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エレメント・アクティビティ  作者: 志島井 水馬
第四章 治安介入部
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08‐ 攻撃

 6頭の虎が虎口を広げて振動波の様な咆哮をあげた。



 そして不意に口をつぐむ。虎の様子に混乱が見えた。

 まるで…… まるで自分がここにいる目的が思い出せなくなった様な困惑が伝わってくる。



『アイリー? エドワードが全身麻酔をかけて眠っておく事を提案してきたけれど断ったよ。思考通信回線を開いてエドワードチームの動きを正確に知っておいた方がわたし達の経験値につながる。エドワードは協力してくれるって。思考通信回線を開いてもいい?』



 リッカがアイリーに尋ねてきた。

 リッカの提案にアイリーの否やはない。



 瞬間、アイリーの視界に5つの通信窓が開いた。

 エドワードと4人の同じ顔をした捜査官達の顔が浮かぶ。



 アイリーにとって捜査官達は初対面、エドワードにしても今日を含めて2回会った事があるきりの仲だが思考通信の開放に躊躇いはなかった。リッカの情報防御をアイリーは全面的に信頼している。



『ウォービーストを制御しているAIに欺瞞情報を与えて行動目的を喪失させた。 目の前にいるのは頭痛持ちになった只の虎だよ』

 電子戦・情報戦担当のクラリッサが思考通信内で全員に報告する。



 だが猛獣から後付けの対人攻撃スキルを奪ったとしても猛獣である事に変わりはない。6頭の虎が人間の姿を餌と認識してアイリー達に殺到した。



 アイリーから見て一番左側にいた虎の体にレーザーポイントが集まり、光に押される様に虎が横倒しになった。周辺に展開しているブリトニーと狙撃アンドロイド達からの集中砲火の結果だ。



 一番右側にいた虎にも攻撃が加えられる。疾走のために頭を低くし後ろ脚で地を蹴り上げて低く突進してくる。その正面、そして側面に幾つもの爆発が起こった。鮮やかな炎を伴う爆発だ。



『強襲ドローン、炸裂蜂には二千度で燃焼するマグネシウム炸裂弾が搭載されているの。 攻撃対象の体内で高熱の金属片が炸裂して制圧するのよ。 怖い話よねえ? ところで初めましてアイリー・スウィートオウス。 偵察を担当しているアンジェラと言います。 あなたの安全には万全を尽くすから安心してくださいね』



 群れをなして突進してきた虎のうち中央に位置していた虎も同じ瞬間に跳躍姿勢のまま地に倒れ伏す。



『自律型クレイモア地雷、火蜘蛛は炸裂蜂に比べて安価なので安心して大量数を戦闘エリアに展開できます。 対象の足元まで自分で辿りついて任意の方向を指向して炸裂します。 体重300キロ程度の生体なら虎もバターも大した違いはありません』



 通信画面の中でドロシア、と名前が表示されている捜査官がアイリーに解説した。



 やけに丁寧な人たちだな、とアイリーは感じる。部外者は黙ってひっこんでいろという雰囲気ではない。まるで付き合いが始まったばかりの友人に自分の仕事を熱く語る社会人の様だ。



 だが疑問は目の前の危機に比べれば些細に過ぎる事だった。

 間髪を入れずに第二陣の攻撃が残った3頭の虎を襲い、ウォ―ビーストはアイリー達に肉迫する事も叶わずに全滅した。



 低く聞こえてくる、ゆっくりとしたリズムの拍手の音。

 イリュージョンの1シーンの様に、夜の公園の何もない空間から男が一人現れた。


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