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美少女ギャルの罰ゲーム告白見抜いて許したら絡まれるようになった件  作者: 夜依
美少女ギャルの罰ゲーム告白見抜いて許したら絡まれるようになった件
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第4話

 廣瀬と別れた後、購買横のベンチで冷め切った缶コーヒーを飲み干してようやく教室に戻った。授業中のお咎めこそ無かったが居残りが決まった。6限はする事も無いLHR(ロングホームルーム)。篠崎に昼休みの件を謝りそのまま勉強を見ているうちに終わっていた。

 放課後は、授業のほぼほぼ半分、かろうじて出席扱いになるまでサボっていた事を咎められ、罰は明日となった。罰って言い方怖いよ。何させられんの? 生徒のお悩み解決する部活に入れられたりするの?




 普段の数倍体力を使った一日だった。今日を振り返りそんなことを思いながら、夕飯の席に着く。


「「いただきます」」


「お兄ちゃんお疲れ?」


 少し味噌汁を飲んで、野菜炒めに手を付けたところで祐奈に聞かれる。


「ああ、まあちょっと学校生活がな」

「ふーん、何があったの?」


 興味津々らしい。まあ、受験生というのもあって高校生活がどんなもんか気になるんだろう。何事もなければ来年の今頃は高校生なのだし。いつもの学校生活と対比する形で今日の話をしてやる。


「お兄ちゃんの高校生活楽しくなさそう。あとお弁当の件はごめんなさい。3年生になってから給食になったの。机の上のはお兄ちゃんのだと思ってた」

「そうなのか。なら、まあ、良かった。じゃあ明日から弁当なくていいんだな」


 いやー、ほんとに良かった。嫌われてるとか美味しくないとかじゃなくて。美味しくない、とか言われようものなら、こうして俺の作った夕飯を食べてもらうのも申し訳なくなって毎日毎食、外食になるまである。


「必要な時だけ言う。お兄ちゃんの作るご飯美味しいから」

「はいよ、ありがと」


 やっべぇ、めっちゃ嬉しい。これはもう明日からさらに夕飯作るの頑張らなくちゃな。これはもう祐奈記念日とか制定した方がいいんじゃない? いや、短歌とか詠めんけど。


「でもまあ安心したよ。去年の夏休み明けみたいな感じじゃなくて。去年みたいだったら、お兄ちゃん今度こそほとんど寝れなくなっちゃうだろうし、また倒れちゃうだろうから」

「去年のはなぁ……。まあ、俺も懲りたから二度と関わらん」


 そっか、と言うと続けざまに、ごちそうさま、と言って食器を下げだす。


「お粗末様でしたっと、何飲む?」

「カフェオレ。淹れたら飲みながらでいいから廣瀬さんって人の話をしてよ」


 はいはい、と返事をしてお湯を沸かす。お湯が沸くまでの時間に皿を洗いながら、廣瀬について知ってることを軽く頭の片隅でまとめてみる。が、大したことは出てこなかった。


「それで廣瀬さんって人はどんな人なの?」


 コーヒーとカフェオレを淹れてテーブルに戻ると、祐奈が早速聞いてくる。


「俺もあんまり知らん。同じクラスでトップカーストの人? あとよく一緒にいるあーしさんがめっちゃ怖い」


 祐奈はカフェオレを飲みながら、うんうん、と頷いていたが俺がその後に続けないと目を何度か瞬かせ大きく見開いた。


「えっと、それだけ?」

「ああ、そうだけど。マジでただのクラスメイトなんだよ」


 いやー、クラスメイトのことでももう少し知ってると思うけどね、と言ってムムムと唸る祐奈。お兄ちゃんは関わらないクラスメイトって他人と同じだと思ってるからね。篠崎は根も葉もない噂を好き好んで拾ってくる人間じゃないから、俺のもとに噂話のような情報も来ない。


「ねえ、お兄ちゃん」


 何か言いたいことがまとまったのか、改めてこちらを見る祐奈。


「なんだ」

「廣瀬さんの連絡先とか知らない? 話してみたい」


 すまん、と言いながら携帯に最初から入っている連絡先を開いて携帯を渡す。登録されているのは上から順に、父親、母親、祐奈、書店、篠崎の5件。祐奈は信じられないものを見たと言いたげだ。


「ねえお兄ちゃん、いくら探しても他の連絡ツールも連絡先も出てこないよ。バグ?」

「携帯は正常だから。これが俺の友好関係の限界だから」


 もしかしたら俺が人間としてバグっているのかもしれん。まあ、感染症なんかが流行った時に、他者との接触の少ない人間は生存率が上がるっていうし、人類という種を守るためには俺みたいなやつも必要なんだ、ということにしよう。


「お兄ちゃんと連絡先交換してる篠崎って人何者なのさ」

「中3くらいから話すようになった残念イケメン。連絡先交換したのは去年の一件で必要になったからってだけで普段は連絡しない」


 もういっそ消してしまってもいいんじゃないかって思うレベルで使わない。祐奈が篠崎に興味を持ったら良くないからな。あれにお兄さんと呼ばれる日が来るならあーしさんに仕留めてもらった方がいい。


「収穫なしかぁ。お兄ちゃんに罰ゲームでも告白する人がいるっていうから気になったのに」

「いや、教室の隅でぬぼーっとしてる人畜無害そうで手近な人間が俺だったってだけだろ」


 自分で言ってて虚しくなってきた。まあ事実だからなんだけれども。


「だってその篠崎って人に告白した方が得じゃん。トップカーストならお兄ちゃんみたいな根暗ボッチに告白するより、残念でもイケメンに告白した方が立場やらプライドが守られるんじゃない?」


 事実だけどさ、もうちょい言い方なかった? 確かに教室での俺は根暗ボッチって言われてもしょうがないけど。あ、でも篠崎と喋ってるからボッチじゃない?


「じゃあ、そういう罰ゲームだったんじゃない? ゴールデンウィーク明けるくらいには飽きてるでしょ」

「ゴールデンウィークまであと1週間ちょっとだ。2週間ともたず飽きられちゃうお兄ちゃん可哀想」

「はいはい、可哀想でいいから。とっとと風呂でも入って勉強しろ受験生」


 むー、と頬を膨らませてリビングを後にした祐奈が最後にぼそりと呟いた、絶対に何か接点があると思うんだよなぁ、という台詞が喉に刺さった魚の小骨みたく頭に残った。

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