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エレメント・アクティビティ  作者: 志島井 水馬
第四章 治安介入部
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15‐ 肉弾戦

 ウォービーストが三度の襲撃を試みてきた。

 狙撃班からの狙撃と強襲ドローン・炸裂蜂の迎撃がこれを退ける。



「狙撃班! 強襲ドローンの残機が少ない。弾幕で足止めをして! 」

 バイクに跨り両手に銃を構えたままのクラリッサが夜闇へと向けて叫んだ。



「音声でそんな情報を流すな! 」

 クラリッサの声を遮る様にエドワードが大声を張り上げた。



 クラリッサの顔に焦りの色が浮かぶが時すでに遅し。

 青い衣の男の耳にもその言葉は届いた様だ。



 男は6頭の虎を一斉に攻撃させずに3頭に突撃を命じ、3頭に回復を施すという波状攻撃の態勢をとっている。



 クラリッサが跨っていた大型バイクから初めて降りた。

 拳銃の構えを解いて両手をだらりとさげる。



 手首の上あたりから小さなアームが伸びてきて手にした拳銃のグリップを掴み前腕部に固定した。銃口は丁度手首の位置まで後退して固定され両手が自由となる。



「しくったわ。いらない情報流出のツケは自分で払うよ」

 微かな排気音がクラリッサの全身から聞こえてきた。



 ゆったりとしたシルエットのジャージの上下が体内からの排気で波打つのが見える。



 それも一瞬、クラリッサの体が不意に消えた。その動きをアイリーが捉える事が出来たのは感覚の向上があったからだ。



 そしてアイリーはリッカがクラリッサの動きに非常に強い興味を持っている事も感じ取った。興味を持った理由は分からない。



 体内に内蔵されたどの様な動力が作用したのか、両足が置かれていた地面を深くえぐってクラリッサは襲い掛かる虎を正面から迎撃した。



 膝と、女性特有の盛り上がりを見せる胸先が地面に届くかと思えるほどの前屈姿勢。うつ伏せのまま滑空したと言ってもいい。土煙がなければ目で軌跡を追う事もできない速度。



 1秒に満たない時間で虎の前足に辿りついたクラリッサは減速せずに片手で虎の前足をつかむ。掴んだポイントが支点となってクラリッサの体は慣性の力で回転した。



 体を小さく丸めながら器用に身をよじって虎の体に添い寝をする様な態勢になる。空いている方の手で後ろから虎の巨大な顎関節に自分の手首を当てる。発砲。



 そのまま指先で虎の口の縁をつかんで引きちぎる。同時に脚を掴んでいた手を離して逆脚、足根関節に向かって発砲。地を蹴って巨体の反対側面に添い寝態勢のまま反転し再び顎関節を破砕。



 虎にとっては致命傷ではない。そもそも虎自体は既に絶命しているはずだ。今の段階で即死が見込める急所、痛みで行動を制限するポイントを狙っても意味はないだろう。



 地に立ち、自身の重量を武器に突進してくる命を持たぬ敵に有効なのは牙と爪を使った攻撃の要所を破砕する事。



顎を砕かれ頬をさかれて咬力を失い関節も砕かれた虎は自力で立ち続ける事が出来ずに前のめりに地に伏した。



 クラリッサが近接戦闘を開始してから虎が1頭倒れ伏すまでの所要時間、0.8秒。



『勝てっこねェ…』

 リッカが呟いた。虎でも勝てない、という意味だと受け取ったアイリーはその呟きを黙殺する。






※途中から読んでくださった方へ※



リッカがクラリッサの肉弾戦に強い興味を示した理由は第三章のエピソードに由来します。ご興味お時間ある方にお読み頂ければ幸いです。

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