ライって本当に神様だったのね
ポワッとアイザックの体が光りだし、何が起こっているのか分からない私にはどうすることも出来ず、その場で見てることしか出来ない。
すると、頭上から聞きなれた声が聞こえた。
「──……そいつを生かすのか?」
羽音と共に現れたのはライだった。
「本当にいいのか?こいつはダロンの孫だぞ?また裏切られるかもしれんぞ?」
そんな事は分かってる。
人の気持ちなんて私には分からないけど、アイザックは大丈夫だと自分の直感を信じたい。
それに、今の私なら裏切られても返り討ちにするぐらいの度胸は付いた。
(伊達に悪霊やってないわよ)
心配しているライの頭を優しく撫でてやるとライも諦めたのか、盛大な溜息を吐いた。
「……私は生命を司る神だ。お前に預けたまじないには、お前が心から生かしたいと思った人間にだけ反応する様になっている。まあ、簡単に言えば、お前を試した」
なるほど。
最初から私がアイザックの命を握っていたのね。
そして、私はアイザックを生かす選択をした。
これが幸と出るか吉と出るかは神のみぞ知るってね。
「正直、このまじないが発動する事はないと思っていたんだが……発動したという事は、お前……」
ニヤニヤと嘲弄しているライの視線に、カァーと顔が熱くなった。
あの時は必死でそんな事気づかなかったのに、今気付かされた。
「あれは、違うわよ!!あれよ……そう!!人命救助!!」
必死に言い訳を述べるが、ライは「はいはい」とニヤつきながら聞く耳持たない。
(こいつ……面白がってるな!?)
若干ライに殺意を覚えつつアイザックを見ていると、ピクッと手が動いたような気がした。
「アイザック!?」
「………ん……ここは……?」
ゆっくりとアイザックの目が開いた。
生き返ったことに安堵したのか、目から絶え間なく涙が溢れてきた。
「もぉ、何私に心配かけさせてんのよ!!」
私が怒っているのにアイザックは何故かにこやかに微笑んでいる。
「……ふふっ。死にかけてみるものですね。貴方から心配される日が来るなんて……」
いや、死にかけじゃ無くて、死んでたけどね。
そんな事より、何どさくさに紛れて抱きしめてんの?
セクハラで訴えるわよ?
(……あれ?抱きしめられてる?)
おかしい……抱きしめられても嫌な感じがしない。
むしろ、変な安心感がある。
ダロンに抱きしめられてもこんな安心感はなかった……
(暖かい……)
久しぶりに感じる人の体温ってこんなに暖かいものだったのかと思い知らされた。
「……おい、いい加減にしろよ?私はお前達の睦事を見に来たんじゃないんだが?」
私の耳元でライが不機嫌そうに言ってきたのをきっかけに現実に引き戻された私は、慌ててアイザックから距離を取った。
「──おや、残念。もう少しシンシアの体温を感じていたかったんですがね」
「な、な、な、な……!!!」
なんて事言ってんのよ!!と言いたいが言葉が出てこない。
しかし、文句はこの状況を打破してから言うことにする。
私は騎士達にアイザックの居場所を教えるために走った。
しばらく走ったところで運良くイアンに遭遇し、無事にアイザックを救出することが出来た。
「──私がこうして生きていられるのはシンシア、貴方のおかげだ。傷が治り次第お礼に伺うので宜しくお願いしますね」
運ばれ行く時にアイザックがそんなことを言っていた。
まあ、くれるものなら貰うけど……とその時は安易な考えでいた。