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勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
諸国動乱編
165/227

城下町到着

大旗市大旗城城下町、辛王国で最も栄えている三大王城の一つ。旗女市がその繁栄を見せるまでは無数の娯楽と辛王国中の品々が集まる一大都市でもあった。


「いらっしゃい、おひとりで?」

「ああ」

「1名様ご来店です!」


入城料を払い、馬車で出会った子供とその母に別れを告げ、クロウは近くの酒館(しゅかん)に入る。居酒屋と似た酒館は、キャバレーに似た商いをしており、クロウはケチケチせずに2人分の嬢の値段を払って料理と酒を注文した。


「初めましてお兄さん、お相手させていただきます」

「初めまして、お相手させていただきます」

「あっ、はい、よろしく」


現実でも付き添いでしかキャバクラに行ったことがなく、初めて1人で行ったときはものすごい重量級の嬢にさんざんボッタクられた記憶しかない。だがゲーム内ならNPCでしかないため、下手な事もされないだろう。


(スキャン)


---

名前:ミルフィ

武力:50

知力:51

政治力:40

統率力:50

魅力:64

特性:歌上手<歌唱時、魅力+2>

スキル:<歌唱>

---


なるほど、こちらの美女は歌上手なお姉さん。ではこちらは?


(スキャン)


---

???

---


(???)


何も表示されない?どういう事だ。新たに追加されたスキャン機能はNPCを....まさか


(鑑定)


---

名前:梨々花

メイン職業:暗殺者

サブ職業:薬剤師

<ステータス>

Lv:140

HP:2400

MP:1500

筋力:180

体力:600

敏捷:1782

精神:870

堅剛:490

知力:240


<加護>

武王

<呪い/祝福>

武王の祝福:戦闘時、筋力体力俊敏および堅剛を10%上昇させる

<天賦の才能/天与の才能>

特になし

<前世>

---


(プレイヤーか、しかも俊敏クリティカルヒット&アウェイ型)


「お待たせしました~」


店の従業員が酒と料理を持ってくる。金には困っていないので、一番いい酒と一番いい料理を粗方頼んだ。出された料理を見てみると、固形食ではなくきちんとした料理で安心した。


「わー!すごい!こんないっぱいの高級な料理、初めて見ました!」


NPCの方の嬢がすぐにそういう。流石に手馴れてるな。どうせならと思い、クロウもできる限りアニメに出てくるような悪徳大官を思い浮かべてそんな風にふるまう。


「げはは!そうだろう!そうら、こいつはおまけだ」


NPCの方の嬢に金貨数枚を渡す。ゲーム内通貨を外貨に換算し、その外貨を日本円に換算すれば数十万円分は渡した。


「やったぁ!ありがとうございます!」


NPCの方の嬢は上機嫌になり、酒を注いで適度にボディタッチもしてくれる。梨々花というプレイヤーの方も負けじとこびへつらって来るが、彼女には別の用がある。彼女には金貨を渡すついでに魔法で作り出した小さなメモ紙を渡した。渡す際に彼女の耳元でその名前を呼んだので、きっと俺がプレイヤーであり、しかも彼女を鑑定したと気づくだろう。


食事を終えた後、クロウはそのままその酒館の3階に上がる。3階の一番奥の部屋にカモフラージュ用の荷物を置き、クロウは改めて城下町散策へ向かった。


「安いよ安いよ!今なら2匹で銀貨1枚!」

「旗女印のガラス細工、売ってまーす!」


城下町から主城へ行くその通りは最も多くの店が並ぶ繁華街でもあり、きっと夜遅くになってもここの歓声は変わらないだろう。


「焼き鳥、たれと塩1つずつ」

「あいよ!」


クロウは屋台で買った美味しそうな焼き鳥を食べつつ、クロウは面白そうなものを次々と買っていく。大旗というだけあって、軍旗や小さな旗を中心に売っていた。


(軍旗ね)


現代のケータイのような通信器具がないこの時代、多くの部隊や軍隊は旗手と言われる人たちが旗を振ってお互いを知らせる。進撃、撤退、左へ展開、右へ展開など、数十万の兵士に見えるように振るうには、自然と並みの人間では持ち上げられないほどの巨大な旗になる。そんな軍旗を長時間震える旗手を辛王国のために多く輩出した場所、それがこの大旗県だ。旗女村は女流旗手を輩出していた村、この大旗城は、クロウが今立っている城下町からも見えるほど巨大な旗をその城に差し、初代城主の功績と彼に匹敵するほどの優秀な旗手を多く輩出していた場所でもある。


***


「クソ!何もない、なんだこのしょぼいものは!」


梨々花は先ほどの客の部屋にこっそり入り込んでおいてあった荷物を漁る。彼が名前を呼んだ時、梨々花も<鑑定>を男に向かって使用したが、全て不明としか書かれておらず、彼のアイテムを鑑定しても、所有者不明としか情報が出てこなかった。梨々花は彼と自分のレベル差が開きすぎている事による現象だと気づいた。


「クソ、行くしかないか....」


***


夜、酒館の裏口にて、暗殺者用の認識阻害の黒い服を着た人間が壁に背もたれて立っていた。


「またせたか?」


黒い服を着た人間は声のする方を見ると、昼に自分と食事をした男、クロウがのんびり歩いてきた。


「......」


黒い服の人間は何も言わずにそのまま腰に差していた短刀を抜く。月明かりに照らされた青いその両短刀は、容赦なくクロウの首元めがけて飛んでくる。それをクロウは手を振り払って魔法を使おうと手を掲げたか、弾いた短刀の位置と、それと対称の位置にそれぞれ出現し、同時にクロウに斬りかかる。


「@(#&*(^$@」


クロウは何かつぶやくと、足元に黒い魔法陣が生成され、そこから一瞬で無数の黒い触手が伸びてきた。それは両方の黒い服の人間を縛り上げると、そのまま魔法陣の中へ引きずり込んだ。

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