・下宿屋
自室がある民家に戻った。
自室は民家の二階にあった。
この民家の二階の部屋が、これから自分が生活していく拠点になる。
ここは下宿先だった。
村の本当の宿屋は別にある。
東と南の地から人が集まり、
村の北にそびえ立つ大連峰を回って迂回する『西の入り口』へ向かう為の、
北の唯一の拠点。
それがこの雪溶けの村『モフリ』だった。
村から出て、西にある入り口は、
極北にある最果ての地、黒圏への入り口。
黒圏とは、氷の大地と極光と星の光しかない闇の世界。
そこには『魔界』に通じる道の一つがあるといわれている。
それが本当かどうかは分からない。
ただ、そんな『未開の地』を目指して、
遠路遙々、北を除いた東西南方から少なくない人が、
最後の人地でもある、
この村で足を休め、
また英気を養って出発しては、また無事に帰ってくることを繰り返していた……。
耳をすますと……、
遠くにある宿屋と酒場からは、
これから旅立ち、
または帰ってきた人々の賑わいがここまで聞こえてくる……。
「賑やかだね。向こうは……」
自分の料理の皿を置いて、
食卓の正面に座った少女が言う。
「で……防具屋と道具屋と武器屋の女には会ったんだって?」
防具屋の娘には会ったことを伝える。
「いい子だったでしょ?みんな」
だから一人にしか会っていません。
空にした皿に匙を置いた。
「今日の料理は私も手伝ったんだ」
「旨かったです。ごちそうさまでした」
流し台にいるオカミさんに皿を返しに行く。
「お皿、持ってきてくれたのね。そこに置いてくれればいいわ。
いま、お父さんがお風呂、沸てといているからね?
お腹が落ち着いたら、すぐに入りなさい」
「え?やだ、私が先に入る」
「じゃあ、一緒に入っちゃいなさい」
食べた物が飛び出た。
「ま、なんて汚い。
それとも寝床まで一緒に入り込んじゃうかい?
あんまり煩くしないでよ?
二階の床は最近、弱くてね。
音が鳴る鳴る法隆寺♡
はやく孫の顔がみれるといいわね~♪」
……あなたは、まだ、
そちらの娘さんを13年ほど前に産んでお母さんになったばかりの人のはずですが?
もうお孫さんですか?
「家族は賑やかな方がいいでしょ?
もちろん道具屋や防具屋や武器屋とも親戚になっても構わないわよ。
ここでは皆家族なんだもの。
ただし!ウチの旦那の浮気だけは許さないけどねッ?」
じゃあ、ボクは浮気してもいいんですか?
「それはウチの娘に聞いてあげて?」
見ると少女もこっちを見ている。
重ねて言いますが、まだ中学一年生の同じ男子と女子です。
「みんなも呼ぼっか?」
男一人と女子複数によるお泊まり大会ッ!
鼻血が伝った。
「特別なんだからね?君って……」
甘い声で囁いても、所詮は中学一年生の女子。
同い年の少年にしか、その声音の効き目はありはしなかった。
少年は妄想する。
妄想したら、
妄想したで、
この女の子には見られたくない、
見せたくもない、知られたくないことをしたくなった。
それは男子特有の『少年の性』。
だから、今日の魅惑な提案は丁寧にお断りをした。
女の子と満足いくまで実際に想像してしまったことを堪能すればいいだけなのに。
少年は、なぜか独りになる時間を選んだのだった。
その理由は、少年が『少年だった』からッ!
少女の皆さん、少年とはこういう意味不明な生き物なのです。
もし意中の彼でもいるのなら、
その彼がそっけないのは……、
きっとあなたは『彼の孤独』と戦っている……。
(※お好きな次回予告BGMを鑑賞しながらお読み下さい)
【次回予告】
一応、言い訳を申しておきますと『少年の性』とは『男の性』ではございません。
では『少年の性』とは一体何かと申しますと、
それを答えることは、これからも完全にございません。
それはご自分でお考え下さいッ!☆
きっとそれが『少年の性』でございます!!♡
次回! どうしても性的な話になってしまう、かんたんファンタジー 第八話。
『名前を入力してください』
ついに読者が期待していた冒険はここから始まる……。
……のかもしれない。(デン♪デンデデデン♪)
来週もまた読んでねー!!♡