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エレメント・アクティビティ  作者: 志島井 水馬
第八章 激突
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07‐ 水界のエレメント・アクティビティ


 アイリーの鼻と口が背後からの手でふさがれた。その手の中には小さなマスクがある。

アイリーは急速に酸素が補給された事を実感した。



『なに言ってんだ? あのブス? あたしに対毒ガステロ救出の装備がない訳ないだろ? な? アイリー。 あたしが護衛について正解だろう?』



 クラリッサの声がアイリーの意識に届く。次にアイリーの耳にクラリッサの肉声が聞こえた。



「うっせえんだよ!! ブース!!」



 アイリー以外にはその姿を認識できないクラリッサの声にニナが思わず周囲を見回す。ミサキに隙は生まれない。こればかりは実戦経験の差だ。



 ニナの周辺の空間に光を漏らす穴が6つ開く。そこから迸ったのは雷撃。まさに落雷そのものだった。轟音が周囲を揺らす。



「別空間で氷の結晶を高速で摩擦する。溜りまくったマイナスの電荷の塊をあんたの近くに出現させる。水界のエレメンタリストを相手にする時には雷撃対策が不可欠になるが……。 経験不足が仇になったな、襲撃者」



 2空間を完全に繋げてしまえば落雷は別空間へと放電されてニナがダメージを受ける事はない。だが実戦に備えてニナは光や音などの波動は置き換えずに透過させてしまっていた。予備知識があったとしても体感的に会得した能力だ。電荷のみをどうこう、という例外は作れなかっただろう。



 過去にアンジェラが市警の警察官を一撃で失神させた電流は70万ボルトを2ミリアンペア。これは怪我をさせない為の設定だがそれでも人は激痛で失神する。



 ニナの周囲に展開した雷撃の放出孔は6ヵ所。間断なく浴びせられる雷撃は平均値を取ったとしても2億ボルト40万アンペア、一瞬であっても身体を貫く温度は30000度を超える。



 ニナの体の構造的に弱い部分、両目、両耳、口、関節などから炎が噴き上がる。回復が追い付かない。皮膚が炭化して零れ落ち、筋肉が収縮して骨から剥がれてゆく。剥がれた端から炭化してゆく。それでも絶命しない。



「雷撃の放出孔はこのまま固定させてもらう」



 ミサキの宣言もニナの耳には入らないだろう。連続する爆発音と閃光でアイリーさえ状況が分からないでいる。



『ニナの周辺の空間が閉じられ始めている。爆音と閃光は一段落すると思うぜ?アイリー。周辺の空気の組成も元に戻り始めている』



 ……殺す事はできなくともニナの動きを完全に封じる事が出来れば虐殺はそこで阻止される。そしてニナは自分自身の回復も出来ないまま雷撃に文字通り釘付けになっている。



終わったのか。いや、ここから逆転の可能性はない。アイリーをしてそう確信させる状況だった。



 ミサキとアイリーが並んで立つ周辺は破壊の限りが尽くされていた。背後の建物は弾痕でボロボロになっている。地面は土と混ざり合った砂利で覆われている様に見える。舗装された所がこれほど微細に破壊されつくしたのだ。



 勝利の確信へはまだ遠い。だが道筋をつける事は出来た。



 そう考えていたミサキとアイリーを囲む様に地面が隆起したのはこの時だ。地面に埋まっていた何かが目を覚ました様に土を押しのけながら姿を現す。



「自分の体を地下茎と変えて地中を進んで自分自身を再生させる。株分けする様に複数を再生させる……。 こんな能力があるなんて想像もしなかったわ……。 死の体験もしてみるものね」



 違う唇から全く同じタイミングで同じ言葉が出てくる。



 アイリー達の周囲に現れたのは全裸となった7人のニナだった。

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