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勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
諸国動乱編
178/227

北陸三か国統一戦その3

人の焼け焦げた臭いが充満する、崩れ落ちた悲惨な建物と今だ火の燻る街中に、クロウは馬に乗ってやってきた。前線の城の1つであるここは悲惨な敗残兵達が集まる、崩れ落ちる寸前の城の1つでもあった。


「その恰好、燕国からの救援ですか!?」


包帯を乱雑に巻いた兵士の1人が馬に乗ったクロウを見つけると、声をかけてきた。


「ああ、耀幽候のクロウだ」

「く、九郎将軍!?耀幽候の九郎将軍!」

「将軍!?」

「おお!将軍!」


敗残兵達の目に光が宿る。馬から降りたクロウの周りに、すぐに彼らはぞろぞろと集まった。


「動ける奴はいるか!ひとまず生きてる奴らを全員集めてくれ!」


クロウは魔法で周りの瓦礫を一旦傍に集める。ある程度綺麗に片づけたらアイテムボックスから大きな炊き出しセットを取り出し、クロウは燕国でも移動用に貰った馬を殺して炊き出し用に料理しだした。クロウが数時間かけて馬肉のひき肉が入ったおかゆを作り終わる頃、この城にいる3000人の敗残兵が全て集まった。


「手が空いている奴は仲間の分まで持って行ってくれ、大丈夫だ、たっぷり作った!急がず、並んで1人ずつ受け取ってくれ!」


彼らのために大きな器を取り出し、1人ずつ器ぎりぎりまで盛り付ける。彼らはおかゆを受け取ると、まずは自分の腹を満たし、その後手の無い仲間の兵士や、足の吹き飛んだ仲間、眼の見えない仲間のために他の兵士同様、クロウも彼らのために少しずつおかゆを飲ませた。


「将軍様!将軍様!まだおかゆはありますか?」


いつのまにか城下町に住んでた一般人たちもやってきた。クロウは彼らにも分け隔てなくおかゆをよそう。だが彼らには負傷兵と敗残兵の手当てをするように言った。幸い、まだ多くの人が残っており、クロウは城下町の人々と共に、不器用ながらも手当てを続けた。日が沈むころには全員の手当てが終え、多くの兵士達が眠りについた。簡易治療ができない、やり方が分からない食事を終えた一般人には、付近の敗残兵が集まる街や城に行き、彼等にここで炊き出しを行う情報を広げるように言う。


(何人明日起きられるのだろうか....)


まだ新大陸には高級医療器具がない、神聖魔法が使えない限り、大量出血や下半身を吹き飛ばされた彼らは、ゆっくりと死を待つしかなかった。


翌日、3000人の内、2600名は再び朝を迎える事ができた。


「将軍!しょう、ぐん!」


他の場所からもぞろぞろと敗残兵が集まってきているおかげで、最終的には6000人ほどに膨れ上がった。少なくないが、十分とも言えない。クロウはある程度の見張りを城門の上に残し、残りの兵士や城下町の民と共に一緒に崩れ落ちた建物の材料を整理しだした。木々と鉄、そして石や竹は折れていてもまだ使える。クロウは兵士に動けない兵士約2000名を城下町で休ませ、まだ動ける4000名にそれぞれ仕事を割り振った。


1000名は残った食料をかき集めるために、城の裏山へ野草やキノコ、木の実、城内の猟師と共に動物狩りに行かせる。1000名は城門の修復や臨時住居を作らせる。できるだけ安全な場所で多くの人々が泊まれる場所を作る。1500名は街の鍛冶師と共に兵器開発を始める。クロウは片手でも弾ける簡単なクロスボウと、スクラップから作る、多少は使える鉄矢じりのクロスボウ用の矢も作る。残った500名は付近の斥候と周りの城の敗残兵も引き続き捜索させる。クロウはいつプレイヤーの傭兵団がここに戻ってくるか分からないが、少なくとも彼らがここの噂を嗅ぎつけてやってくるまで多少の時間はあるだろう。


***


<フェルンライオネル>


プロチーム、<キングライオネル>の傘下のギルドチームの1つで、彼らは今回、獅国に傭兵団フェルンライオネルとして応援に駆け付けていた。もちろん応援と言っても貰えるものはしっかりと巻き上げている彼等である。平均レベル200を超える彼は、前線に同じようなプレイヤーがいない事を確認すると、一瞬で燕国の軍隊を押し返す。獅国の兵士込みで5万対20万の戦線は、たった100名の傭兵団に崩壊させられた。燕章将軍と、彼らの率いるクロウの兵でもある鬼槍隊は全て戦死、流征将軍は生き残った幽弓隊4名に無理矢理連れていかれ、現在燕国へ大至急撤退中である。


そんな彼らも次々と獅国領内の燕国に占領されていた城を次々と奪取し、どんどんと押し返していく。そうして燕国に取られた範囲の三分の二を取り換えした頃、フェルンライオネルの代表は、とある空城に敗残兵が続々と集まっていると言う知らせを受け取った。


「あのNPC、確か流征か?まあいい、どうせ既に破壊し尽くした城だ」


傭兵団団長は適当に3人のプレイヤーを敗残兵の集まる城へ派遣した。移動には少し時間がかかるが、まあ長くて3日で片付くだろうと思っていた。


***


それから1カ月、城内の修復やクロスボウの生産が終わったクロウは、500名の斥候部隊の中から100名ほどの密偵、いわゆるスパイ育成に取り掛かった。今や1万人ほどの小規模な規模に膨れ上がったここに、フェルンライオネルが気づかないはずもなく、彼らの動きを監視するためにも、この100程度のスパイ集団を訓練する事にした。同時に、クロウは城を守るための特殊なバリスタ、いわゆる連弩の開発にも成功した。レバーを引くだけで巨大な矢が攻城兵器を破壊する巨大連弩や、命中精度は悪いものの、1秒に1本矢を撃ちだせる小型連弩の開発にも成功した。以前に作った弓矢は控えとして、クロウは小型化、量産化に成功した連弩を扱う兵営、連弩営を設立した。大きな連弩は持ち運びは大変だが、事前に矢を所定の場所に入れておけば、レバーさえ引ければ腕だろうと脚だろうと頭だろう使えればいいので、負傷兵や欠損兵でも再び戦場に戻る事が出来た。そうして着々と城と城下町の立て直しをしている頃、フェルンライオネルの隊員達がこちらにやって来ていると言う知らせをクロウはスパイ部隊から受け取った。

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