表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エレメント・アクティビティ  作者: 志島井 水馬
第一章 終末期再生調査官
7/377

06‐ ハッシュバベル

 ハッシュバベルは旧国際連合を前身とした国際機関であり、かつて8番街と呼ばれた中洲構造の土地全体を使って建てられた本部ビルの呼称でもあり、ビル所在地の行政区の名前でもある。



 旧8番街の全域を使って建築された建物は地上150階までがミニチュア山脈とも砦とも評される一つの巨大な建築物であり、その中に商業観光施設と住宅街区、公共交通機関まで擁している。



 中心部は地上450階建て、高さ1600メートルの円柱の塔が立てられている。建築の困難や維持管理の難しさ、超高層階の利便性や採算性すら度外視してこのビルを建築したのは世界の象徴的存在として後世に遺す為だった。



 塔上部へと直結するハッシュバベル本部エントランスには巨大な石碑が建立され「全知と全能と創造は遂に和合した」と刻まれている。アイリーにとってはこの巨大な石碑も目新しいものではない。



 それでもこの日、ほんの気まぐれからアイリーは石碑に刻まれた文字に注目した。

「全知と全能と創造って何のことだろう?」



 記念撮影をしている観光客の姿が目に止まったからかもしれない。リッカがすぐに反応した。



『全知は高次AI群が運営している第二資源管理局の事だよ』

『じゃあ全能は第三資源管理局?』



 ハッシュバベルという組織自体が第一から第三資源管理局までの3局構成となっているため、一つヒントを提示された後のアイリーの理解は早かった。



『そう。全能はエレメンタリスト達で構成される第三資源管理局。創造は人類で構成されている第一資源管理局。AIが生まれた20世紀頃には自我を持ったハイ・ディメンショナル(高次)AIと人類は必ず敵対しあうって言われてたから共同で一つの国際組織を作れたっていうのはエポックメイキングだったんだよ。その記念碑』



 アイリーはもう一度巨大な石碑へと目をやる。



 …… 第一資源管理局は地球が生み出す天然資源を人類が円滑に利用するための管理と支援を行う組織。 国際紛争の仲裁も主要業務の一つにあたる…… だよな。



 そう思い出す。一曲の歌の続きが詰まる事もなく思い出せるように記憶が想起される。



 第二資源管理局は人間が管理するにはリスクが高い宇宙資源と原子力、それからAI群に委託した方が確実な各種観測と予測の情報資源……



 第三資源管理局はエレメンタリストが生まれ持ってきた能力、エレメント・アクティビティを活用する事で得られるエネルギー資源。総括してアクティビティ資源と分類されるもの……



 炎界のエレメンタリストが協力する事で得られる火力発電、水界のエレメンタリストが氷結晶摩擦の力で生み出す雷力発電、全てのエレメンタリストが持つ二空間の直結能力を利用した太陽光発電の直接送電と物流管理……。 



 その経済効果は世界の経済勢力地図を書き換え、ハッシュバベルへと流入する莫大な資金は組織の発言力を絶対的なものにした……。



『なるほど。ありがとうリッカ。なんだか知恵がついた気分だ』



『もっと感謝しても構わないよ?』



 これらの情報はアイリーがどこかで学んで得た知識ではない。アイリーが疑問に思ったことをナビゲーターAIのリッカが検索、情報を収集整理してアイリーの記憶の中に組み込んでいる。



 もちろん、本人が本当に知りたい情報を把握し、適切な質と量だけを知識に組み込むにはナビゲーターとパートナーである人間との間の相互学習が欠かせない。



 アイリーとリッカの間にはこの学習に多くの手間と時間を割いた結果の深い信頼関係が既に出来上がっている。



 ナビゲーターの意見を聞きたい時には会話という形で問いかける。アイリーがリッカに問いかけた。



『……。 今でも自我を持った高次AIは人類を滅ぼすって予想している人もいるからね。中世20世紀の頃はその危惧はもっと大きかったろうね』

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ