身バレ
「違います、誤認です」
「新式のエインヘリアルは旧式から多くをコピーした手前、100%発揮されない機能がいくつもある。使用者が使わない、もしくは使えない機能を取り除くため、初期設定と言うプロセスを用いてそういった機能を削除、もしくは停止してさせている。だが、君のエインヘリアルは100%の機能が解放されていた。過去に100%の機能を解放できたのは、エインヘリアルの技術指導役であるマキナさんだけだ」
うわーもうこれ絶対言い逃れできないわ
「はい、その通りです」
「認めたね、やはり君だったのだな」
先生は椅子から立ち上がり、クロウの両手を力強く掴んだ。
「ありがとう!この世にエインヘリアルと言う革新的な物を作り上げてくれて!」
急に目の前でむせび泣かれると、俺も少し困惑する。とりあえず先生を宥めつつ、デバイスについて尋ねた。
「先ほども言ったように、君のデバイスは初期設定は不要だ。なぜならこれが本来のこのエインヘリアルの機能なのだから」
先生に渡されたデバイスを再び装備し、言われた通りにもう一度換装する。初期設定を済ませていない学園支給のエインヘリアルは高さが約2mと少しあり、背中には盾と剣、槍、槌、斧、弓と弓矢、杖の計7種の武器を背負っている。手と足は先ほどタタが着ていたような手甲と攻撃性のあるブーツを装備しており、本来ならばこれらは初期設定の際に一部のスキルと共に武器も使用者の最も才能がある物に限定され、他は消滅するのだが、クロウの場合は全て問題なく使用できるため全ての残っているんだとか。
そこまで言われてクロウは一つ気づいた。この学園支給のエインヘリアル、何か見覚えがあると思ったら、旧式の<ウェポンマスター>を元に制作されたようだ。
「これが完成形、本来あるべきの姿。美しい」
シュトロハイムは見惚れるようにクロウが換装した学園支給のエインヘリアルを見ていた。
「先生、そろそろ?」
「あっ、ああ、何かあればいつでも連絡してくれ、そうだ、フレンドの交換を」
「あっ、いいですよ」
先生とアプリでのフレンド登録をし、そのまま戦闘場へ戻る。既にみんな基本動作練習を始めており、まずは前後左右の移動、それからジャンプ、それが出来たら飛行練習、そして最後に基本武器動作指導をするみたいだ。人によってはすぐ慣れる人や慣れない人がいるようで、それぞれが十分な距離を取って移動やジャンプの練習をしている。クロウは正直巨大な旧式に慣れているため、軽くて薄い新式はジャケットを1枚羽織ったような感覚。この場で空中で3回バク転しろと言われても5回くらい回る自信がある。でもまあ目立ちすぎるので普通に初心者っぽく動く。そんなこんなで午前の授業は終わり、午後も引き続きエインヘリアルの基本動作練習だった。
夜、今日もいつもの模擬戦闘場でアリアンナが戦闘服に着替えて待っている。今日は魔法の練習だったはず。
「よし、じゃあ早速始めるか」
「分かった」
クロウはアリアンナにナイフを取り出し、いつものように魔力糸で操ってほしいと言う。アリアンナも言われたまま、いつも使っているナイフを取り出し、手から作り出した魔力糸をナイフの持ち手部分にぐるぐる巻きにして持ち上げる。
「あーそういう持ち方してるんだね」
クロウはアイテムボックスから取り出した特殊なモノクロを左目に装備してアリアンナの操作方法を見る。
「お前は違うのか?」
「そうだな」
クロウは左目にかけたモノクルをアリアンナに渡す。彼女が装備したのを確認すると、クロウはゆっくりと指の先から髪の毛ほどの細い魔力糸を伸ばした。
「目を凝らしてよく見てね」
クロウはその糸をアリアンナの持っていない方のナイフに差し込む。ぬるぬるとナイフの持ち手からナイフに入っていく。そうしてナイフ全体がクロウの黒い魔力に一瞬覆われると、そのまま宙に浮きだした。そしてクロウなそのナイフを体の一端のように操る。
「とりあえずこういう風にできるようになろう」
「わかった」
それから一晩中アリアンナに付き添って彼女の魔力糸が細く、ナイフの中まで浸透できるように付き添った。流石に1晩ではそう簡単に習得できず、暫くアリアンナが習得できるまで付き合う羽目になった。それからクロウは毎日、日中はエインヘリアルの基本動作確認をし、夜はアリアンナと共に魔法やナイフを扱う練習をした。そうして現実では1か月、ゲーム内では3か月が経とうとしていた頃、いよいよ1年生前半の期末考査の為の準備月がやってきた。
1年生はエインヘリアルの基礎動作の熟練度を測るため、一連の指定された動作をどこまで上手くできるか。2年生は先生か3年生と試合。3年生は2年生との試合に参加したり、クロセルべの実際の機甲部隊と試合をしたりなど、正直中間考査と比べたら、明確に生徒を落単させるような試験は無かった。




