おひさしぶりのメルティ
「うーんと、<天賦の才>システムに<才能>システム...それから<功績>システムに<前世>システム???分からん....しかし諦めないぞむむむ」
眉を顰めて自分のメニューとにらめっこするクロウ。体を洗い流した今、肩まで湯に浸かりながら自分のいない間に実装されたシステムや変更点を片っ端から確認していた。しかし、バージョン更新を20数回も逃していると、なかなか理解するのが難しく、湯船で四苦八苦していた。
「お困りですか?♥」
うーんこの甘い声。1年経っても忘れられない。
「メルティ」
「はい♥クロウ様♥あら?色々とリセットされていますね」
「そうみたい」
「で♥し♥た♥ら♥」
豊満で蠱惑的な彼女の身体は全て謎の湯気と規制でガードされているが、その声色は直にクロウの耳から入り込み、男の脳を刺激する。そうしてクロウに前から抱き着き、彼女は自身の身体をクロウに押し当て、彼の耳元で囁く。
「私に身を委ねて♥」
それだけ言うと、彼女はパチンと指を鳴らし、クロウは昔のように意識を失った。
***
「はぁ、いつ見ても美しい、この体」
メルティは魔法で気絶したクロウを近くの椅子に座らせる。タオルで彼の要所を隠し、彼に触れてメニューを開く。
「なるほど、長期的なオフラインで全てリセットされたようですね、ですが実績はそのまま、ネフィリムの功績も全て本体へ、天賦の才と天与の才がまだ選択されていないのも上々。加護も一時的に失効していますが、これも全部有効化しちゃいましょう。ではこれはこっち、これをこうして、これとこれを合わせて、ここをいじれば、ふふ、思った通り」
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名前:クロウ
メイン職業:絶対悪
サブ職業:光の絶対敵・悪の絶対神
<ステータス>
Lv.測定不能
HP:不可死
MP:無量大数
筋力:測定不能
体力:測定不能
敏捷:測定不能
精神:測定不能
堅剛:測定不能
知力:測定不能
<加護>
死神
六王
獄帝
冥帝
魔神
悪神
偽神
機神
堕神
<呪い/祝福>
死神の大祝福:即死系魔法、スキル、存在の成功確率がさらに大幅に上昇する。自身は不死を得る。
獄帝の大祝福:地獄系統の本人を召喚できる。自身は聖火への絶対耐性と神聖存在への特攻を得る。
六王の大祝福:天道六道が自身に服従する。自身以外の業を自由に変化させられる。
冥帝の大祝福:冥府系統の本人を召喚できる。自身は聖火への絶対耐性と神聖存在への特攻を得る。
魔神王の大祝福:無量大数の知恵と魔素量を得る。全知の書の絶対管理者権限を会得する。
悪神の大祝福:業が99999になる。周囲に存在するあらゆる存在の幸運が低下する。他者のあらゆる成功率を自由に弄れる。
偽神の大祝福:千変万化、もはや自身が根源であり始まりになる。
機神の大祝福:古代の機械の最高権限者になる。あらゆる機械の絶対管理者になる。
堕神の大祝福:堕落系統の本人を召喚できる。神聖な存在から非常に魅力的に映る。
<天賦の才能/天与の才能>
天賦天与の魔:天に与えられた生まれながらにして至高の魔力と魔素量を持つ存在。その才能は天すら嫉妬するほどだと言う。
天賦天与の武:天に与えられた生まれながらにして至高の武力と力を持つ存在。その才能は天すら嫉妬するほどだと言う。
<前世>
一代目:知者ソロモン
二代目:獄帝
三代目:冥帝
四代目:十王
五代目:死神
六代目:魔神
七代目:悪神
八代目:偽神
九代目:機神
十代目:堕神
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目を覚ますと、自分のステータスがいよいよぶっ壊れてきた。メルティは満足げに自分の膝に座って抱き着いてきているが、今はそれどころじゃない。いよいよ測定単位が不可死とか無量大数とか、ゲームぶっ壊れてないか?大丈夫?これ垢BANされたら泣くよ?
「ゲームシステムに違反するような事は何もしていません。特に問題ないのでは?」
確かに。チートとかゲームプログラム書き換えとかそういうのやってないし、そもそもこのゲームのセキュリティ滅茶苦茶厳しいからそんなんできるわけでもないし。
「だがまあ、助かったよ」
でもメルティがいなければ恐らくあと数日は頭を悩ませる羽目になっていただろうし、ある意味これは大助かり。
「いえそん...あっ♥」
メルティの腰を抱いて、彼女を少しぎゅっと抱きしめる。スキンシップを好む彼女の事だ。これくらいは許されるだろう。だが..
「おい、お前.....<麻痺>使ったな?」
「はい///」
「頬を赤く染めてる場合じゃねぇよ!早く解けよこれ!湯冷めするわ!おい!待ておま何をする!バカ!」
目に淫紋とハートマークが浮かんでいるメルティに吸精される前に、何とか自力で脱出して更衣室へ向かったクロウであった。
「ふぅ...危うく枯れる所だった」
獄帝と冥帝からメルティと言う存在について既に聞いている。魅惑族の女帝にして稀代の悪女。類稀なる美貌と力を持ち、彼女は冥府に住まう冥王達すらドレインで吸い殺せると言う。同時に誇り高く嫉妬深い彼女でもあり、気に入った者がいれば地の果てまで追いかけて吸い尽くす。ただ彼女の心の奥底の夢は幸せな家庭を築くことにあり、それは幼少期に夢見た絵本の影響なんだとか。だがサキュバスである以上、他者の精気とエネルギーを定期的に吸わなければいけない彼女は、なぜかこうして定期的にクロウの前に現れている。あいつナビゲーター妖精的な立ち位置じゃなかっけ?分からん。
色々深く考えるのは後にして、体を綺麗に拭いて、アイテムボックスから服を選ぶ。以前の服もエインヘリアル達も残っているが、あれは旧バージョンの服装だから今着ても浮くだろう。クロウは持ってる中で比較的現代に近い、白いTシャツ、濃い色のジーンズパンツ、スニーカーに革ジャンと言う、現実でも彼が休日に着る服に着替えた。そうして男湯の暖簾をくぐって外へ出て、3人と合流した。




