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アイザックの行方

とりあえず外に出たはいいものの……

思った以上の雨で、足元は悪いは視界も悪いはでレインコートなんて何の役にも立たない。


こりゃ早いとこ見つけないと、こっちまで遭難仕掛けない状況だ。

それもこれも夫婦喧嘩に巻き込まれたせいだ。


「まったく……早く仲直りしてよ!!」


空に向かって叫べば、その言葉に答えるかのように雷が鳴り響いた。


(……これは、まだ長引きそうね)


神様も人も痴情のもつれに関しては大差ないわね。

でも、いい加減どうにかして欲しいと願いつつフードを深く被り嵐の中、川下へと走った。



◇◇◇



「はぁ……はぁ……結構下ったはずなんだけど、アイツの姿がないわね」


川沿いを走ってきたから、川岸に転がってれば気づいたはずだけど、人の姿なんてなかった。


「……この水量と流れじゃ生きてるか分からないわね……」


ここまで来るのに、橋が崩壊していたり、川が溢れていて遠回りしたりと結構な距離を走ったから、体力的にも限界が近い。

それでも、私は探すのを諦めない。


フードなんて走っているうちに取れ、髪はぐちゃぐちゃ、全身泥だらけになりながらアイザックの姿を探した。


「もお!!生きてるなら返事ぐらいしなさいよ!!」


だんだん腹が立ってきて、その場で大声で叫んだ。

しかし、当然返事はない。


(絶望的だわ……)


一気に疲れが出て、その場にしゃがみこんでしまった。


もう、疲れた……これだけ探していなんだもの。きっとアイザックはもう……


──ううん。アイツはこれぐらいじゃ死なない


執着心はダロン以上なのよ。私を残して死なないわ。


気力で立ち上がり再び走り出そうとしたところで、人が倒れているのを発見した。


「──アイザック!!?」


慌てて駆け寄ると、頭から血を流し気を失っているアイザックだった。


相当血を流しているらしく、顔色は良くない。

このままでは確実に死ぬ。そう確信した。


「ちょっと!!こんな所で死なないでよ!!あんたの爺さんにまだ文句が言い足りないのよ!?」


そう叫ぶとピクッと手が動き、ゆっくり目が開いた。


「あっ!!良かった、気がついた!?ちょっと待ってよ!!今人呼んでくるから!!」


イアン達騎士を呼びに行こうとしたが、腕をアイザックに掴まれた。


「……夢……だろうか?……シンシアが……あぁ、最期の願いを神が聞いてくれたのか……」


「いや、何訳の分からないこと言ってんの?夢じゃないわよ……」


私の頬に優しく触れると、微笑みながら最期などと口走っているアイザックになんて言っていいか分からない。

私ですらこの現状があまり芳しくない事は分かっている。


今から騎士を呼びに行っても、ここに到着するまで時間がかかる。

かと言って、アイザックを連れて歩くには私の体力もアイザックの体力も持たない。


目の前の人が死にそうになっているのに、自分は何とも無力なのだろう……


そう思うと泣きそうになってきた。


「……ふふっ。何を泣いているんです?……泣き顔もいいんですが、私は笑った顔が見たい……」


「一度も見たことがないですから……」と付け加えられた。


そう言えば、笑顔を一度も見せたことがなかった。

死ぬ間際の願いがそれでいいのか?と突っ込みたくなるが、今はそんなこと言ってる場合では無い。


私はスゥと息を吸い込み、アイザックに向けて微笑んだ。


(ちゃんと笑えているだろうか……)


顔が引きつってないだろうか……出来ればもう少し小綺麗な時に言って欲しかった……


「……あぁ、綺麗だ……」


私の頬に触れながらそう一言伝えると、アイザックの手は力なく地面に落ちた……


「えっ……?」


腕の中のアイザックは目を瞑り……息をしていなかった……


「ちょっと!!死ぬなんて聞いてないわよ!!私を置いて死ぬの!?あんたの執着ってこの程度なの!?」


「起きてよ!!!!!」


私の悲痛な叫びは虚しくも雷雨にかき消されて、誰も私達の存在に気づかない。


「……死なせない……」


前の人生で少しだけ齧った事のある人命救助の方法を試す事にした。

顎を持ち上げて、気道確保。そして、口から空気を送り込む……


アイザックの口に空気を送り込んだ瞬間、アイザックの体が光出した。


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