打ち上げ会!
「「「カンパーイ!」」」
心地の良いグラス同士がぶつかる音と共に、学園図書館11階にて、クロウ、リリィ、シャル、フェリス、アリアンナの5人は、放課後、待ち遠しかった打ち上げをようやく開催できた。
「おお!アリアンナ殿、このふらいどぽてト?と言うじゃがいもを上げた食べ物はおいしいな!」
「そうね!シャル、このチキンナゲットもおすすめよ!ケチャップに付けて食べるともっとおいしいわ!」
「本当かフェリス、どれどれ、う~ん!いい!」
「あっおい!俺にも一個ナゲット残しておいてくれよ?」
「ふん、貴様は自分で作ればいいだろう」
「そういうなよアリアンナ、自分で作るのと、人に作ってもらうのでは全然違うんだよ」
「うむ...それは確かに」
「アリアンナ、メロンソーダのフロートをもう一杯」
「リリィ気に入ったのかそれ?」
「はい、甘くてシュワシュワして、アイスクリームが濃厚で、メロンの香りも素晴らしくて」
「....ほどほどにな」
「はい、今だけです、今だけですわ....」
リリィの目がギラギラしている。今日だけで5杯ほど飲みそう....
そんなこんなで中間考査のドタバタが終わってから一週間後、ようやくゲーム内でも金曜日の放課後になり、皆、明日特に用事は無いとのことなので、こうしてようやく前々から言っていた打ち上げを開催できることになった。
「それでリリィ、大丈夫だったの?丸一日帰ってきてなかったって聞いたけど」
「そうよ、他の生徒に聞いたら、突然変異のキメラが現れて、引率の先生を....」
「ええ、かなり危なかったですが、なんとかアリアンナと命からがら、セシリア様の救助隊がやってこなければ危ない所でしたわ」
(ふーん、そういうことになってるのか)
「ちょっとクロウ!あんたは何か言う事ないの?!」
フェリスに睨まれる。
「ん?ああ、いや何、2人共無事に帰ってこれてよかったよ。何かあったらこの打ち上げもできず終いだったからな」
「何よクロウ!あんた打ち上げがやりたいだけ!?」
「えっ!?いやそういうわけじゃない!曲解するなお前!」
「まあいいわ!ほらクロウ!あたしがあんたのために一つ残しておいてあげたわ!感謝しなさい」
「いただき」
「あっシャル!おま」
「騒ぐなクロウ、今揚げているから少し待て」
「アリアンナ、おかわりを....」
「リリィ様、あまり飲み過ぎては後で腹痛に」
「構いません!今だけは!今だけですので....」
リリィがアリアンナとメロンソーダフロートの4杯目を飲むか飲まないかで揉めている。そんなに気に入ったのかリリィ。まあシュワシュワは良いよな、分かる分かる。ほどほど食べてほどほどに飲んだので、クロウは持参したトランプを取り出した。
「ババ抜きしないか?」
「ババ抜き?」
「え?ババ抜き広まってないの?」
全員首を横に振っていた。
「トランプ1箱、この中からジョーカーを一枚除外して、そしてシャッフル。数字が同じトランプが2つで1組。1組揃ったら手札から捨ててもよくて、最後まで手札にカードの残ってた人の負け。OK?」
「わかった!」
流石にババ抜きが分からなくても1度遊べばみんな分かったようで、なぜかババ抜きで白熱した戦いを見せていた。
「ふふふ、シャル、あんたの手札は見切ったわ」
「なんだと?さてはハッタリだなフェリス」
「そうよ!」
認めちゃうんだそこ。
「リリィ様、それは4でございます」
「アリアンナ、言ってしまったらゲームになりませんわ」
「はっ!?」
今気づいたのかよ.....
夜が更けるまでババ抜きで盛り上がった5人。残念ながらシャルとフェリスは門限があるため、楽しい雰囲気の中、解散となった。
「ではクロウ様、おやすみなさい」
「おう、またな」
リリィとアリアンナに手を振り、クロウは特待生寮へと歩いていく。だが、途中で道を外れ、学園内の夜道を進んでいく。一般区画にある模擬戦闘場へと進んでいく。さほど特待生寮からは離れておらず、鍵がかかっているはずの入り口は、すんなりとその巨大な扉を開ける事が出来た。
模擬戦闘場、ルーム9
室内丸ごと壁から天井から全てを模擬戦闘のために作り替えたこのルームの中心で、一人のメイドが背を向けて立っていた。
「待たせたか?」
「構わない」
アリアンナは振り返り、メイド服をバサリと脱いで下に来た戦闘着を露にする。
「私のわがままに付き合ってくれてありがとう、クロウ」
「いいよ、その辛さ、俺も分かる」
アリアンナは、神聖魔法で怪我を治してから、リリィにクロウの正体について聞いたらしい。そして彼が<大英雄>アマネの師匠だと知ると、なんのためらいもなく、クロウに訓練をしてほしいと頼んできた。
アマネは宮殿内で皇帝近衛兵の訓練とその他護衛任務で忙しく、ホムラも各地の工場や鍛冶の品質保証とその他の生産ラインの点検のためクロセルべ中飛び回っており、アカリは各地の精霊の様子を見るために旅行をしており、誰も簡単には会えなかった。だからアリアンナは彼女らの師匠であるクロウに頼み込んだのだ。クロウもリリィのその地位の特殊性から、チェランだけではなく、もっと多くの魔王が彼女を狙う事を考慮し、いつも彼女に付き従うアリアンナが強くなることになんの問題もなかった。




