表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エレメント・アクティビティ  作者: 志島井 水馬
第十章 最終決戦
184/377

14‐ ハリストスの真実

 憎悪のみで人類の虐殺に走るエレメンタリスト――― アンチクライスト。



 ニナは現代に現れたアンチクライストだという前提でアイリー達はニナを追い続けてきた。その過程でアイリーの心にはニナ本人に対してではない、状況に対しての疑問が生まれていた。



 アンチクライストが実在する脅威なら、人類が次世代の出現に何の備えもとらないはずがない。ハリストスと名指しされた個人に全ての判断を委ねるとは到底考えられない。



 ハリストスとは個人の呼び名であると同時に、アンチクライストへの対抗勢力そのものも指す呼び名なのではないか? アイリーはそう考えた。そしてアイリーは気づく。



 実際に自分がアンチクライストだと名乗るエレメンタリストは、まだ現れていない。ハリストスと指名されたアイリー自身には個人が備えられる能力しか備わっていない。



 作戦の発動条件そのものがまだ揃っていないのではないか? アイリーの疑問はニナ本人に対しても向けられた。 



 アイリーの前に姿を現し、虐殺を予告し、現場に留まってアイリーの到着を待ち、直接対決を繰り返しながら次の虐殺をさらに予告する。その行動だけでもニナは“憎悪のみで全人類への無尽の虐殺に走る”というアンチクライストの前提を覆している。



 目の前にいるエレメンタリスト、ニナとは何者だ?



 アイリーの疑問に大きなヒントをもたらしたのはリッカだった。



『神話の中でハリストスに託された3つの力は…… 人々の代表という権威と、神とのつながりを証だてる力と、死を受け入れるという運命。 ……検証してアイリー。アイリーには今、2つの力が備わっている』



 リッカの言葉が何を指すのか。アイリーは自分の現状を再度確かめた。



『アイリーが一方的に宣言を出した大規模災害対策チームの存在をハッシュバベルの全局が追認した。ハリストス部隊の中核か原型として認められたって事だと思う。ハッシュバベルの支援を得たっていうことは人々の代表という権威をアイリーが手に入れたのと同じになる』



 リッカの言葉は続く。



『死を迎えた人々の遺志を知るナビゲーター達が帰る場所“リビングセメタリーズ”の番人、“知りたがり”はアイリーの求めに応じてバランシアゼ夫妻のナビゲーターへのインタビューを許可した…… これは過去200年に眠りについた全ての死者の声を自由に聞く能力をアイリーが得たという事だよ。 死を受け入れるというのは生命活動の終焉を覚悟するという意味ではなかった……。 遺志を託すに値すると死者達が認める存在になる、という意味だった……』



 リッカの言葉にアイリーの連想が呼応する。ニナが最終的に目指していた能力とは何か? 



 生者から認められ、死者から認められたアイリーが、エレメンタリストからも認められたと証だてられた時…… アイリーはハリストスとしての力を全て備えた事になる。



 必要に応じてアイリーと同化し、アイリーにエレメンタリストの力を託す事を可能とする特殊能力をニナは求めていたのではなかったか。



『……まだ出現していないアンチクライストに対抗する勢力を育てるために仕組まれた事件なのか?』



 アイリーの問いは苦渋に塗れていた。



『出現の予兆がない状態でこんな虐殺を伴う作戦は実行されない。アンチクライストが現代に出現するのは間違いない。でも、それはニナではなかった……って事になるよね、アイリー』



『ならば…… やはり虐殺は俺が原因という事になる』



『ならない。決めたのはハッシュバベル、実行したのはニナ。アイリー? 今は、そこで足踏みできる状況じゃないよ?』



『ニナは俺たちの、いや……人類の側に立つエレメンタリストだった』



『シャオホンがわたし達を攻撃してきた理由は分からないけれどニナに味方した理由は説明がつくよね?』





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ