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生活拠点

昼食を食べ終えたタイミングで少女に話しかける。

当然というか、ボクは日本語しか喋れないので実際はボディーランゲージなのだが。

何とかして意思疎通を図らなければいけない。

言語を教わりたい。

喉を押さえてみる。

『どうしたの?喉が痛いの?』

何やら心配そうに答える。内容は掴めないが心配そうな表情をしている点からこちらの主張は通っていないと見える。

口元の前で手の開閉を繰り返す。

『?』

ダメだ伝わらない。

言葉は諦めよう。

何とかして少女の意思を確認しなくては。

流石に寝てる時に殺されるなんてオチはないだろうが、今後一緒に生活をするのか人間の街に戻りたいのか。ここらへんは聞かないと今後の計画に支障が出る。

この昼食から夕食までの間ーー行動でこちらの意志を伝えるしかない。




くるみと水で腹が膨れました。

目の前のゴブリンが何かしている。

喉を押さえているから痛いのでしょうか?

「どうしたの?喉が痛いの?」

このゴブリンもまだ生後一週間くらいです。生まれたてなのにこれだけ無理をしたのだ。何か呪いを患っていても不思議はない。

不安げに見つめているとやがて残念そうに顔をそらす。

今度は口の前で珍妙に手を動かしている。

何がしたいのだろう。

うーん。やっぱり言葉が通じないのは不便だ。とりあえずこの森で安定した生活を送れるくらいには環境を整えないと。

まず水源がどこか知りたいな。

ヤシの実の殻に詰まっている水を見つめる

ゴブリンは私の行動から何かを察したのか、洞窟の外に出ます。そしてそのまま真っ直ぐ進み、草をかき分ける。

ーーおぉ。

一面に広がる湖。

人生で初めてこれだけの水を見た。

こんなにも美しいものなのか。

爛々輝く陽の光を反射して虹色に光って見える。

もしかしたら魔術的効果もある神水であっても不思議はない

はるか先に水平線が見える。

この世界で一番でかい湖がこれなのかもしれない。

ここを水源として活用するのは合理的だ。

道中で危険な魔物の巣は見当たらなかった。

「戻ろっか」

踵を返す。

これからこの子と一生ここで暮らしてもいいかも。

どうせ人間社会で奴隷をやるくらいなら自然に囲まれて生活したい。



水源を見せたし最悪ボクが死んでも生活はできるだろう。

帰り道で近くにある果実が成る木をいくつか見せた。

肉が安定して食べられる環境ではない。

あと器を作りたいな。

いつまでもヤシの実の殻を使うわけにはいかない。

土器の作り方……。

泥を燃やしたら作れるだろうか……。



一週間の夜。

まだ日は昇っていない。

言葉こそ通じないけれどある程度の連携は取れるようになった。少女の名前がアリスだと推測できたし、朝起きた時の挨拶や寝る前の決まり文句も言えた。

それから舌が流暢になった気がする。

ゴブリンは成長が早いのか、たった一週間で簡単な発声が可能にーーあとは文法や単語さえ蓄えていけば会話も可能だろう。

ただ成長が早いということは寿命が短いということでもある。

ゴキブリは一年で成虫に、さらに一年で死ぬと美空が言ってたっけ。

あまりゆっくりとしてられない。

水はある。

肉も三日に一回は食べているとはいえ、アリスの成長期の少女なのだから潤沢な栄養を与えたい。

もっともそれはボクに言える話だ。鏡がないから分からないけどこの身体も成長期のはずだ。

流石にアリスの身長は越したいところ。

母親の成長期を気にする息子なんて荒唐無稽な存在はボクぐらいなものだろう。

あるいは、この世界では転生はありふれた現象なのか?

微睡みながら取り止めのないことを考えていたらピキっと己の抱える内側から音がした。

ついに孵化の時が来たか。

ここに来てすぐの頃、大鷲の巣から食料目的でさらってきた卵だったが調理が出来ずに断念。

もしかしたら刷り込みで大鷲を手名付けられるかもと期待して毎晩温めながら寝ていたのだ。

とはいえ、こちらの世界ではそんな振る舞いをしない可能性もある。

あの大鷲は体格も大きくボクでは歯が立たなかったけど卵の大きさがボクの全長よりちょっと小さいくらい。

腰に巻きつけた鹿の角ーー三日前に手に入った代物ーーをぐっと握り締める。

この角は動物の皮を割くのに重宝している。さすがにナイフのような切れ味はないが強度は充分。目を刺せば大鷲にも勝てるはずだ。

ーーパキパキッピキ

寝ているアリスもこの張り詰めた空気を察して目を覚ました。

「おはよう『あれ、卵、へー割れそうなんだ』」

寝起きの挨拶、後半の文はよく分からなかったが状況を察しているはずだ。

ズボっと殻の上部がはじけた。

その隙間から覗く鳥頭。

クリクリの瞳がボクの身体を射抜く。

いけるか……?。

「ピィィィィイイイ」

鈴を転がしたような綺麗な高音で鳴きながら緑色の肌を舐めて、頭を擦り付ける。

距離を取ると近づいてきた。

これは……懐いている?

刷り込みは成功したらしい。





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