バカと言う名の危険人 プロファイル9 ーフランクフルトを頬張ってー
今回のお話は、フランクフルトを頬張って、
『男どもが私のことをエロい目で見ている』と騒ぐユカリについてよ。
ユカリは40歳手前の契約社員。
半年前に大手企業の子会社A社に採用されたの。
A社には有名大学出身者から専門学校出身者まで幅広い層の人が集まり、
それぞれが得意とする分野において仕事をしていた。
ユカリが入社してから半年経ち、新入社員が配属されたの。
1名は有名大学出身者で祖父がドイツ人のリリス、
もう1名は専門学校からインターン生としてきた19歳のリチカよ。
リリスが入社すると、社内にいた学生時代からの先輩が、
『リリスは見た目以上におっちょこちょいなところがある』と言って目をかけていたの。
リチカも『まだ19歳でインターン生』と言って、周囲が気を配り熱心に教育したの。
ユカリはそんなリリスとリチカを見て、
『私は半年前に入社したばかりなのに、あんな手厚い待遇は受けなかった!』
『男どもは、ちょっと若いからって言ってチヤホヤしている』
『少し顔がいいからっていい気になっている!』
『私だってちょっと痩せればいい感じなんだから!』
と言い嫉妬した。
そもそも、ユカリは経験者採用で契約社員として雇用されている。
仕事の内容も、契約社員として一部の業務を担当している。
リリスは親会社の新卒正社員だし、リチカはインターン生だから雇用形態そのものが異なるの。
それに、ユカリとリリスは18歳、リチカとは20歳も年齢差があるの。
ユカリは社会人経験を積んだ人と言うことで経験者採用をされているのに、
新入社員やインターン生と同等に接することを求めてきたの。
その理由は、『若いから』『ちょっと顔がいいから』『少し痩せているから』、
だから『男どもがチヤホヤしている』なの。
若い二人をやっかんだユカリは、
『私は胸が大きくて、太っているように見えちゃうのよ』
『ほら、グラマラスなのよ~』
『ベビースタイルで可愛いでしょ!』
『若い子達って、脚を出して男を誘っているのよね』
『髪を染めて色気出すしかできないのよ』
と卑猥なことを言い始めた。
徐々にその表現は拡大していった。
そして、ユカリはコンビニでフランクフルトを買ってきて、
デスクで頬張りはじめた。
”フランクフルトにケチャップを塗り全体を舐め”
”口に咥えては出す”を繰り返し
”サイドから舐めまわし”
”フランクスルトの先を舌に押し付け舌先をコチョコチョと動かす”
一通り舐めまわすと、”がぶり”っと勢いよくフランクフルトを食いちぎり、
もごもごと口を動かし、”ごっくん”と飲み込んだ。
そして、
『やっだ~』
『男どもが私のことをエロっい目で見ている~』
と言い、
まるで自身が“男どもから餌食にされている”かのように
被害を訴えた。
上司のカズオ課長は
『俺、そんなこと知らないよ!』
とだけ言いその場を後にし対応しなかった。
この後、ユカリの振る舞いを見た人たちは
『許されるの?!』
『面白!私たちもやっていいんじゃない』
『怒られないんだ!』
と言い、悪ふざけを始めた。
ユカリは“勝ち誇った”表情を見せ
『やっぱりね!』
『私が正しいのよ!』
『私についてきて!』
と、非正規社員を先導するようになった。
気に入らない若い正社員に対して、
『あの子はコネ入社。ちょっと痩せてるからって媚びを売って入社したらしい。』
『あっちの子は、借金をしてまで無理をして大学へ行ったの。大学なんて行っても意味ないのに。だって、私は高卒だけど、同じ仕事しているのよ!』
『この前、あそこの子の家の前を通ったんだけど、父親が海坊主みたいな感じで、近所の人に聞いたらどうもヤクザみたいなの』
『あの子はこないだ万引きしてた。だから店員に言ってやったんだけど、ちょっと顔がいいからって店員は何も言わなかったの。』
などと、ユカリ軍団の間で噂話を広めた。
ユカリ軍団の話のネタはもっぱら、
“あの子、ムカツクのよね~”
“ちょっと顔がいいからって”
“ちょっと痩せてるからいい気になっている”
“チヤホヤされてる”
“色目つかちゃってさ”
“私も、ちょっと痩せればいい感じなのよ!”
“あの子たちは貧乏だから食事もまともに出来ず痩せてるのね”
“私ったらリッチだから食事も豪勢になちゃって、どうしても太っちゃうのよ”
と、嫉妬心とその同調をだった。
そのうちにユカリ達は、
“私たちも同じ事をしているのに、正社員だからっていい給料をもらっている”
“偉そうにしている”
“こんなお給料じゃ満足できない”
“こんなのじゃこの会社に入った意味がない”
“もっとお金が欲しい”
“貰っちゃえばいいのよ!”
と言い始めた。
そして、
『映画の割引券があるから見に行こう!』
『週末、一緒に買い物に行かない?』
『ちょっといい話があるのだけど!のらない?』
と、若い社員を誘っては男に紹介をするようになっていた。
異変に気が付いたリリスは、先輩に相談し、早々に親会社へ引き戻されていた。
インターン実習が終わったリチカはA社への内定を断り、リリスの先輩が推薦状を出した会社へ就職した。
ユカリの行動はだんだんエスカレートしていき、
万引きや窃盗まで行うようになっていた。
近所のコンビニから連絡があり、
やっと会社が重い腰を上げた。
他人のバッグに未精算の商品を突っ込んでいる姿が、
防犯カメラにバッチリ映っていたユカリは、
『私はちゃんと店員に言ったわよ!』
『盗んだのはあっちじゃない!』
『顔がいいからって許したのはそっちでしょ!』
と言いは始めた。
そして、ユカリに連れていかれて男に引き合わせていたことについても被害を訴えられた。
ユカリは、
『私もやられたんだ!』
『アイツらもやられればいい!』
『痩せてるからっていい気になっているのが悪いのよ』
『ちょっと顔がいいからって許しているそっちが悪いんじゃない』
『アンタ達が依怙贔屓するからじゃない!』
『贔屓して私たちにお金を払わないからじゃない!』
『アンタ達がお金をくれないから、こうやって稼いでいるのよ!』
『自分たちで稼いでいるんだからいいじゃない!』
と言い放ち、被害者だと主張した。
とうとう、警察が来た。
ユカリは男との関係は、
『同意のもとだ』
『私たちも楽しんだ!』
『だから問題ない!』
と言い、警察には被害を訴えなかった。
何名かが警察に被害を訴えた。
会社の顧問弁護士が間に入り警察や加害者とやり取りをした。
そして、被害者には示談金や謝罪金などが支払われた。
それを知ったユカリは、
『よかったじゃん!』
『お金をもらえて!』
『お金はこうやって稼げばいいのよ!』
『それでパーッと旅行にでも行って気分転換すればいいのよ!』
とユカリに連れ出され被害を受けた人に向かって言い、
上司のもとへドタドタと歩いていき、
『私も被害を受けた!』
『私はお金をもらっていない!』
と、会社へ被害を訴え始めた。
カズオ課長は、
『もう済んだことだ』
と言い取り合わなかった。
納得のいかなユカリは、スミオ部長のところへ行き
『お金を頂戴!』と手を差し出し、
『私も被害を受けた!』と言った。
スミオ部長が
『被害はないと言ったじゃないか』と言うと、
ユカリは
『私も被害を受けた!』
『だったら、代わりに会社が私にお金を払えばいい!』
と支払いを要求をした。
スミオ部長は、
『それは問題が別だろう』
『被害を受けたならまず警察へ相談しなさい』
『そのあと、どうするか考えるから』と言った。
ユカリは
『私は裸踊りまでさせられたんだ!』と泣き、
『警察へは被害がないと言ってしまった手前、もう変更することはできない』
『だったら、会社が私にお金を払えば済むことじゃないか!』
『だからお金頂戴!』
『お金!』
『お金払って!』と騒いだ。
スミオ部長が
『警察へ言えないようなことなのか?』
『まずは被害の実態を明らかにしないと』
と警察へ相談することを促した。
ユカリは
『会社は私たちのために何もしてくれない!』
『あの子たちはちょっと顔がいいから、若いからっていってお金をもらっているのに!』
と主張するばかりだった。
A社に監査が入った。
リリスから話を聞いていた先輩が、事前にリリスを親会社へ異動させ、
リチカを他の会社へ推薦しながらも、二人からどういった状況なのかを聞き取っていた。
そして、親会社が被害の実態を調べ上げていった。
調査の結果、ユカリを手引きしたのは、A社の女性社員アキリだったことが分かった。
そして、下卑様の話な話を好むユカリに目をつけ指示を出し、
被害者へ少額の見舞金を渡すことで隠蔽していたのはスミオ部長だった。
スミオ部長は、問題に対して背を向けるカズオ課長の性格を把握し、部下に置いていた。
カズオ課長の部下の係長やマネージャーもスミオ部長の推薦だった。
しかし、スミオ部長は
“ユカリたちは自らの手でお金を稼ぐと言ってやったんだ”
“スミオ部長やアキリは、“お金が欲しい”と騒ぐユカリに、
どうしてもお金が欲しいなら、少し手荒いがこういった方法があると知恵を授けただけだ”
“どうするかはユカリの判断だ”
“判断を下したのはユカリだ”
と言い、
“スミオ部長やアキリは関係ない”と断言した。
ユカリも
“私が自分の判断でやったんだ!”
“その人たちは関係ない”
と同調し、こう言っておけばスミオ部長からお金がもらえるだろうと考えていた。
調査が進むにつれ、状況が明らかになっていった。
ユカリを手引きしたアキリはスミオ部長の縁故者入社だった。
スミオ部長とアキリは新興宗教の信者だった。
献金をすれば教団の中での身分が上がる。
身分が上がれば贅沢な暮らしができるようになる。
そのためには金が必要だった。
会社のお金に手を付けるわけにはいかない。
だからユカリのような人に目を付けた。
『簡単にお金を稼ぐ方法』を教えた。
あとは、ユカリが勝手にやってくれる。
騒いでもカズオ課長は注意できない。
騒がせておけば、周りがその話を信じ自ずと証言する
A社はいまだ営業を続けている。