表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ベース⚾ガール!!!!  作者: ドラらん
PR
10/56

9th BASE

 二回表、二点を追う亀ヶ崎は先頭のオレスがヒットを放つも、次の嵐が初球を打って併殺に倒れる。


(やっぱり初球を狙ってたか。そういう時に甘くはないけど厳しくもないボールが来たら打ちたくなっちゃうよね。けどあのコースなら私の真っ直ぐはフライになりにくい。ゴロのヒットが続くことってそんなに多くないし、二つあったら大体どちらかは野手の守備範囲に収まる。そうすればこうやってゲッツーを取れるんだ)


 美久瑠は自らの球質を活かした投球術と好フィールディングで未然にピンチを防いだ。ランナーがいなくなって幾らか気持ちも楽になり、彼女は次打者もあっさりと抑える。


「アウト。チェンジ」


 亀ヶ崎の攻撃は結局三人で終わる。先頭打者の出塁を許した美久瑠だったが、オレスと嵐がいずれも初球を打ったため、この回全体で数球しか要していない。


「ナイスピッチング! 美久瑠はテンポが良いから本当に守りやすいよ」

「そう言われると嬉しいです。ありがとうございます!」


 先輩の内野手と笑顔を交わしながら、美久瑠は足取り軽やかに引き揚げていく。彼女の好投とリードする展開に羽共ベンチのムードも必然的に良くなり、円陣も活気だっている。


「さあこの回も点取って、どんどん突き放してやろう!」

「しゃあ!」


 一方の亀ヶ崎ベンチはどんよりもした空気に包まれる。数字上では僅差であるはずの二点が、果てしなく重たく感じられた。この雰囲気を打破するべく、紗愛蘭は声を張ってチームメイトを励まし、いの一番にベンチを出ていく。


「まだ試合は始まったばかりだよ! 必ずチャンスは来るから、それまで我慢しよう!」

「お、おー!」


 何とか自分たちを奮い立たせ、亀ヶ崎ナインは紗愛蘭の後を追って各々の守備位置へと向かう。中でも真裕は全力疾走でマウンドに上がった。


(紗愛蘭ちゃんの言う通り、今は苦しくてもいずれどこかでチャンスが来る。これ以上引き離されないために私がしっかりしないと)


 二回裏、羽共の攻撃は七番の吉田(よしだ)から始まる。下位打線が相手となるだけに、真裕としてはテンポ良く抑え切りたい。


「柳瀬、ここ大事だぞ! 踏ん張れよ!」


 スタンドの丈も変わらず声援を送る中、真裕が右打席に入った吉田に対して一球目を投じる。低めのストレートが決まってワンストライクとなる。


 二球目もストレート。今度はインコースを抉った。吉田が打って出たものの、詰まらされて勢いの無いフライを打ち上げる。


「オーライ!」


 ショートの京子が本塁側に顔を向けたまま後方へと走り、外野手を制して落下点に入る。そのまま落ちてきた打球を左手でがっちりキャッチした。


《八番ピッチャー、渡さん》


 ワンナウトとなり、八番の美久瑠に打順が回る。サウスポーの彼女は打席も左に立つ。バッティングに関しては全く打てないわけではないが、他の野手と比べると成績は芳しくない。真裕としては油断せずきっちりアウトを取らねばならない。


 初球、バッテリーは外角にストレートから入る。美久瑠が思い切りスイングしてくるも、バットとボールの距離が大きく離れた空振りとなる。


(態とやっているんじゃないかとすら思える空振りだけど、スイングの形も良いとは言えないし、バッティングはこれが素なんだろうな。同じ球を続けてみるか)

(オッケー)


 真裕は二球目もアウトコースのストレートを投じる。美久瑠は一球目をリプレイするかの如く、当たる気配の無い空振りを繰り返す。


「うーん……」


 美久瑠が呻くような声を漏らす。気を取り直して彼女はヘルメットの被り方を整え、打席でバットを構える。


「え?」


 すると真裕は間髪入れず投球モーションに入り、三球目を投じてきた。不意を突かれた美久瑠は無我夢中でバットを振るしかない。


「スイング、バッターアウト」


 三球連続となるストレートに美久瑠のバットが虚しく空を切る。彼女は苦笑いを浮かべて空を仰ぎ、そそくさと打席を後にする。


「いやあ……。やっぱ良いボールですよ。私じゃ全然打てそうにないです」


 ベンチに戻った美久瑠はチームメイトにそう感想を述べる。これはお世辞でも煽りでもなく本心であり、だからこそこちらも隙を見せる投球をしてはならないと自らを戒める。


(柳瀬さんはきっと持ち直してくる。チームメイトを信じてないわけじゃないけど、追加点は当てにしない方が良いかもな。今のリードを守り切れるようにしないと。……どんな手を使っても)


 美久瑠はバットを置いて水分補給を行い、次のイニングの投球に備える。薄めたスポーツドリンクを口に含んだその顔には、打席直後の幼気な笑みとはまた違ったものが浮かんでいる。


《九番センター、狭山さん》


 真裕は順調にツーアウトを取り、ラストバッターの狭山を打席に迎える。彼女も打ち取って自軍の攻撃に弾みを付けられるか。


 初球、菜々花は外角のストレートを要求する。馬目、吉田、渡とストレートで押し込めており、今のところはこの攻め方が有効だと判断したのだ。その見立て通り狭山は差し込まれ、一塁側スタンドに入るファールを打つ。


(狭山も真っ直ぐに振り遅れてるな。もう一球続けよう)


 二球目。真裕の投じたストレートは若干真ん中に入った。だがそれでも狭山は捉えられない。


「ファール」


 打球はバックネットに直撃。バッテリーに美久瑠に続いて狭山も二球で追い込む。


 三球目もストレートが続いたものの、これは低めに外れた。流石の狭山も悠然と見送る。


(打順は下だけど、渡よりも狭山の方が確実にバッティングは良いはず。今の一球もきっちり見極められていたし、真っ直ぐを四球続けるのは流石に危ないか)


 四球目、バッテリーは一度変化球を挟むことにする。地面を叩く菜々花のミットを目掛け、真裕がカーブを投じる。これまでの三球との緩急で狭山のタイミングを狂わせる。


 しかし狭山も懸命に食らい付いた。バランスを崩されながらも踏ん張り、バットを両手で持ったまま振り切る。それが実って打球は前へと飛んだ。


「ファースト!」


 小飛球が一塁線上に上がる。嵐がジャンプするも届かず、打球は彼女の後ろに落ちてフェアとなる。狭山は一塁を蹴って二塁に向かおうとしたが、前に出てきた紗愛蘭が打球を掴んだのを見て帰塁する。


 狭山がしぶといヒットで出塁。ツーアウトながら真裕は再びランナーを背負っての投球となる。



See you next base……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ