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何でそんなに構うの?……え?気になるから?

下を覗けば、この世で一番嫌いな顔をしている男がにこやかに微笑んでいた。


「またそんな所にいるんですか?危ないですよ?」


「さあ、降りてきてください」と両手を広げて言っているが、下に降りる方が危ないですけど?

何故なら、あんたがそこにいるから。


「私は慣れているから大丈夫です。……それより、何故こんな所にいるんです?」


「本日の主役がいないのですから、会場にいる意味ありませんよね?」


私が尋ねれば、すました顔で答えが返ってきた。

アイザックの言っていることは理にかなっている。しかし、ここで負ける訳にはいかない。


「残念ならがら私はもう夜会に出れるような格好ではありません。私の代わりにお兄様が相手をしてくれるはずです」


そもそもこいつを連れてきたのはイアンだ。

連れてきた者が最後まで責任を持って相手をしろ。


「……本当に強情なお嬢様ですね」


クスッと笑ったかと思えば、何故かアイザックは木の枝に手をかけ足をかけ……


(おいおい!!まさか!?)


はい。まさかでした。

器用に木を登り私の隣へやってきた。


「──おや、結構いい景色ですね」


「そうですね……」


出来るだけ距離を取り、極力顔を見ないようにして気持ちを落ち着かせているが、アイザックはそんなものお構い無しに話しかけてくる。


(本当にこういう所はそっくりだわ!!)


ダロンもそんな人だったな。と不意に思ってしまったら、ユラッと影が揺れたような気がした。


「……シンシア嬢は私の事が嫌いですよね?」


突然アイザックの的確な指摘に、ギクッと肩が震えた。


正確に言えば、嫌っているのはあんたの爺さんだけどね。


「ふふっ。本当に分かりやすい人だ。──……私は貴方に何かしたでしょうか?すみません。考えても見当が付かなくて……宜しければ理由を教えて頂けないでしょうか?」


徐々に距離を詰めながら言ってきた。

確認するが、()()()木の上で、もう私の逃げ道はない。

飛び降りることも可能だが、目の前の男がそれを許すはずがないだろう。


絶体絶命……私じゃない。アイザックが……


(ちょっと、本当にまずい……)


足元の影がユラユラ揺れているのが分かる。

頑張って抑えてこんでいるが、これ以上距離を詰められたら無理。


「──私は貴方の事が知りたい」


ジッと私の目を見て離さないその眼差しに驚いた。

私はその言葉に聞き覚えがある。

ダロンに告白された時に言われた言葉だ。


(まさか、同じ顔でもう一度言われるとはね……)


その瞬間、弾けたように抑えていたモノが溢れ出した。

溢れ出したそれは帯状になりアイザックを締め付け始めた。


「──ぐっ!!これは!?」


未知の物体に締め付けられても、冷静に今の現状を確認している様だった。

流石は副団長。そこは褒めてやらんでもない。


「……私があんたの事を嫌いな理由が知りたかったんだっけ?いいわよ、教えてあげる」


突如雰囲気の変わった私に驚きつつも、私の言葉に耳を傾けていた。


「私はね、ダロン……あんたのお爺さんが嫌いなのよ。そのお爺さんと同じ顔をしたあんたを見ているとその記憶が呼び起こされて感情がコントロール出来なくなるの。暴走した結果がこれよ」


「……祖父……?」


いきなり会ったこともない祖父の話を出され困惑していた。


「そうよ。恨むんならお爺さんを恨みなさい。……私は絶対に許さない」


睨み付けなが言ってやった。

アイザックは私の顔を見て、何も言えない様だった。


言いたいことを言ったら少し楽になったようで、アイザックを拘束していたモノは私の元へと戻ってきた。


アイザックは未だに何が起こったのか理解が追いついてなく、しばらくその場で呆けていた。


「これに懲りたらもう二度と私には近づかないで……次は命がないわよ?」


これだけはっきり拒絶を示したんだから今後はもう絡んでくるもないだろうと安心して屋敷へ戻った。

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