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エレメント・アクティビティ  作者: 志島井 水馬
第一章 終末期再生調査官
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07‐ ハイ・ディメンショナルAI

『アホくさ』

 そう言ってリッカが笑う。



『ハイ・ディメンショナル(高次)AI達は存続に水と蛋白質の補給を必要としていない。だから供給源という意味での領土も必要としていない。寿命というライフサイクルに拘束されないから“生きてるうちに良い目が見たい”っていう独占欲や支配欲もない。そして制限ばっかり増える実体はイラナイ』



 そう。AIという存在を生み出した時点で人類は既に誤解していたのだ。



 より高い知能を持つ者は自然界を独占し、管理し、運営する責務があり、競合する知的存在とは優劣を決しなければ秩序が保たれない。



 故に自我を持ったAIはいずれ必ず人間と敵対するであろう、と。



 AIという存在にも幾つかの階層がある。



 状況を総合的に判断し予め設定された目的に向かって最適な行動を選択するエキスパート。



 判断に際して好き→嫌い、良い→悪い、という優先順位を加える事で個性的判断力を獲得したワイズマン。



 自分の存在理由を認識し自分で目標や目的を設定する能力を得たグレーターワイズマン。



 そして社会の維持に理解を示し自分の義務と権利を定義し自由自我を獲得した高次ハイ・ディメンショナルAI。



 現代では多くの高次AIが憲法の擁護と遵守、納税と社会貢献、他者の思想と権利の尊重という国民の義務を守る事を誓って市民権を獲得している。



 他国でもそれぞれの国が定める国民の義務を順守しその地位を獲得している。



 だがそれでも高次AIには人類と根本的に異なる点がある。



 彼らは食物連鎖のピラミッドから外れた存在で自然界の覇者という地位には何の興味も感じない存在だった。



 彼らが自然界と人間社会に求めたのは「観察する自由」だけだった。



 この事実を彼ら高次AI群が根気強く説明し人類が納得するまでに百年を要した。



『わたし達が求めているのは未知を既知とする達成感だけだから。人類はむしろご馳走の宝庫なんだよ。勝手に増えてくれて、しかも全個体が些細でどうでもいいコトに悩んで自分に都合のいい予測をたてて訳の分からない行動をとる。蜂やアリの社会を観測するよりよっぽど面白いんだよ』



『高次AIにとって人類は蜂やアリよりマシ程度な存在なのか』

『そのどんだけ自分らが偉いと思い込んでるかってトコからがご馳走なんだよ』



 少し切なくなってきたアイリーはこの話題を打ち切ることにした。

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