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勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
諸国動乱編
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幽燕公の日常その6

午前の授業が終わった後、クロウは食事を作った。軽めの食事を作った後、今日は沢山頭を使った2人の為に甘いデザートを振舞った。


「あ、甘い!」

「うん、砂糖、おいしい?」


彩花は驚いたようにクロウの方を見る、クロウはあまり甘いものは得意ではないので、少しだけ食べた。香織は幸せそうにプリンを食べている。今日は簡単なプリンを3つ作った。2人ともと言うか、やはり甘味が嫌いな女性はごく少数なのだろう、2人とも昨日よりも目を輝かせて食べていた。


午後は2人と共に身体を動かすため、散歩に出かけた。2人からしたら本当にただの散歩だが、クロウは<スキャン>が使えるので、どれだけクロウの幽鬼隊がやってきたか確認している。北燕商会の系列店も幽燕邸の向かいにいくつか建っており、居酒屋や果物店など、バレずに周囲に上手く溶け込めていた。


***


夜、2人が寝静まった頃、クロウはこっそりと家の向かいの酒館のドアを開ける。少なくない金を費やしているようで、魅惑的で蠱惑的な服装の美女がこぞってクロウの元へやってきた。クロウは彼女達に引っ張られるまま2階へ上がっていき、最奥の部屋へ入った。クロウを腕を引いていた2名の美女は、ドアが閉まったのを確認すると、そのまま部屋の奥の本棚の内の1つの本を押す。すると、傍の机の上の金属飾りが一回転した。もうクロウはその金属飾りに魔力を通すと、金属飾りは緑色の光を短く発し、本棚の前方の床がパカリと空いて、階段が現れた。クロウはその階段を下っていくと、大きな円卓が見えてきた。


「お待ちしておりました、マスター」

「おう、首尾はどうだ?」

「幾国内は全て把握しました。表面上は燕国に従っていますが、実質的に北燕商会の支配下に入っています。二代目城主も既に更迭され、新城主は私たちの人間です」

「よし、引き続き全国各地へ勢力を拡大、網は広ければ広いほどいい。だが欲張るなよ?」

「はっ!」


北燕商会議、商会長であるクロウが定期的に開いている会議であり、商会の軌道確認とクロウの計画について話す機会でもある。


「兵隊はどうなってる?」

「幾国内の兵力は全て移動完了しております」

「何?100万人全員か?」

「はっ」

「ならば幾国は今どうなっている?」

「訓練を終えた新兵と、入れ替わりでやってきた燕国民が多くを占めています」

「ふむ、まあ異常に気づかれなければ問題ない」


クロウはその後、いくつかの事を彼らに伝え、秘密会議を後にした。


***


翌朝、今日は香織と彩花が食事を作るとの事なので、クロウは一足先にハンモックチェアで二度寝をしている。


「クロウ様?クロウ様、クロウ~」

「あべ、あ、起きた、起きた起きた」


眼を開けると、香織がクロウのほっぺをぺしぺししていた。朝食は既にテーブルの上に並べられており、ゆで卵、粟のおかゆ、塩漬け大根の薄切りと言った物凄く質素なものだ。


「お、おいしいじゃん、香織が作ったの?それとも彩花?」

「ゆで卵は私、他は全て香織様が作ったものだ」

「驚いた、今後の食事は任せても良さそうだ」

「お任せください」


香織は上品に笑いながらそういう。3人とも食事を終えた後、学習の間で今日の勉強を始めた。


「ごめんくださ~い!お届け物でーす」

「私が出てくる」


彩花が一足先に部屋から出て、玄関の方へ向かう。暫くすると、入り口から大きな罵声が聞こえてくる。


「北燕商会の肩を持つ恥知らずめ!」

「下がれ!ここをどこだと思っている!」

「知るか!貴様らも北燕商会などと言うぽっと出の汚い商会の手先なのだろう!」



クロウと香織も授業どころでは無くなったので、2人とも玄関へ向かう。それなりに頑丈にしたつもりだが、玄関のドアは既に破壊されており、10人ほどの荒くれ者を引き連れた肥満体の中年が彩花を囲むようにして、罵声を浴びていた。その横では食料や日用品を届けに来てくれた北燕商会の人(確か新編成された幽槍隊所属の百人隊長)が怯えており、何やらただ事ではなかった。


「すみませんが、ここは私有地ですので」

「黙れ!貴様がこの家の所有者か!」

「そうですけど」

「聞け!貴様は北燕商会に与するものとして、この俺燕継(えんけい)様が直々に処罰してやる!王族である俺の商会、燕継商会を使わない者は全てこの国への反逆者だ!」


ちらりと横を見ると、香織が真っ赤な顔で怒っていた。彩花も既に戦闘態勢を取っており、彼女も怒り心頭と見える。


「彩花、お前が守るべきは香織だろう、下がれ」


クロウはそう言いつつ、彩花の方へと向かう。彼女もクロウと言葉を聞いて、思い出したように軽業でスタッと香織の横に立って周囲を睨みつけた。


「さて、何をしたらここから引いてくれるんだ?」

「ふん、貴様がこの家の利権書を差し出したら許してやる」

「お前正気?幽燕邸知らないの?」

「新しい将軍なのだろう?知っているとも、だが王族である俺の手下でもある」

「はぁ....」


なんでやろうなぁ、軍功足りないのかな?


「ふっ!」


クロウはステータス任せに拳を振るう。クロウと中年の近くに立っていた荒くれ者の首から上が脳漿をまき散らしながらはじけ飛んだ。


「帰れ!」

「貴様ぁ!俺の手下に手を出して、ただで帰れると思うなよ!」

「継!何してるんだ!おい!」


外から流征の声が聞こえてくる。


「馬鹿!幽燕公だぞ!」

「流征!だがこいつは!」

「うるせぇ!今すぐ来い!」


残った9人の荒くれ者と共に、流征は継の首根っこを掴んでその肥満体を物ともせずに外へと引きずっていく。

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