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勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
学園都市ロゼ編
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シャルの修行その3

翌日朝、目を覚ましたクロウは少しの肌寒さを感じつつ、いつの間にか還った樂羅に心の中で感謝を告げ、空いた皿を片付ける。そして移動用のエインヘリアルに換装し、朝の肌寒さを感じつつ空を飛んで一旦寮に帰った。


軽くシャワーを浴び、素早く制服を洗濯、乾燥させ、改めて着替え、酔い覚ましのポーションを飲み、一般区画の模擬戦闘場ルーム10に向かう。


シャルは既に来ており、朝ご飯のサンドウィッチを食べていた。


「おはよう!クロウ!」


シャルはクロウの姿を見るやいなや飛んできて、クロウに桜との修練を始めたいと言った。


「英雄召喚:<二枝一花>九重桜」


いつものようにルームのタッチパネルにロックをかけ、時空間魔法で時間を加速させ、桜を召喚する。


「む?来たか」

「おう、今日も頼むわ」

「あい分かった」

「そうだ桜、樂羅って知ってるか」

「樂羅?宮内の名匠じゃなかったか?簡単に会える者ではないから、名前くらいしか知らんな」

「ほい桜、これ。シャルにはこれな」


桜は真打の方を、シャルには影打の方を渡す。シャルは樂羅の打った影打の<陰><陽>のその軽さと手馴染みさに喜んでいた。桜は真打の<陰><陽>の刀身を見て、険しい顔になった。


「そうか、これほどの業物が....惜しいな....」


遠くを見て、過去の記憶に思いを馳せる彼女。その顔には苦渋と後悔、そして安堵と慈しみが浮かんでいた。


「シャル、この真打は今のお前には早い」


桜はクロウに優しく返す。


「いつかお前が私を超えた時、そしてその影打で斬り伏せられない敵が現れた時、再びお前の心が折れそうになった時に使うがよい。それまではその影打で十分だ」

「えー!そんなぁ!」

「ほう、私の決断に文句があるようだな、ならば今日からは真剣で斬り合おうではないか」

「え?」


シャルは「マジで言ってる?」と言う顔を浮かべているが、桜が腰に履いた二本の真剣を抜いて斬りかかる構えを取っている時点で、シャルも急いで影打の<陰><陽>を抜いて構えた。


***


軽い。羽毛のように軽いこの刀は激しい鍔迫り合いにも耐えられるようで、既に数時間と打ち合っているが、まるで刀が欠ける様子は無い。それどこから打ち合えば打ち合うほど手に馴染む。振るうたびに身体に溶け込むように、体と混じるように、両腕から刀が生えているような気持ちだ。


***


「む?面白い....」


桜はシャルと斬り合っている中、そうつぶやくと、さらに速度を上げた。もはや今のクロウでは1振りのはずなのに3回、4回と刀同士がぶつかる音が聞こえてくる。目で追えなくなってきた。だが双方共に心の底からお互いを切り伏せんと刀を振りかぶっている。そうしてさらに数時間が経った頃、桜がシャルの両刀を弾き飛ばし、一旦の休憩となった。桜は昨日のように団子を取り出し、シャルも特に躊躇うことなく全て平らげる。


そうして3人で少し休憩を取り、クロウが取り出した水を飲んでいると、桜がおもむろに語りだした。


「シャル、お前に舞い上がられても困るが、これは事実なので言っておく。今のお前は私の技の5割を覚えただろう。この調子でいけば、明後日には私の奥義を教えられると思う」

「え!?いつのまに」

「ああ、青は藍より出でて藍より青し、という言葉があるようにお前は私の弟子の中であの小童以上に才能がある小娘だよ」

「えへへ、ありがとうございます」

「おう、だがな、シャル、覚えておけ、殺意と闘志は使うもので、使われるものではない、決して囚われるな」


桜はシャルの額を指さしながらそういった。その瞳には深い後悔と無念が潜んでおり、シャルは彼女の真剣な眼差しを見て、同じように真剣に見直した。


「さて、休憩も終わったし、続きをしよう」


桜は再びその両刀を抜き、シャルも同じく両刀を抜いた。クロウは彼女らの死合いを尻目に、一度機甲大祭の準備を見に行くことにした。


先生やクラスの皆には「シャルと機甲大祭の実戦試合に向けて特訓する」と言ってある。クロウの強さは以前の試験監督官をした際に知れ渡っているので、誰に文句を言われることもなかったが、流石にずっと手伝わないのは良くなかった。


「ただいま、みんないい感じ?」

「うわっ!出た!」

「えっ、なにその反応....」


周りを見渡してみると、既にクロウのクラスは準備が出来上がっていた。出来上がっていたが.....


「???、えっこれ喫茶店?」

「うん」

「.....それはメイド服?」


あれー?おかしいなぁ、暫く様子を見に帰ってきてなかったら、知らない間に自分のクラスはメイド執事喫茶をする事になっていた。


「う、うん、でもクロウ君は無理にやらなくていいからね」

「えっ、あ、うん、ありがとう」


なんだか自分が入ってきた瞬間からクラスの空気が気まずくなってきた気がするので、クロウはそそくさと退散して、図書館11階の庭園でリリィとお茶をして時間を潰すことにした。

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