カップ麺
俺の目の前には一個のカップ麺(定価160円)がおいてある。もちろんお湯入れてある。箸も持っている。あとは食すだけ。
しかしその前に大きな壁が立ちはだかる。
時間だ。
物にもよるが、カップ麺はお湯を入れて三分間待たなくてはいけない。
この時間はやたらにながく感じる。しかし、俺はすでに二分、つまり全工程の三分の二は消化していた。つまりあと一分待てば、晴れて俺はカップ麺を食すことができる。
だが
カップ麺を待つラスト一分は長い、やたらに。
すでに二分も待っているのだから、半分以上完成しているようなもんじゃないか。そうは思っていても二分の時点では麺が固すぎて食えたもんじゃない。俺はやわらかめがすきなんだ。だがこのカップ麺「おいしいよ」「たべちゃいなよ」「おなか、すいてるんだろ」「一分くらいいいだろ」と甘いで耳元にささやいてくる(ような気がする)。ああぁん、食べたい。食べてしまいたい。おなかだって限界ゴロゴロ。ん?ゴロゴロ!?
「はうぁ!?」
ちょ、ちょぉぉぉと待てぇぇぇぇ。ナゼイマコノタイミング・・・。今トイレに行ったら確実に三分オーバー、下手したスープを全部吸ったやわらかブヨブヨ麺がお持ちかねだ。
それは、それだけは避けなくては・・・。
いくら柔らかめが好きだといってもブヨブヨはいきすぎである。それにもうカップ麺としての意義もへったくりもない。おれは、スープ込みでカップ麺がすきなんだぁぁぁぁああああ!
「くそっ、くそう」
タイムウォッチに目をやる。できあがるまでせいぜい三十秒弱。我慢できない時間じゃない。それにカップ麺を食す時間も含めると十分もかからない。ここは、ここは、ここはぁぁぁあ・・・
「トイレに行くか」
俺はトイレをとった。
ああわかっている、わかっているさ。もしこの状況を第三者が見ていたら、トイレを選びやがったなこのクソやろうとでも思っているんだろ。だが考えてもみろ。こんな状態でカップ麺を食したところでおいしいはずがない。そんな義務感で食べておいしいはずがない。カップ麺のほうだってこんな味のわからない状態で食べてもらうよりも、多少伸びてしまったブヨブヨ麺の状態で食べてもらったほうが幸せだと思う。いやそうに違いない。それに俺は、食べ物を食べているときはなにものにもじゃまされたくないんだぁぁぁぁ。
「あ、お兄ちゃんトイレはいるの?」
「へぇ?」
振り返るとそこには妹の妹子が立っている。いや別にそんなことはどうでもいいんだけど。それよりもその手に持っているものってまさか、そんな・・・
「おまっ、その、カッ・・・」
「ああこれ?おにいちゃん、トイレ長いからその間に伸びちゃうでしょ。だから変わりに・・・」
ズルルッ、と一口。
「あっ、これおいしーね、新商品?」
その瞬間すべてがはじけとんだ。頭が真っ白に、真っ白になった。俺はそのままだまってトイレに入って声を押し殺しながら、
泣いた。
初投稿です。下ネタ関係でスミマセン;