれに類する何かに怯えて、隠れていたのだろう。クロウはあっという間に手なずけると、翌日、ブルレー伯爵に討伐した証拠としてダンジョンで倒した<ファントム・ウルフ>の魔石を渡した。


伯爵はクロウの働きに感謝すると、この件は今後追求しないと言ってくれた。

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