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エレメント・アクティビティ  作者: 志島井 水馬
第四章 治安介入部
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16‐ 奇襲

 並走していた別の虎もクラリッサの動きに対応する事はできなかった。



 1頭目の虎が倒れる前にクラリッサの体はすでに地面すれすれを滑空して2頭目の虎の腹部に辿りついてる。



 目標を見失った虎が疾走を止めようと両前脚に力を込めた瞬間に滑り込んだ腹の下から両前脚の関節を同時に破砕。体の前後を入れ替えて虎の体を背負う様に立ち上がり巨体の全体重を砕かれた前脚へとかける。



 自分の身長よりも遥かに長い虎の体が縦に起き上がったところでその腹をカタパルト代わりに強く蹴ってクラリッサは青い衣の男へと突進した。



 アイリーはクラリッサの上半身が男の目前で沈む様に消失し、背後の何もない空間から飛び出してくるのを目撃する。



 男の死角へと入ったクラリッサの周辺で地面が微かに波打つ様に動きクラリッサの足元から服の中へと何か細かなものが流れ込んだ様に見えた。



 アイリーの向上した観察力だからこそ捉えられた一瞬の出来事だ。



 クラリッサが男の死角へと消えたと同時に狙撃班からの集中砲火が地に伏した2頭の虎に浴びせられる。男の注意は火力が集中する方に引きつけられるがその時にはクラリッサが3頭目の虎を背後から急襲している。



 だが虎の背後を取るという事はもう一度青い衣の男の視界の中に、それも背を向けた状態で現れなければいけない。



 3頭目の虎を首尾よく倒したクラリッサの背後から回復を終えた4頭目の虎が襲い掛かった。

 クラリッサの小さな頭が虎の巨大な顎に挟み込まれ、細い体は地に叩きつけられる。



 虎の前脚がクラリッサの反撃を許さずにその体を踏みつけ、太い首を大きく左右に振るとクラリッサの首が胴体から千切り取られた。



 神経ではなく信号回路で動くクラリッサの体は頭を失い痙攣する事もなく力を失って横たわる。クラリッサの頭は虎の顎の中で表情も光も失い人形の顔に戻ってしまっている。



「戻れ」

 青い衣の男の声に優越が混じった。



 だがクラリッサの頭を咥える虎は別して、他の3頭の虎は自力で動く事はできない。男は鷹揚に傷ついた虎へと歩み寄った。



 夜闇の中から男と虎とに集中砲火が浴びせられるが男が歩みよる事により、その空間は物理攻撃が無効になる。傷ついた虎の修復が始まった。砕かれ、千切られた顎が復元され口の周りからは淡い焔が漏れだしている。



 太い前脚は溶鉱の様な素材で補強され一層逞しさを増している。

 歩みを進めた男の背後でクラリッサの頭を咥えたままの虎がゆっくりと前脚をあげ、座る様な姿勢で青い衣の男に腹を晒した。修復に集中していた男が一瞬だけ虎の腹に目線を向ける。



 目線を向けた時にはもう、虎の腹にびっしりと取り付いていた数十機の火蜘蛛が炸裂していた。

 猛烈な光が円柱の形をつくり周囲を明るく照らした。



 光の中、虎の口に収まったままのクラリッサが笑顔を見せる。

「こいつにあたしが直結するためのお芝居だって気づかなかったのね、マーヌーケー」

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