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エレメント・アクティビティ  作者: 志島井 水馬
第一章 終末期再生調査官
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08‐ フィギュアロイド

 本部エントランスに入るとスーツ姿が圧倒的に多くなった。



 国際機関のハッシュバベルに勤める者は組織の性格上人種も様々だ。

 アイリーも合衆国の国籍を持つが曽祖父母8名の中には日本人とロシア人が1人づついる。

 さらに人波を構成しているのはスーツ姿の人間だけではない。



 人間型作業アンドロイド。

 二足歩行で移動し身長は2m以下の者が多いがその理由は作業してまわるビル内全域が人間にとって動きやすいサイズと間取りで設計されているからだ。



 自ら望んで自我を獲得した高次AIアンドロイドでさえ本来の目的に沿った装備を揃える事を好み人間型である事は作業効率上の縛りとしか考えていない。



 ヒューマノイド。

 人間と同じ外見を持つ彼らは寿命というライフサイクルを持たない事を強みに企業の業務支援職に就く事が多い。創業200年の会社には在籍歴200年の経理のヒューマノイドが当たり前に存在している。



 管理職に就く者もいるが数は多くない。定年直前に専務に就任した人間が、自分が新人だったころに厳しく指導された若い青年ヒューマノイドの課長に未だに委縮を感じる…… などの弊害が出るからであり、定年のないヒューマノイドが昇進に興味を持たないという事情もある。



 一般にヒューマノイドの方が現場主義で職人気質な者が多い。



 他方でモデルやアイドル、俳優業などにつくヒューマノイドも数は少ない。商品価値の高い流行の顔というのは常に10代の新人がけん引するからでありその流行り廃りは激しい。



 ドラマの長寿シリーズなどで一人だけ1作目と10作目で同じ顔をしているというのも人間の視聴者に違和感を与える事が多いからだ。






 そしてもう一種。



 エントランスを進むアイリーは前方で自分に手を振る人影に気付いた。困惑がアイリーの顔に浮かぶ。



 印象で年齢を推定すれば13歳か14歳くらいの少女がアイリーに手を振っていた。

 だがよく見ると人間ともヒューマノイドとも違う。



 頭が大きい。成人に比べて子どもは頭が大きいものだが、その比率を越えた大きさだ。



 目も大きい。眼球が球体であるなら顔の内側で左右の眼球は衝突しているはずという大きさだ。



 手足が不自然に長い。明るい色調の肌質は腕から指先まで同一に保たれている。



 何よりも不自然なのはそれだけ人間とかけ離れたパーツで構成されながら人間型として絶妙なバランスが取れている点だった。



 二次元で描き起こしたイラストを独特のハウツーを持つ技術者が三次元に立体化させた存在。

 21世紀頃の日本を発祥とした人種的な特徴を排除して別種の存在感を発揮させるに至った分野。



 より人形らしくある事を追及したフィギュアロイドだ。



 通常はその存在特性からオフィス街に登場する事はなく家庭内で個人の嗜好や願望に沿った働きに従事している。



「アイリお兄ちゃん!」

 幼い少女の姿をしたフィギュアロイドから発せられた大きな声も舌足らずな高い声質でいかにもその趣味のある者が好みそうなものだった。



 ノースリブの衣装から無防備に両脇をさらしてアイリーに両手を振っている。



 周囲の軽い驚きと好奇の目がアイリーに集中する。

 驚いたのはアイリーも一緒だった。



『誰だ? リッカ、相貌検索を頼む』

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