・剣で遊ぶとツキが落ちるぞ
黄金の騎士が振り下ろした盾を、
青いマントの少年の少年は視線の力だけで弾き返したッ!
「なにっッ?」
驚く黄金騎士が、
視線だけで起こった透明な斬撃で盾ごと後ろに弾かれると宙返りして着地する。
見ると、
少年は遠く離れた塔に視線を戻したまま「居合い」の構えで集中力を高めていた。
「抜刀術だとっ?
そんな真っ直ぐな刀身の剣でかッ?」
驚く黄金騎士は叫ぶが、問題はそれだけではない。
「おいアズル。
ここからあの塔までは10キロ以上離れているぞっ。
届くのか……?」
「暗黒剣……?
そうであったとしても、ただの剣撃で届く距離ではありません…。
私たち神族が磨き上げた「神聖剣」でも、その有効射程は300メートルが関の山……。
一体なにをなさる気で……?」
敵の黄金の騎士だけではなく、
仲間の魔王少女、聖女少女や黒竜ヒビキ。
それ以外にも、
やはり敵であるはずの怪獣機械たちまでもが、
少年が納刀している構えを見て沈黙している。
「……駆けろっ!刀徹ッッッッッ!!!!!!!!!!」
少年が、剣を引き抜いて振りッ切ったッッッッ!!!!!
そしてまた即座にチンと鉄の剣を納刀するッッぅッッッ!!!
少年の目にも止まらない一撃の斬砲撃が空を突き抜けた。
それは光の速さ。稲妻の光だった。
稲妻の光が、
一直線に離れた巨大な塔の、付け根にある丸いドームのような屋根とも側壁ともとれない施設の装甲壁を掠めて突き抜けるッッ!!
――。
「……?」
何も、起きなかった……?
油断した瞬間、
爆裂の衝撃と共にッッッッ!!!!!!
ドーム状の装甲壁を掠めて火走りが一直線に火奔った。
爆音と振動、そして震撼ッッ!!!!
全てを震わす力と振動が、全ての空間を激震させるッッッッ!!!!!
亀裂が入った。
巨大な塔バビラーガの塔の付け根の部分のドーム状の丸い屋根に、
斬撃による一線の亀裂が斜めに入ったのだッッ!!!!!
少年が、
左の腰から右上に抜き放った、鉄の剣の一撃の軌道によってッッ!!!
塔のドーム状の屋根に左上から右下にかけて斬撃の亀裂が入ったのだったッッッ!!!!
(あれ?なんか斬撃の向きとドームの斬られたキズの向きがヘンじゃね?)
「もう全部……、ぼく一人でいいんじゃないかな?」
少年は呆れながら、そう言う。
全てを達観した目でそう言い放った。
これを読んでいる読者の諸君……。
いいかな?
剣で遊ぶな。ツキが落ちるぞ?
剣は玩具ではない。
もちろん銃もオモチャではないッ!
剣や銃は武器なのだ。
武器で遊ぶとツキが落ちるだろう?
だから武器で遊ぶことはするなッッ!
武器で遊ぶときは……「取り返しのつかない」ことをする時だけにしておけ……?
それで、
遊んだヤツにとっても取り返しのつかない事が「簡単」に起きる……。
「……で?
開いたけど……?」
剣で建物の壁を斬った青いマントの少年が納刀したまま言う。
少年が、
いま使った技はこの少年だけが持つ固有の剣技
「抜刀剣」。
それは「全てを斬る」力。
物も、エネルギーも、現象さえも……ッ!
そう、例えば「死」という現象ですら……、
この少年は「斬る」ことが出来るのだッッッ!!!!
刀に徹させること。
刀徹。
少年は、その手に持ったもの全てを「刀」にさせるッッ!!!!
それが、この少年だけがもつ唯一の力ッッッッ!!!!!
その力を少年は、自ら「刀徹パターン」と呼んで名付けていた。
自分が手にした武器を全て「刀徹」と銘んで……。
ついにここでッ!
聖剣聖は、
青剣聖へとクラスチェンジしたッッッッ!!
デレレレレレレレレレレレレレレレレレレレレレレレッ♪
デレ―――――――――――――――――――――――――――――ーンッ!!!♪
「ま、待ってろよッ!!」
「いま行きますッッ!」
少年が斬って開けた出口に向かって、
魔王と聖女の少女二人は真っ直ぐ空中に跳び上がると、
何も無い空中を兎のように跳躍しながら、
友が待つ、塔の付け根にあるドーム状の部分に飛んでいった。
後半「手のひらに空を……」に、つづく(今日9時更新)




