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勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
学園都市ロゼ編
145/227

シャルの新しい武器

「許可のない人物の工廠の使用は禁止されています」


機械音を無視して、クロウは北帝大公の紋章を掌に浮き上がらせ、それをスキャン機にかざす。


「大公紋章を確認、大公の掌紋を確認、お帰りなさい、マスター」


機械音と共に扉が開く。数十年ぶりに使うはずなのに、中は自動清掃ロボットが綺麗にしてくれていた。恐らくマキナが作って入れたのか、それともセシリア達が数回使ったのか。


ここはクロウ領にあるクロウが作った工廠。聖セシリア学園の工廠でも良かったが、場所を移した際に、クロウの作った工廠は難易度が高すぎて見た目はマネできたものの、一番重要な部分はどれだけ頭を捻っても作り上げられなかったという。恐らく<賢者の英石>の事だろう。旧セシリア学園の跡地にはまだ向っていないが、戦時しか開かれないという現在の聖セシリア学園の工廠には賢者の英石は無いのだろう。クロウは久しぶりに自分の工廠を進んでいく。昔と全く変わらない内装に安心しつつ、最奥へと進んでいく。見慣れた円柱に手を翳し、久しぶりの賢者の英石に触れる。


五爪龍(いつつめりゅう)の逆鱗と、万年柳(まんねんやなぎ)の葉、世界樹の枝に、大亡霊の肋骨、後は鉱石類か」


とりあえず鉱石類じゃない物をアイテムボックスから取り出し、続いて鉱石類を賢者の英石から生み出す。


「洛陽鉄、重力鉄鋼、マグマネピア、後は魔王の心臓(デーモンハート)があればいいか」


必要な材料を揃え、クロウは材料を持って武器製造区画へ向かう。評価不能な超級武器も作れるこの場所で、クロウは再び鎖を半分解除し、1人の英傑を召喚させる事にした。


「英傑召喚:<樂羅(らくら)>」


召喚陣の中から1人の刀匠が現れる。肩に触れる程度の髪を後ろに束ねた老年の顔は皺で一杯だが、その逞しい体つきは老年にはふさわしくなかった。


「クロウか、刀か?」

「久しぶり、樂羅、桜花二刀流については知っているか?」

「知っている。俺の時代にも使い手がいた」


重厚なその声色は、聞く人を落ち着かせる不思議な声でもあった。


「これらの素材を使って2本、桜花二刀流の使い手のために打ってほしい」

「ほう、これは龍の逆鱗か、こっちは洛陽鉄、良い素材だ」


樂羅は素材を手に取ると、眼をつぶって素材を手で感じているようだ。


「見たこともない素材もあるが、打ち方は分かる。2本だな」

「ああ、頼んだ」


クロウはそう言いながら樂羅のために1本の日本酒を取り出す。


「お、こいつは、<天ノ宮大吟醸>か。良い酒だ。報酬はいつも通りこいつで良い」

「何か適当に酒の肴でも作ってくるよ」

「そいつは良い、2時間くらいで出来るから、ゆっくり作ってこい」

「了解だ」


クロウは樂羅が手慣れたように素材を扱いだしたのを見て、安心したように背を向けて厨房へ向かう。小さな厨房だが、調理器具も食材も全てクロウのアイテムボックスに入っているので、樂羅の好きな魚料理を中心に、酒の肴を作り出した。


2時間後、瀧魚(たつうお)と松茸の煮込み、炒めた落花生、豚肉の角煮、わかめと白髭葱とサーモンのサラダ、それから白米を炊き、全て綺麗な皿に盛りつけてそのままアイテムボックスにしまった。


厨房から武器製造区画に戻る。樂羅は既に刀を作り終えていたようで、白と黒の2本の太刀が鞘に納まっていた。


「ん?脇差はないのか?」

「不要だ、俺の打った太刀が欠ける事なんてない。もし俺の太刀が欠けるなんて事があったら、そいつはとっくに死んでいる」

「それもそうか」

「見てみろ」


クロウは促されるまま白の鞘に収まった方から見る。鯉口を切り、そのまま抜刀する。驚くほど綺麗な刀身。抜く前はしっかりとした重量があったのに、いざ抜刀してみると驚くほど軽い。そして手になじむ。切れ味はまだわからないが、抜刀した際の刀風が床と壁に深い切り傷を残していた。


「白いのは<陽>。日中に一番鋭く、強くなる。妖も斬れるぞ」

「となるとこっちは<陰>か」

「そうだ」


クロウは同じように黒い鞘から刀を抜く。こちらは漆黒の刀身。同じように抜刀するとその重さを失ったように軽く、こちらも同様に抜刀時の刀風で床と壁に傷がつく。だが、その傷からは怨念のような気配を感じ、気が付くと傷ついた壁の周りがボロボロと崩れだした。


「お前さんの用意した、なんだったか、周りの魔素を吸収する鉱石が面白くてな、そいつを中心に<陰>を打った。<陽>は日の光を吸収し、<陰>は月の光を吸収する。まあ月の光がなくても十分強いがな」

「壁がボロボロになったのは?」

「ああ、そいつは斬ったものの全てを吸収する。人を斬れば血と肉と記憶と技能を、妖を斬ればその寿命と能力を、恐ろしいそんじょそこらの妖刀を斬ればそいつの妖しさも吸収するよ」


(いやめっちゃ強いじゃん、なんでもドレインじゃん)


「<鑑定>」


***


<陽>

レア度:測定不能

冥匠・樂羅の真打。

洛陽鉄、マグマネピア、世界樹の枝と魔王の心臓とその他の素材をふんだんに使用した白い太刀。日中の戦闘において、正午に近づくにつれ、使用者に<HPMP回復量増加><疲労軽減><神力><神速><心眼><連撃補助><スキル発動時間軽減><スキルクールダウン減少><魔族妖族特効>を付与する。この効果は漸次上昇し、正午の1時間で最も強化される。


<陰>

レア度:測定不能

冥匠・樂羅の真打。

大亡霊の肋骨、五爪龍の逆鱗、万年柳、魔王の心臓とその他の素材をふんだんに使用した黒い太刀。夜間の戦闘において、深夜に近づくにつれ、使用者に<HPMP吸収><HPMP吸収量増加><夜視><魔眼><一撃必殺補正><異常効果付与補助><流血><麻痺><混乱><石化><神族聖族特効>を付与する。この効果は漸次上昇し、正子(しょうし)の1時間で最も強化される。


***


(うんヤバ。<陰>だけで今の俺くらいなら余裕で斬り殺せるわ。<陽>もそうだけど)


「いきなりそいつらを渡すんじゃねぇぞ、ほら、もってけ」


同じような刀をクロウにもう2本渡す。


「影打だ。まずはそれからだ」


クロウは影打も同じく<鑑定>する。切れ味と特徴はそのままだが、こちらには何の付与スキルも特殊効果もない。ただのものすごく軽くてものすごくよく斬れる太刀だ。


「ありがとう樂羅、今日は湖畔で食べようか」


その後、樂羅と共にクロウ領の湖畔で2人は酒を飲みながら夜遅くまで話し合い、クロウはそのまま樂羅とその場で眠ってしまった。


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