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神様……ダイエットした方がいいですよ?

今私の目の前には、一生懸命足をばたつかせて穴から出ようと必死にもがいている小動物がいる。


「……これが邪魔なんでしょ?」


指で白いモフモフした腹を突っついた。

どう考えても穴が小さい。この神様は自分の体型を把握しているのだろうか?


「カロリーナか!?カロリーナなのか!?すまんが助けてくれ!!」


「ちょっと、それが人に頼む態度?神様だからって調子に乗らないでよ?」


神様だろうが人に頼む時にはそれなりの態度があるでしょ?


「──お前!!私は神だぞ!?」


「それが何よ?別に私はいいのよ?一生このままでも」


手も足も出ないとはこの事だろう。

ツンツンとはみ出ているモフ毛を突っついていると、擽ったいのか笑い始めた。


「あはははは!!やめろ!!分かった!!分かったから!!」


流石に観念したらしい。


「……カロリーナ様、申し訳ありませんがお手をお貸しください……」


聞こえるか聞こえないかの絶妙な声で頼んできた。


「まあ、ギリギリ合格ね。次はやり直しだけど」


そう言いながら垂れている足を思いっきり引っ張ると、スポンッ!!と見事な肥満体型のスズメが現れた。


「あぁ~、酷い目にあった」と羽根の毛繕いを始めたスズメだったが、腹にまでくちばしが届かない……必死にくちばしを伸ばしているが、かすりもしない。私は一つの確信をついた。


「……神様、太ったでしょ?」


ビクッと羽根が震えたのを見逃さなかった。


初めて会った時もそれなりの肥満体型だったけど、あきらからに前より増えている……肉厚が……


(何でスズメの姿だとこんな中年体系になるの?)


転生する時に会った本来の神様の姿はスリムで美男だった。

あの姿で来ればこんな醜態晒さないで済んだだろうに。


「こ、これはだな……冬毛!!そうだ!!冬毛なのだ!!」


「……今、夏ですが?」


「うぐっ……」と言葉に詰まった神様を掴みあげ腹を揉んでみると、見事な太鼓腹。


「神様、ダイエットって言葉知ってます?これじゃ飛べないですよ?飛べないスズメはただの鳥肉です」


「……私、焼き鳥好きなんですよね」と言うと慌てて羽を広げて自分の体を包み守る体制に入った。


その姿が可愛らしくて面白くて不覚にも笑ってしまった。


「あはははっ!!!冗談ですよ。神様を焼いて食べたらお腹壊しそうじゃないですか」


「それに、脂肪だらけじゃ美味しくないしね」と付け加えると、ブルっと小さな体を震わせていた。


まあ、神様をからかうのはこのぐらいにして、ここに来た理由を聞こうか。


「……お前、神をぞんざいに扱うとろくな死に方しないぞ?」


「あら?もう体験済みだけど?」


そう答えると呆れたようにため息を吐き、ここに来た理由を話し始めた。


「──お前、ブロンド公爵家の人間と接触したらしいな」


このタイミングで現れてくて良かった。

丁度その事について考えようかと思っていた所だ。


「そうよ!!あれ誰よ!!()()()の子供にしては若すぎるんじゃない!?」


「……あれは孫だ」


……孫?子供の子供の?


あぁ、それなら何となく腑に落ちる。

あの時の子供が子をもうけたのか。

……なるほど。そりゃ、ダロンに顔が似ているはずだ。


「お前がダロンの孫に出会った事で、お前の心に再び闇が宿ってしまった。私はお前を監視する為に派遣された」


その言葉に心当たりがある。

アイザックの顔を見た時に奥底から湧き上がってきた憎悪感。

あれは正しく悪霊だった頃、私が抱えていたものだ。


そして、この目の前の肥満スズメは、私がまた暴走しないように監視役兼制御役として天界から送られてきたらしい。


まあ、要は左遷って事でしょ?

体良く追い出されたのね。


哀れみの表情で見ていると、何かを察したスズメは「違うぞ!!私はエリートなのだ!!」と必死に言い訳を述べていた。


しかし、そうなるとこの口煩いスズメが常に私に付きまとうことになるって訳で……


「えぇ-!!ヤダ-!!帰ってよ-。自分の情緒なんて自分でどうにかするからさぁ」


私はスズメを掴み窓から空に向かって全力で投げようとしたが、スズメは必死に抵抗して手から離れない。


「そう言わずに頼む!!ここに置いてくれ!!置いてくれるなら鳥籠でもいい!!天界に戻っても帰る場所がないんだよ-!!!」


オヨヨ……と泣き出してしまった。


なんなんだこの神様……

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