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勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
学園都市ロゼ編
132/227

アリアンナの覚悟

深夜、月が一般区画を照らす中、ルーム9にてクロウはアリアンナに尋ねる。


「それで、どういう風な訓練をしたいんだ?」

「強くなるため、まずは己自身を強くしたい」

「ふむ、リリィがやっているような、生身で戦う訓練?」

「そうだ」

「仮想敵は?」

「魔王、もしくはそれより強い存在」

「えぇ....本気?」

「本気だ」


本気だった。魔王かそれ以上に勝てる存在になりたいと、そういうつもりらしい。


「アリアンナ、正直な事を言っていい?」

「ああ」

「君が人間である限り、非常に難しいよ」

「分かっているとも」

「人間である限り、無理かもしれないんだよ?」

「分かっている。だが、火蝶爵は成し遂げた」


ヒノカの事か。


「彼女には勇者と言うジョブと火蝶封訣と言う秘伝のスキルがあったからだよ。アリアンナのジョブは?」

「ナイフ使いです」

「加護は?」

「何もありません」

「アリアンナの魔力操作とナイフの熟練度は目を見張るものがあるけど、はっきり言えばそれだけだよ」

「分かっています、ですが、どうしても、強くなりたいのです」

「どうしても?」

「どうしても」

「二度とリリィ前に現れることが出来なくなっても?」


そう言いながらクロウは鎖を外していく。同時にクロウも魔王としての姿を取り戻していく。周囲から暴風のように魔素を吸い取り、めきめきと体が膨れ上がり、禍々しい悪魔の両角と、異様な筋肉と肌色は、クロウが本当に伝承の魔王だった事を表している。


「最後に一度だけ聞こう、小娘、貴様は魔王を殺すために、全てを捧げ、二度と大地と光の下を踏めなくなる代償に耐えられるのか?」


魔王の心臓を構築したことにより、周囲の急激な魔素濃度の低下、それに伴い、並みの魔法使いは急激に体内の魔素と共にMPを失っていく。そしてその辛さは、激しい眩暈と悪寒、さらには吐き気となって襲い掛かる。アリアンナは耐え切れず、地面に倒れ伏せるが、その拳と目に宿った意思は揺るぎなく、


「魔王を倒し、我が主を守るためならば、人であることを捨ててでも構わない!」


そう強く答えた。


「そうか」


魔王モードのクロウは満足げに頷くと、彼女の周囲からの魔素吸入を止め、眼を閉じて自分の魔王としての身体を構築しだした。心臓だけではなく、今回は右腕だけ、魔王としての右腕をもう一本生成する。そしてアリアンナに「動くなよ」とだけ告げると、その生成したばかりの右腕を自ら引きちぎった。紫色の血が飛び散る中、クロウは引きちぎった右腕から流れる血で、アリアンナを中心に特殊な魔法陣を描いていく。そして書きながら口の中では詠唱を開始していた。


「原初の魔、根幹の始まりにして根源の元、万物構成その元ならば織りて操りし魔の法則、天上天下唯我独尊、世界の根源我にあり、創生破滅の無常なれば、我この者に滅びの加護を与えん!」


地面に書かれた魔法陣はクロウの詠唱の終わりと同時に完成し、赤く光輝きだした。そして無数の黒い眼玉のようなものが、魔法陣から現れる。その眼玉は中心にいるアリアンナを見つけると、次々と彼女の身体に潜り込んだ。凄まじい嫌悪感と不快感に襲われた彼女は悲鳴を上げるが、クロウは彼女を睨んでその魔法陣から逃げられないようにする。そうして眼玉は一度彼女の体中を覆い尽くすと、何もなかったように彼女の体内へ溶け込んだ。


「ふむ、成功した。おめでとうアリアンナ、これ君は()()()()()を得た。この私のな」

「な!?そんな!?」


魔王モードのクロウはくいっと指を下から上に振ると、地面が隆起し、岩と砂で出来た玉座が出現した。クロウはそこに座り、アリアンナを見下ろす。


「別に君は魔王になったわけでも魔族になったわけでもない。ただ貴様の(カルマ)を上昇させただけだ」

「私に何が起こるのです?」

「別に?まだせいぜい大きな戦功をあげた将軍と同じほどの業だよ。それだけでは神は嫌ったりしない」

「ほっ」

「ただ慣れないうちは毎晩悍ましい悪夢を見るかもな」

「構いません」

「我の加護のデメリットは慣れるまでの毎晩の悪夢に(うな)される事と業の上昇、そのくらいだろう。メリットは、訓練による魔素保有量の上昇量が大きく増える事、そして魔素親和性が著しく上昇し、今以上の魔力操作が行えることだ。他に質問は?」

「いえ、ありません」

「良かろう、では」


クロウはそう言いながら魔王モードを解除する。魔素で出来た心臓は霧散し、一時的にクロウの身体から大量の魔素が空気中に放出される。そして再び己を鎖で縛り付け、いつもの状態に戻るクロウ。


「あたた、戻るときの骨の動きはいつまで経っても慣れないな...」

「だ、大丈夫かクロウ?」

「お?なんだ心配してくれるのか?」

「茶化すな、私だって鬼じゃない」

「鬼みたいなもんだけどな」


キッと睨んできたが、流石にナイフに手をかけるような事はしなかった。


「さて、アリアンナ、ちょっと<鑑定>させてくれない?」


変態覗き魔を見るような彼女のはさておき、クロウは問答無用で鑑定した。


---


名前:アリアンナ

メイン職業:武器使い・ナイフ

サブ職業:メイド

<ステータス>

Lv.87

HP:3450

MP:800

筋力:240

体力:500

敏捷:380

精神:280

堅剛:300

知力:470

<スキル>

短刀術:中級編

生活魔法

登攀

水泳

食い貯め

料理:中級編

建築:初級編


<加護>

魔王


<呪い/祝福>

魔王の呪い:毎晩悪夢を見る。一時的な(カルマ)の上昇による幸運の低下、全成功率の低下

魔王の祝福:MP上昇量の増加、魔素親和性の増加による魔素操作および魔力操作の熟練度上昇量の増加


<天賦の才能/天与の才能>

なし


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