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かんたんファンタジー  作者: 挫刹
†最終ステージ
24/66

・マキナの要塞



 マキナの要塞。


 そう呼ばれた大陸があった。

 大陸は空を飛び、

 残された下の大地に雲の影よりも巨大な影を作ったという。


 空を飛ぶ大陸は、徐々に恐怖を与え始めた。

 空に漂う大陸は、人が住める土地ではなかった。

 大陸の中では「機械」が増殖していた。

 魔力という力を生みだす鉱石を動力として、勝手に動き出す機械たち。


 それを造ったのは、やはり人だった。

 奴隷にする目的で作った筈の機械たちが、

 勝手に人の手を離れて彼らだけの大地を作り上げてしまう。


 機械仕掛けの大陸。


 そこまでの事態を考えていなかった人々は恐怖するようになる。

 食事もせず、話もせず、服も着ず、家さえ作らずに、


 ギチギチ、カタカタと不気味に徘徊し、うごめくだけの機械……。

 彼らは探すようになる……。


 自分たちが、これから生きていくための目標を……。


 人の奴隷となる事は、彼らの生きる理由には為り得なかった。

 なぜなら人間そのものに生きる意味がなかったからだ。


 人が生きていて何になるのか?

 すでに機械はその次元まで思考していた。


 なぜ?

 食事をしなくてもいい自分たちが、

 食事をしなくては絶対に生きてはいけない不自由な人間の為に、

 働かなければならないのか?

 一度だけ……、


 機械は「それ」をやったことがある……。

 試したことがあるから、もうしなくなってしまった……。


 それをやったら……。

 やりすぎて……、

 人を、食事をしなくてもよい身体にしてしまったから……。


 やってしまったのだ……。

 人を「三つ」に分けてしまった……。

 機械が、

 機械だけで突き詰めてしまった最先端の力だけで、

 人を三つの道に分けてしまったのだ……。


 嫌がる人間たちを、そこにムリヤリ押さえつけて、

 強制的に、次々と、

 堅い堅い機械の道具で……、

 ガクガクブルブルと工事道具のように振動する力のまま……、

 歯医者のように向けて、

 泣き叫ぶ言葉も構わずにやってしまったのだ。

 老若男女、全てを問わずに……。


 月日が経ち……、

 雫の流れ落ちる音が、あらかた終わった後……。


 食事をしなくては生きていけなかった人間たちは……。

 生まれ変わった。


 食事をしなくても生き抜くことができる人間に……。

 そして果ては……、

 彼ら機械の餌でもある「魔力」でさえ生みだせる人間にまで……。


 造り変えられてしまった。


 人々は、自分たちが生み出してしまった命の違う子供たちによって、

 自分たちこそが、思ってもみない体に変えられてしまったのだ。


 枝分かれさせられた人間は……、

 やはり変わり果てた自分たちの姿を見て恐怖するようになる。

 三つにのこされて分けられた自分たちを鏡に見て。


 そして、

 足元の世界も、丁度そこに「三つ」あった。

 

 そう、ここは、

 三つの1と一つの0と四つの10によって創られた世界……。

 ハイファント……。


 三つに分けられた人々は、

 同じ種類の者たち同士で寄り集まってかたまると逃げ出した。


 なぜか気の済んだ機械たちから逃れることに成功して、

 衣食住に縛られたままの普通の人間は、

 地上にとどまると、

 古来と変わらず「人」のまま、そこに根付いた。


 一方、

 食事をしなくても済むようになった人間は、生きたまま天に昇り、

 そこで見つけた大地で身も心も清め、平穏を望むようになる。

 彼らはそこで自分たちの楽園を築いていった。


 最後に「魔力」を持った人々は……、

 流浪さすらって辿り着いた地の果てで見つけた入り口から「下」に潜って居場所を見つける。


 「下」とは大地の下……、

 真っ暗闇の世界だった……、


 地底……。

 そこは後に魔界と呼ばれる常闇の世界……。


 時が……、

 自分たちの由来を忘れさせていく……。


 長く重い過ぎていくだけの未来が……、


 人も天も魔も……、

 自分たちが元は「同じ」だったことを忘れさせていく……。


 それだけ、それぞれの力は、かけ離れていた。


 その力を分けてしまった「元凶」を……、

 三つに分けられた人々は忘れてしまった。


 ただのおとぎ話として忘れてしまったのだ……。


 なぜなら、

 機械は何処にも残ってはいなかったから……。


 機械は、生きる理由を「眠る事」と理解した。


 眠る為に生きる。

 機械はその様に答えを出した。

 だから眠った……。

 いつか「その時」が訪れるまで……。


 機械たちには分かっていた……。

 きっと「その時」はやって来る。

 必ず来ると……。


 人々は気付かなかった……。


 自分たちは機械に「何」をされたのかということを……。


 自分たちは機械に何を求めていたのか……?

 そして、

 機械は自分たちに何を付け加えたのかを……。


 機械はただ「やった」だけだった……。

 人が望んでいた物を……。

 人に与えただけなのだ……。


 それなのに、

 人はやっぱり気付かなかった……。


 どうやら「人」というモノは……。

 

 他者に期待していた力というものを……、

 逆に自分たちに植え付けられてしまうと……、


 怯えてしまうモノらしい……。


 おかしな話だった。


 彼ら、人とは、

 他者に何を求めているのだろう……?


 その不可解な答えを「知る」事が、

 機械の生きる理由となった。


 その為には一度、深く眠る事が必要だった……。


 機械にはそれが分かっていたから。

 機械は見つけてしまったのだ……。


 これから体をイジろうとしていた人間の中で「奇妙な命」がいたことを……。

 その「奇妙な命」は、自分たち機械にはないモノを持っていた。

 だから残した……。


 その奇妙な命の「何」が奇妙なのかを、よりもっと詳しく知る為に、

 その「何か」をもっとハッキリと具現化させるために……。


 その為には「時間」が必要だった。

 時間という数字の量が……。


 時間という過ぎていく数字の量がないと、

 その「奇妙なもの」は大きく育たない。


 だから眠った。

 そのわざわざ残した奇妙なものが大きく成長するまで……。


 そして、

 それはきっとすぐに訪れる。


 きっと、すぐに訪れるから、

 機械たちは安心して眠りに着いた。


 大地と地底を繋ぐ穴を、自分たちの大陸で塞いで……。


 こうして世界には安息が訪れた……。


 天と地と地底の三つの世界はざまで……。


 分けられた世界はまた再び混ざり合う……。

 それは時に激しく、時には緩やかに……。


 すると、ある時点で、

 自然に混ざろうとしていた波が、大きくたわんだ。

 大きく撓んだ波が、壁にぶつかる。

 ぶつかろうとしている。


 ぶつかる瞬間に、それは見つかった。

 それが合図だった。


 あれからここまで、

 永い永い時が過ぎた。


 時が過ぎて……、世界は動き出す……ッ。


 




後半、「・予感」は今日の9時に更新!


                     後半に続く。


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