流浪のクロウ
ポータルを抜け、目を開けると、そこは.....
「助けて!助けて!誰か!」
「ひゃっはー!金目の物と女は一つ残らず持ってけー!」
山賊襲撃の真っ只中だった。
「いやいきなりこれかよ」
そこそこいい服を着ているクロウはすぐに山賊達の目に留まった。
「おいそこの男!金目の物は全て置いていきな!さもなくば」
「<エアニードル>」
いつぞや武器庫を襲撃するときに使用した魔法を使う。山賊達にしてはずいぶんとみすぼらしい服を着ており、やせ細った彼らの脳天にクロウの魔法は安々と突き刺さる。数秒後、クロウの目の前にいる山賊達は次々と頭がはじけ飛び、それを見た他の山賊達は「頭の敵~!」と言って突っ込んでくるが、同じようにクロウの魔法で次々絶命する。クロウは村の中で生き残っている男手と共に村々の家を周り、一人だけを残してお楽しみ真っ最中の残った山賊共を殺して回った。
「ああ、ありがたや、ありがたや、貴方様は救世主様ですじゃ」
「あっいや......実は.....」
クロウはその場で話をでっち上げる。
「なるほど、山奥で仙術と魔術を研究している学者で、今回は初めて山から下りて諸国を巡るおつもりなのですな」
「そうなんです、おばば様、この村の事をおしえてくれませんか?」
クロウ達の話している横では既にクロウの洗脳術により、洗いざらい自分たちの拠点を吐いた山賊が手足の筋を切られ、村人達にボコボコにされている。
「この村は旗女村。私は村長のサチエです」
「これはどうも、しがない学者のクロウです」
サチエを名乗る老年のおばあ様に習って同じように一礼するクロウ。
「私たちのいるこの場所は大陸の西に位置する辛、辛王朝第三代目辛成王が統治する県、大旗県の中の小さな旗女村です。村の人口は100名にも満たない小さな村で、女性が多いこの村は、元々は軍旗を掲げる女旗手を多く輩出する村でした....」
そう言いながらサチエ村長は自分の腕をまくり上げる。いやムッキムキやないかい、その腕の太さはもうあのガリガリの山賊の首を片手で握りつぶせるほどの太さやろ。なんで負けたんや。
「ですがこの通り、我々は軍旗を持たなければその力を発揮できず....堕落した王と権力を持つ宦官が王に代わって政治を行っており、それと同じように腐敗した県官のせいでもう何もかも息をしておらず、毎日非常に生き辛い....クロウ様も見た通り、我々はこの様です」
「そうか.....」
以前と大違いのこの現状に、クロウは少し辛くなった。
「クロウ様はこれからどうするのですか?」
「一期一会、折角の機会だから、みんなの生活を少し良くしておくよ」
クロウはそう言いながらまずは足元の泥まみれの地面を整地する。折角だから魔法使いのようなコートと大きな三角帽子を被る。
「おお、これが魔法、魔法なのですな」
「そうだよ、一瞬でこうやって着替えたのも、これから使うのも、みんな魔法さ」
クロウはアイテムボックスから杖を取り出す。そしてそれっぽく空中をなぞると、火の手はすぐに止まり、ボロボロだった家々はみるみると綺麗になっていき、荒れた地面はみるみると綺麗になっていく。荒れた畑も、壊れた家畜の柵も全て直っていく。
「ありがたや!ありがたや!」
クロウは空中から降りて、再びいつもの服に着替えた。
「すまない村長、少し力を使い過ぎた、よかったら今日は泊めてくれないか」
大嘘である。だがまあ村人全員に依存されても困るので、これからの事についてこっそり村長と話し合う事にした。
夜....
「ありがとう、サチエさん、助かったよ」
「いえいえ、村を元通りにしてくれて助かりました」
「うーん、そうだ村長、とりあえずこれからの事を話そうと思うんだけど」
「はい、もちろん、何かありますか?」
「まずは....今困っている事について聞きたいな」
「わかりました.....」
村長はぽつりぽつりと話していく。
(スキャン)
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名前:サチエ
武力:50/62
知力:48/60
政治力:42/54
統率力:53/63
魅力:50/55
特性:筆頭旗手<先導者として彼女が軍旗を持てば武力+5、統率力+5>
スキル:千人長<千人規模の人間を不自由なく指揮できる>
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(反乱待ったなし)
もしかしなくても元先鋒兵長だったのだろうか。
「村長、明日みんなを集めてくれ。みんなの素質と才能を見たい」
「もしかして貴方様は<天眼>をお持ちで?」
「天眼?」
「はい、天から与えられた人の才能を見抜ける眼です」
「あー、うん、そうそうそんな感じ」
「ありがたやありがたや、わかりました、早速明日、全員を集めましょう」




