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勘違い魔王のVRMMO征服記  作者: 愛良夜
第三章 新世界より
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ベルアルとセシリア

「おまた...うおっ」


よくよく見ると、3人とも物凄い形相で膝に手をついて何かに耐えている。


「まさか、ごめん3人共、少し待って!」


クロウは急いで更衣室に戻った。加護や能力値のもたらす威圧を抑えるための()を増やさないといけないみたいだ。


「えー、とりあえず9個追加でいいか」


以前は偽神の権能で偽造すれば偽造したステータスは偽造した身分と同様になるが、今では偽造すら意味を成さず、恐らく一般人のように生活するには<天罰神縛(てんばつしんばく)>と言う、強力な制限を更に自身に掛けなければいけない。先ほどとりあえず自身に18個かけたはずだが、まだ足りていないようなので、更に9個掛ける。これで28個。いやいっそ一般人になるくらいかけよう。72個だ。不可視の鎖がクロウの全身を余すことなく纏わりつき、きつく締め付ける。この鎖はそれ以外にも鎖の所有者にステータスを譲渡できる機能があるので、とりあえず72の鎖にはそれぞれクロウのステータスの1%を強奪させておく。全ステータスが72%も減れば流石のクロウも依然と違って周りを威圧することもなく、一般人の中でも大英雄クラスのステータスだが、まだ人外の領域には達していないので大丈夫だろう。


「お待たせ、3人共ごめん!新しく自分のステータスを弄ってたらこんな事になるとは思ってなくて」

「大丈夫、久しぶりで忘れていたよクロウ」

「私も、最後に頭を下げたのはいつぶりだったか」

「凄まじいな、まるでブラックホールのような魔素量だったぞ」


上から順番にベルアル、マキナ、ルナティアがそう言う。だがまあ3人ともあまり気にしていないようだったが、クロウはお詫びに旅館のアイスクリームを3人に御馳走してなんとかうまく収まった。


そこからは3人に連れられて、まずはベルアルの惑星領を見に行くことにした。クロウがいない間にルナティアの元で修行して、今や彼女に匹敵するほどの星群を持つベルアルは、その力とクロウの残した宇宙探査技術を進化させ、今いる星以外の惑星の探索に成功した。そのおかげで、宇宙中の惑星に北星領を作り、現地の素材や科学技術を使って更に自分と部下、そして北星領を進化させ、もはや惑星すら手中に収めたベルアルであった。また、彼女の技術のおかげで、エインヘリアルの普遍化も進み、いわゆるロボット好きのプレイヤーや宇宙戦記が好きなプレイヤーが多く集まったと言う。実際に彼女の外惑星にある北星領を訪れてみると、それもまさにス〇ーウォー〇のようになっていた。透明なドームの中には数多くのネフィリムや軽量型エインヘリアルを着た北星領の研究者などが手元の書類を眺めながら歩き回っており、透明なドームの外ではネフィリム達が空を飛びながら荷物を運んでいたり、他の惑星からテレポートで帰ってきた輸送船から荷物を卸したり、惑星探査用のエインヘリアルを着た職員が荷物の点検をしていたり、もうこれだけでクロウの少年心も刺激されまくっていた。だがまあ実際に何かするわけでもなく、クロウはただベルアルに案内されるまま、誇らしげに語る彼女をみんなでニコニコしながら眺めていた。


「な、なんだ3人共...」


まじまじと顔を見られて少し照れるベルアル。


「いやなに、ベルアル、お前すげぇ笑うようになったじゃん。可愛いな」

「なっ!?!@*&#^」


クロウは素直に思ったことを言う。昔はずっとしかめっ面で数年に数回しか笑わなかったのに、今では物凄く楽しそうに、嬉しそうに彼女が自分に色々話してくれる。そんな彼女の変化がクロウがこの上なく嬉しかった。ベルアルが満足したようなので一度クロウ領に戻る。


「はー、住処とかどうしようっかな~」


クロウがスケルトン達で作った宮殿は観光スポットになっているため、もう帰れないし、いっそ適当な家でも借りようかなと思っていたクロウだった。


「マキナ、いる?」


ん?この声は


「セシリアか、入ってくれ」


マキナとルナティアの執務室のソファに座って住居の事についてどうしようか考えていたクロウ。ドアを開けてセシリアが入ってくる。


「セシリア?」

「え?その声、クロウ?」

「うん、俺俺」


某詐欺みたいに連呼するクロウ。もう数十年経ったセシリアだが、彼女は実年齢よりかなり若く見える。ベルアルはルナティアから育星法を習った際に、星と同じ寿命を手に入れたと言っているが、セシリアはなんで?


「グロウぉおお!うわぁあああああん!いぎでるぅうううう!!」

「セシお、おちぶはぁ!」


床が砕けるほどの力で抱き着いてくるセシリア。ステータスを抑制している今、普通にセシリアに抱き着かれたまま押し倒されてしまう。


「生きてるよセシリア、生きてるから落ち着いて、な、なんか湯気立ってるし、セシリア、熱い、凄いなんか俺焦げてる気がするよ、離してセシリア、熱い!痛い!」


ああ、この感じ、セシリア、お前まさか


「聖女セシリア、一度離れてくれたまえ」


マキナが優しく彼女を引きはがしてソファに座らせる。神聖属性への耐性も抑制されている今、聖女に抱きつかれて普通にダメージを受けていた。


「セシリア、お前聖女に認定されたのか」

「うん、教会領を併合したときにね」


そこからはセシリアのすぐ横に座り、彼女のこれまでの話を聞いた。


「略奪の魔王が西部王国の教会領と貴族領を全部壊しちゃって、誰も後始末しないから私がまるまる貰ったの。ミナト君もお手上げだったから、私に任せてくれたみたいで、東部も大量の金と武器を教会領にあげたのに結局全部魔王に奪われて破綻寸前だったから東部も併合して、そうしてる間にベルアルは他の星に行っちゃったから空いた場所を魔王とかに奪われる前にできるだけ私が占領したの。そんなこんなでベルアルからもあのエインヘリアルやネフィリムの技術を貰って、マキナさんに色々教わりながらとにかく国を纏めていたら、教会領の教皇がね、私を稀代の聖女に認定するとか言って、断るわけにもいかないから貰ったら<稀代の聖女>ていう功績を手に入れて、それと同じくらいの時期にある日傷だらけのルシファーが急に現れて、勝った!とか言いながら光の種を渡しに埋め込んだの。そうしたら私<聖母>の功績も獲得しちゃって、もうなんかちょっとやそっとの事では死ななくなったみたい。まあ未だに私を殺そうとする人はいるけど」


完全にクロウの対立面に立ってしまっているセシリアである。


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