・冒剣の章 ‐終‐
いつもの村の斜面を下りて、
いつもの凍峰の麓に出る。
装備は万全だ。
布のマント、布の服、革の鞄、革の靴、鉄の剣。
持ってるもの全てが全部、
村で買い揃えることのできる初期の装備。
この初期装備を少年は凄く気に入っている。
少年の能力は既に終盤レベルだったから、装備を初期装備にすることで、
出没モンスターのレベルに合わせて攻略を楽しむのだ。
そんな「舐めプ」が少年の好む趣味だった。(超悪趣味ッ!)
白い息を吐く。
細く冷たい息を吐いて横筋に伸ばして消えていく。
薄い衣服のまま、暖かくして冬の山を登山する魔法の幸せ。
それが、ここでは出来るのだ。
自然を軽く考えるのも……、
自然を蔑んで考えるのも……、
自然を厳しく考えるのも……、
自然を偉大に考えるのも……、
自然を、とても悲しく考えるのも……。
それは人次第なのだから……。
「ファア、ファーアッ!」
黒い竜が、声を上げた。
高い高い、
切り立った凍える霊峰ヒグナスの回りをグルグルと旋回して声を上げる。
「……黒い、響キ!
そこはお前の遊び場じゃないぞっ」
「ファア、ファーアっ!」
分かっている竜は、やっぱりどうしても分かっていない。
黒龍にとっては、主人と自由に散歩できる事だけが最大の至福だった。
「本当にわかってんのか?
あまり暴れるなよっ。
後始末するの、大変なんだからなッ」
不安になった少年が剣を落ちないように鞘を構えて走りだした。
立ち込める暗い雲の底を、大地から貫いている凍峰をめざす。
いつもの日常が始まった。
村の期待に応え、
村の期待を裏切ってしまう事もある日常が。
「……!
ファア、ファーアッ!」
と思ったら、
黒い竜のヒビキが急降下して凍峰の裏側へ降りていくと影に隠れてしまった。
すぐにドスン、ドガガガガッと大物モンスター同士で争っている振動が、
地面伝いに伝わってくる。
「あのバカぁッ」
慌てて少年アズル・アズアールが足を速めて竜が消えた方角へ駆け去って行く
走っていく少年の姿も山の登山道に消えて行ったところで、
凍える暗い曇り空も次第に晴れだした。
陽の光で物語は途切れようとしている。
晴れ間から差す光が、
これからも続いていく「冒剣の世界」を照らすように……。
終
(※お好きな新番組予告BGMを鑑賞しながらお読み下さい)
【新連載予告】
やっとファンタジーが終わったと思ったら次回の新連載予定作品では、
なんとおっさんが主人公ッ?!
長い間、働けなかっただけなのに「ひきこもり」と言われ続けてきた、
怒りは溜まり、炎に燃える成人男性は無精ヒゲの氷河期世代ッ!
なぁにィっ?今さら氷河期世代の活用だと?
おいおい、今の氷河期世代がいったい、いま何歳になっていると思っている?
うまく仕事に就けたとして?あと何年働けると思っているんだ?今の政府はッ?
次回ッ!新連載ッ!
『右のh……ピーーーーーーーー(放送自粛音)ーーーーーーーーーーッ!!
……、
番組の途中ですが、次回新連載作は投稿サイトさまを変更してお送りします。
(ゥンがー♪フっふッ♪)




