転生しちゃった テヘペロ
拝啓 母上殿
少し肌寒い季節になってまいりました。
そちらはどうお過ごしでしょうか。
私は上京してから、ブラック企業に就職してしまった、いわゆる社畜というものになっていますが、仲間と共に、意外と楽しくやっております。
さて、本日手紙を宛てましたは、軽い近況報告のようなものです。
ある日私は、いつも通り会社へ向かっておりました。
すると、何ということでしょう。
暴走トラックがやってきたのです。
運転手を見ると、居眠り運転のようでした。
私と通ずるものを、そこに感じた気がすることはなかったのですが、少し、あたりを見回してみました。
すると、小学生くらいの女の子が気付かず歩道を渡っているではないですか。
他力本願の私が、周りに助けに行く勇者はおらぬかともう一度、辺りを見渡しましたが、さすがブラック企業。
かなりの早朝からの出勤ですので勇者どころか、わたしと女の子、それ以外の誰もいません。
つまりです。
世の摂理ですよ。
こんな状況、助ける以外の選択肢は無いではないですか。
と言うことで、私は三十年ぶりでしょうか。
小学生の頃以来の全速力の走りを見せました。
しかし、鈍臭い私です。
少女を蹴飛ばすと、やはりトラックは目の前です。
トップアスリートであれば、この状況はいと容易く解決されていたでしょうか。
そもそも走る速さの前に、思考が長かったのもあると思いますが、暴走トラックですし、トップアスリートでも無理です。
絶対に無理です。
逆に許しません。
...
すいませんでした。
ただ、これを馬鹿の私が死ぬ寸前で思考できたのを褒めてください。
まあそう言うことがありまして、その後、まあ、本当に色々なことがありまして。
この先のお話は、また後日。
これからのお話は、私の苦労談と言うだけのことですし、笑っていただけると嬉しいです。
では、またいつか、手紙ではなく、本当に会える日がきます様に。
その時まで、どうかお体にお気をつけて。
令和2年10月○日
佐伯飛鳥
佐伯麻美子 様
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
おまけ
「いやいや、大きくなりましたな、あの子も。もう40代とは。しかし、トラックに轢かれたなんてねぇ。」
「まあ、手紙もくれたし、意外と元気だろう。」
「そうですねぇ」
「お母さん!お父さん!ちょっとは心配してよ〜」
「あなた、女の子蹴飛ばしたの?」
「あ...申し訳ございませんでしたorz」