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勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
諸国動乱編
172/227

芝﨑城防衛戦

明け方、梧国の兵士達は一晩中とっくに矢を撃ち尽くし、クロウを除く既に芝﨑城へ補給も兼ねて帰還した弓兵を探し回ってまともに寝られなかった。と言うか、クロウが<同化>スキルを使っているせいで彼の位置も見つけられず、それに加え、途切れなくクロウが永遠に矢を撃ち続けるせいで、彼らはひたすら机の裏や盾など兎に角隠れられるものを探してずっと営地中バタバタしていた。だが、そんなものはクロウの弓の前では紙に等しく、安心して隠れた者を机や盾ごと安々と撃ち抜いていった。


同時に、営地から逃げて付近の森や草原に逃げ込んだ兵士はクロウの召喚獣である<変異型鎌鼬(へんいがたかまいたち)>に<風刃>で首を刎ねられていった。鎌鼬は普通のLv30程度のモンスターで、小さいながらも強力な風の刃を飛ばしてくるイタチだが、クロウがそのモンスターに<魔族の種>と言う魔法で作り出した遺伝子変異を引き起こす種を植え付け、強制的により強力な変異型モンスターに魔改造したのである。1日程度しか生きられないが、頭が2つ生え、黒紫色のサイほどの大きさに増幅し、風の刃を飛ばす尻尾は3つに分裂した。それを梧国の兵士が逃げ込むであろう場所に大量に配置することで、営地から逃げ出した兵士達も一人残らず殺していった。


「ただいまー」

「お!九郎!帰ったか!」

「おう、俺の部下の軍功精算は終わったか?」

「ああ、督戦隊の奴らが保証してくれたよ。お前の部下は全員平均して100人射ち殺してる。ふざけたほどいい腕前だ。全員最低でも百人長になれるよ」

「そうか、じゃあ俺は何になれるんだ?」


クロウは巨大な袋の中からゴロゴロとジャガイモのように梧国の兵士の頭をその場にぶちまけた。クロウは頭を狙うと頭部が炸裂すると気が付いたので、最初の指揮官らしき存在を除く他の敵兵は全てクビや胴体を狙った。それにより、どこから飛んでくるか分からない矢に全員怯えてまともに動けず、クロウはドッペルゲンガーと言うスキルを使って自分そっくりの分身を作り出し、引き続き矢で敵兵をけん制しながら、死んだ奴らの頭を回収していった。


「ひえっ!」


クロウの死体袋を見た城主がその異様に腰を抜かす。経験の浅い新兵の守城兵はその有様を見るだけでその場で朝食を吐き出した者も現れた。


「う、わぁ、九、九郎、とりあえずしまってくれ」


流石の燕章も十五もその異様さに顔を顰めてクロウに袋に戻すように言った。


「あっ、これマジックバッグなんだ。見た目以上に入るから、俺の軍功よろしく」


クロウは督戦隊の人に再び袋を渡した。督戦隊は虚偽の軍功報告を防ぐための存在、彼等の統計した殺敵数のみが軍功として数えられる。それにより、彼らに首を渡せばそれは全て確実な数となる。だが、クロウのような常識外れの数は、彼等でも暫く数えるのに時間がかかるので、その間クロウは燕章達とこれからの防城戦について話し合った。


「恐らく相手は今日、痺れを切らして攻め込んでくるだろう。まだ相手の中に<プレイヤー>がいるのは確認できていないが、戦が始まればそれもすぐに分かる。それに暗殺者も既に紛れ込んでいるかもしれない。気をつけろよお前ら」


その後も簡単に作戦を言い、全員所定の位置に着いた。


「九郎、お前も準備は出来たか?」


クロウと十五は城門の上で最初に弓を撃つ役となっている。できるだけ多く、一人でも城に近づく敵兵を減らせられればそれだけでも防城戦では大きな手柄となる。


「ああ、出来てるよ」


クロウは自分用の<青鋼大弓>を十五に見せる。


「そいつの事じゃねぇよ、プレイヤーだよ」

「え?」

「お前もそうなんだろう?()()()

「なっ!?」


十五は悪戯っぽくクロウにそう言う。


「いつバレたんだ?」

「そんなに大量の首を並みの人間が持ってこれるわけないだろ」


十五は小さく笑いながらそういう。


「もし向こうにプレイヤーが居たら、その時は頼むわ」

「十五....」

「九郎!お前には別動隊に任命する!任務は1つだけ!相手の大将の首を取ってこい!」


十五はみんなに聞こえるほど大きな声で言う。


「分かったよ、死ぬんじゃねぇぞクソ野郎」

「そう簡単にくたばって堪るかよ」


クロウは十五と拳を突き合わせる。そうしてクロウは手下を連れて、再び城の裏門から出陣した。


「十五!構えろ!来たぞ!」


梧国の営地から巨大な魔法陣が現れる。それは燕章だけではなく、城門に立っている存在全てが確認できるほど巨大だった。


「構えろ!構えろ!来るぞ!盾兵!味方を守れ!」


その巨大な魔法陣からは大きな火の球が作り出され、そのまま城門へ<豪火球>が飛んで行った。


***


「クソ、クラスⅤの豪火球、ぜってぇプレイヤーいるだろあれ」


クロウは飛んで行った魔法を見て、舌打ちをしつつ駆け出す速度を上げる。城門にはその1撃で既に焼け焦げ、崩れ落ちる寸前と言える。だが第2射はすぐには飛んでこなかった。手下の弓兵は既に4人1組に分けており、各々彼らには営地付近の逃亡予測地に散らばるように言った。そして既に城門は開かれ、芝﨑城からは既に2万人ほどが城門を守るように陣地を構えている。十五達弓兵はもう既に矢を放っており、未だに腹痛と頭痛が治らない彼らは弓兵の良い的だ。


暫くしていると、各地から合図となる笛矢が放たれる。発射位置から全員きちんと所定の場所にいる事を確認したクロウは、自分の両足の魔術刻印10%に魔力を通し、巨大な召喚陣を彼らの後方に展開した。


「古の英雄、勇猛不退の戦士、いでよファランクス!」


クロウの召喚陣から金色の鎧を着た戦士達が現れる。短い服に要所のみを守る鎧を身に着け、左手には重厚は円盾、右手には磨かれた巨大な槍を持っていた。皆鍛え上げられた歴戦の体つきをしており、彼らはお互いを確認すると、その盾を槍で叩き、コートを翻して<ウォークライ>を上げた。芝﨑城への侵攻軍はそのウォークライに引かれ、動きを止めて後ろを見る。すると彼らは黄金色のハリネズミのような存在がじりじりとこちらにやって来ているのに気が付いた。お互いをカバーするように前後左右びっしりと密集した陣形がその凶悪や槍を突き出してこちらにじりじりと近づいてきている。梧国の兵士が試しに弓で上へ矢を放っても、その陣形は天から降り注ぐ矢も防げるほど隙間なく防がれていた。


***


クロウの召喚したファランクス部隊に対して何を思ったか、梧国の兵士は一部の兵力を割いて突貫を開始した。梧国の兵士は現在15万人ほどおり、クロウのファランクス部隊は約1万で構成されている。4万人ほどの兵士がファランクス部隊に接敵したが、彼らはそのまま槍に貫かれ、盾の群れに飲み込まれ、そのまま内部で串刺しにされた。次々とまるで食事のように敵の兵士を飲み込むファランクスはあっと言う間に4万人を全て死体に変えていく。そうして勢いを失った梧国の兵士は左右から逃げようとしたが、クロウの配置した弓兵達が次々と1人残らず射貫いていく。


「怯むな!怯むんじゃねぇ!俺の魔法がもうすg...」

「みぃつけた」


豪火球を使ったであろうプレイヤーが耳元にクロウの恐ろしい声が届く。彼は驚愕した顔で後ろを振り返ったが、死ぬ直前に見えたのは飛んでくる3つの弓矢だけだった。


「敵将!討ち取ったり!お前ら!降伏しろ!」


クロウは姿を現して包囲された梧国の兵士達に大きな声でそう告げる。前方を守城軍、後方をクロウのファランクス軍、左右をクロウの手下である弓兵に囲まれ、そして指揮官であるプレイヤーと副指揮官達もファランクスに串刺しにされたか、クロウ達を始めとする弓兵たちに射貫かれて死んでおり、彼らは諦めて武器を捨てて降伏した。

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