18‐ 2203年・ボゴダの壊滅
アイリーが眉を強くひそめた。
『何故肯定するんです? ハリストスとは何ですか?』
『ハリストスが何であるかは調べればすぐに分かる事よ。でも知っただけでは何も理解する事はできない。…そうね。ハリストスを語るために必要な歴史を見せるわ。リッカちゃん、アイリーの視覚と聴覚を借して頂戴』
アイリーの周囲の風景が変わった。映像と音声のみを転送するタイプの仮想現実情報がアイリーに届けられる。
映像は数世代前の技術水準で撮られたものだろう。
解像度、再現度が現代のものに比べると格段に落ちる。感覚で言えば視ているのではなく、観せられているような臨場感の欠落に気を散らされる。
アイリーの目に映るのは5階以下の高さのビルが並ぶ市街地。低層ビル群の向こうに高層ビルが林立している。
目の前に並ぶビルの殆どは多くの看板が上下に並ぶ雑居ビル。外壁が複数の色に塗り分けられていて非常にカラフルな景観となっている。
時刻は分からないが日差しが強い。午後の早い時間だと思われた。商業エリアだろう、車の往来はなく徒歩で移動する人で大通りは溢れている。服装は民族色の薄い世界共通のカジュアルファッションだが、何かとてつもない違和感がある。
アイリーの傍らにリッカが現れて物珍しそうに周囲を見回している。
テレサの姿は見えない。人間の視覚内に自分の姿を投影する機能をナビゲーター以外のAIが実装している事はほどんどない。テレサも装備していないのだろう。
『テレサ、ここは何処ですか?』
問いかけに声だけが応えてくる。
『今から146年前。コロンビアの当時の首都・ボゴダ。虐殺のエレメンタリスト・アンチクライストによる最初の大量虐殺の記録。これからすぐに750万人都市を数十分で死滅させた映像が始まるわ』
テレサの声が一層低くなった。
『よく見ていてねアイリー。貴方は現代のハリストスとして虐殺のエレメンタリスト・アンチクライストと対決する事になるのだから』




