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エレメント・アクティビティ  作者: 志島井 水馬
第三章 侵蝕部隊
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15-  クラリッサの狙い

「ブリトニー!あたしとリッカは休戦だよ!ここで決を採ろう。リッカは全部聞いていたから話も早いよ」



 クラリッサがリッカを抱えたままブリトニーへと体の向きを変えた。

 ブリトニーが初めてリッカと正対する。



「初めましてリッカ。ブリトニーと言います。説明は割愛して一つだけ質問させて下さい。リッカさんが使っていたのは香港皇家少林拳ですか?」



 リッカが唇に強く力を込めた。

 答えたくない質問を直球で突きつけられた様だ。



 だが何故そんな質問をしたのか。

 リッカはその意図を想像した。



 不本意そうに顔をしかめてうなずく。

 正直に答えるべき質問だと思ったからだ。



 ブリトニーが頷いた。

「それでは決を採ります。リッカとアイリーのコンビに当面の危険性はないと判断しリッカを解体するためにアイリーを拘束する必要はないと思う者は挙手して下さい」



 ブリトニーを始め4人全員が挙手した。

「…アンジェラは反対すると思っていたけれど?」



「結果が分かっている多数決に一人だけ反対して行動責任まで追及されろっていうの?ゴメンだわ」



 そういうところが意見がコロコロ変わると言われる所以なのだが本人に自覚はない。



「アイリーには本局の監視がついていて現在自由に行動している。なら私達も友好関係を築いた方が建設的だわ。でも教えてもらうわよ。何故あなた達はリッカを危険と判断しなかったの?」

 最初にクラリッサが答えた。



「他者との格闘経験なんてあるはずないリッカがどうしてあたしの攻撃を受けきる事ができるのか?疑問に思ったんだよ」

 それは他の3人も感じていた疑問だ。



「リッカの動きは香港皇家少林拳がベースになっていた。かわいいだろ?」

「かわいい?ブリトニーも同じことを言っていたわ。何なのその格闘術?」



「現実には存在しない、ゲームのキャラクター1人だけが使っている拳法だよ。多分アイリーがこのキャラをやり込んでいるんだと思う。そしてリッカはそれ以外に接近戦を見たことがない。そうだろ?」



 指摘は的を射ていたのだろう。リッカが羞恥と怒りが混ざった顔になる。

 ブリトニーが解説を引き継いだ。



「アイリーが仮に反社会的思想を持っているとしたら必ず他者への加虐行為に強い興味を持ち仮想体験を重ねます。それはリッカにとっても転用可能な格闘技術となります」



 例えば武器を持つ。

 例えば他の3人を人質にとる。



 だがリッカは文字通りステージに上がったキャラクターの様に律儀なまでに肉弾戦に固執した。



「アイリーは娯楽としてゲームを楽しむ以上の攻撃欲求をそもそも持ち合わせていない男でした。当然リッカも格闘に限定しては攻撃スキルを全く持ち合わせていません。この事自体が彼の反社会的性格を否定する証拠になっていると推察できます」



 アンジェラが呆れた表情を見せながら問いかける。

「格闘経験のないリッカがクラリッサの攻撃に対応できた理由はわかったわ。クラリッサはどうやってリッカの攻撃がゲームの中の動作と同じと特定できたの?」



 クラリッサが破顔した。

「最初は色々試したさ。で、リッカが一番的確に反応できたのが実践的な特殊警棒術じゃなく古代インドの長剣術だった。リッカが見ていたゲームで採用されている剣術だった。あたしの攻撃、途中からメチャクチャ避けやすくなったろリッカ?」



 リッカの目に驚きの色が浮かぶ。

 クラリッサは声もたてずに笑っている。



 高速戦の度合いが増してもリッカが対応しきれたのはリッカにとってより馴染み深いパターンを踏襲していたからだった。



 リッカはどんな表情を出せばいいのか分からない風で眉だけをよせて黙っている。



「クラリッサとブリトニーの見解は受け取ったわ。でも私にはまだ分からない。何故ガントレットで攻撃しなかったの?」

 アンジェラの問いに答えたのはドロシアだった。

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