15- 囮
『通常火力が好きなエレメンタリストだなあ。そう思わねえ?』
誰に尋ねるでもなくクラリッサが呟く。アイリーも強い疑念を抱いた。
『専門職を雇って通常火力を用意して無駄な経費をダダ漏らしする理由はなに?』
『病院を襲撃しているエレメンタリストは物理攻撃手段を持っていない。感染しか能力がない?』
リッカの疑問にクラリッサが答えるがアイリーは納得しない。
『物理攻撃を選択する理由がない。感染者で周囲を囲んでしまえばこちらからは手出しが出来なくなる……。 だが向こうに人間の加勢があるのは朗報だと思う。感染の有無は別としても発症自体は無差別で強制的なものではなく選択されたものだという可能性が出てくる』
『…… 確かに金払って集めといて発症させてたら無駄遣いだよなあ』
『何しに来たんだろうね? あれね?』
クラリッサとリッカの疑問は眼前に展開した集団の方から勝手に答えてきた。
『連邦捜査局に不当に拘束されている我らが同胞・大アジャーニの解放を要求する!!』
『誰それ?』
『知るかよ』
クラリッサの返答にリッカが含み笑いを漏らす。
会話のテンポがリッカの好みなのだろう、気が合うと感じているのかも知れない。
『あ、わたしの方で分かったよクラリッサ。自律型野戦重砲の所有者名がカーリム・アジャーニ。リビアで軍事会社を経営。公然の秘密として“北アフリカの繁栄評議会”っていう武装集団のスポンサーしている。顔も割れた。青い衣のエレメンタリストだよ』
クラリッサが上機嫌に笑い声をたてた。
『青い衣のエレメンタリストと病院襲撃の犯人の関係が繋がった訳だ。アンジェラが最初に遭遇した事件の犯人も断定できるな。エレメンタリスト2人が手を組んでいた』
『クラリッサ? 青い衣のエレメンタリストは今は何してるの?』
『昨日の今日の話だぜ? まだ首だけのままで意識失ってるよ。取り調べも進んでいない』
『…気の毒にな』
会話の最後にアイリーが漏らした言葉はどういう意味か。
『病院を襲撃しているエレメンタリストは青い衣の男を直接奪還しようとはしていない。手下を現場に呼び出して自分達で対処させようとしている』
『囮だな。こちらの出方か、戦力か、何にしろあたしらを相手にした釣り餌に使われてる訳だな? ……。 蹴散らし要因として用意されてるんなら…… 蹴散らすしかねえよなあ?』
クラリッサの声に呼応する様にクラリッサとスタリオンの両側、何もない空間から二人の人影が現れた。
『強襲作戦開始するよ? アンジェラ。ブリトニー』




