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勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
学園都市ロゼ編
142/227

機甲大祭の準備と<怠惰>の魔王セラン

翌日、機甲大祭の開催が近いとの事で、学園中の生徒と先生達は授業をひと段落させ、総出で会場の準備や施設の点検、出店の準備に外部への告知等で大忙しだった。ただ、クロウだけはなぜかアリアンナに呼ばれて準備そっちのけでいつもの図書館の庭園でリリィとお茶を飲んでいる。


「手伝った方が良くない?」

「ダメだ、お前は護衛の件があるだろう」

「リリィはいいの?」

「毎年手伝おうとしているんですが、私が何かをしようとするとすぐ他の人に取られてしまいますので、大人しくここで開会の宣言などの代表発表の練習をしています」

「そっか」


なんだか他の人に申し訳ない気持ちでいっぱいのクロウだった。どうしよう、シャルの様子でも見に行こうかな。機甲大祭までは1か月と少しあるし、シャル最近負け続きだったから凹んでないと良いけど。


そう思った矢先、クロウのケータイが震えだした。ポケットから取り出してみると、タタが珍しくクロウに電話をかけてきていた。電話に出てみると、スピーカーにしてないにも関わらず、隣に座っているリリィにも聞こえる大きな声でタタが、


「会長がいなくなりました!」


と言った。


***


「ん?ここは」


気が付くとドコドコと言う移動音と共にどこかへ移動していた。周りを見渡してみると、森の中を進んでいるようで、医務室で休んでいたはずだが、なぜ私は移動しているのだろう?


「ん?起きたかい?シャルロット・リヒテン・ロゼ」

「誰だ貴様は、うぐっ!」


振動で身体が揺れて頭が痛い。だが、私を持ち運ぶこの4本腕のエインヘリアルには見覚えがある。


「お前は確か、期末考査で私に襲い掛かってきた....うっ!頭がっ...」

「無理に思い出さなくてもいい、記憶は既に消させてもらったよ」

「何!?」

「うん、だってそんな事覚えてたって面倒臭い事になるだけだからね」

「なんだと?うぐっ...」


本当に思い出せない。記憶の前後はあるのに、途中だけが真っ黒で何も思い出せない。


「悪いけど急いでるんだ、このままいけばこの森を抜けられるから、そうしたら」


4本腕のエインヘリアルが全ての腕を使ってシャルの両手足を拘束しながら走っており、同時にその言葉を言い切ろうとした瞬間、鋭い剣と音と共に彼の両足は切断され、勢いそのまま地面に激突した。衝撃でシャルも地面に叩きつけられると思ったら、透明なネットのようなものに空中でキャッチされ、そのまま優しくバウンドするようにスタッと地面に立った。


***


「見つけたぞ」


眼を赤く光らせたタタと、背後に曲刀を8本浮かべたアリアンナ、そしてその後ろからクロウとアリアンがやってきた。両足を切られた4本腕のエインヘリアルはすぐにその足を再生させる。だが再生したのは生身の足だけで、エインヘリアルは流石に生えてはこなかった。タタは既に半分人狼化しているが、理性を失う事は無く、ただ瞳が赤く獣のようになっているのと、体格がすさまじく大きくなっているだけだった。期末考査までの1か月の準備月、タタはエインヘリアルの基本動作の練習と共に、クロウに獣人化や人狼化のコントロールの方法を習っていた。そのおかげで、今ではだいぶ自身の感情のコントロールができるようになっており、シャル関連でも暴走することなく、こうして人狼化のデメリットを最低限に、メリットを最大限に引き出すことができている。アリアンナも同時に、1か月間のあいだにクロウの加護を元に空いた時間に死ぬ気で狂ったように魔力糸操作と魔素量と魔力を上げる訓練をしていた。そのおかげもあり、今ではより細く、より強靭で、より多くの魔糸をより繊細に操作することが可能になった。武器もナイフではなくクロウが合間を縫って以前持っていたナイフを材料に作り直した飲血の曲刀という武器を使用している。血を吸えば吸うほどより強力に、より鋭くなるこの武器は、今後のアリアンナにとって一番の武器だろう。ナイフを溶かして作った計10本のうち、2本を両手に、8本を魔糸で浮かべているアリアンナは、リリィの護衛として揺るぎない強さを手に入れたといっても過言ではない。


その証拠に、彼女はその浮かべた曲刀を操作して、難なくシャルを攫った相手の両足を両断している。


「痛いよ~」


4本腕のエインヘリアルは脚部の装甲を失ったことに臆することなく、自らの装甲を全て解除した。そうしてその姿を露にする。長い髪を垂らした美青年だが、その顔はどこか眠たげで、気だるげだった。


「何者だ、まさかお前も魔王か」

「違うって言ったら逃がしてくれる~?」

「そういう訳にはいかないな」

「はぁ~めんどくさいなぁ」


目の前の男は先ほどとは違うエインヘリアルに換装する。アリアンナは換装させる隙を与えまいと<圧縮魔力弾>を撃ちだすが、その男に届く前に減速し、最終的に霧散してしまった。


「アルイタ父さんの息子の一人、<怠惰>のセラン、いくよ~」


換装を終えた彼は新しいエインヘリアルに着替えており、その蜘蛛のような8つの甲殻脚を持つエインヘリアルに支えられるように、中央の位置で男は空中で寝転がるように横になっていた。


「今日は聖女様の側近の1人を攫う予定だったんだけど、無理そうだね、バイバイ~」

「逃がすか!」


タタが駆け出し、アリアンナも6本の曲刀を飛ばすが、蜘蛛のように動く彼の妖艶な動きと、森林の中と言う視界の劣勢で、10分ほど追っていたが、彼が背中から飛ばしてきた白い粘着質のようなネットに絡めとられ、見失ってしまった。


「アリアンナ!タタ!いい!戻ろう!」

「だが!」

「いいから!」


クロウは蒼い炎でセランのネットだけ燃やすと、全員エインヘリアルで帰還した。

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