・受け取りもの
帰るべき、
自分の村が見えてきた。
竜の背から飛び降りて、村の広場に着地する。
雪解けの水分でベシャビシャに濡れている、
泥るんだ茶色い地面に着地した時に感じる、
不愉快な感触が懐かしい。
雪のように冷たい空気と春のように暖かい陽射しを受けて、
茶色のマントを翻しながら少年はゆっくりスラリと立ち上がった。
砂漠、草原、岩場、火山。
今日は、ここまで回ってきたが、
次回は、もっと他の場所まで見て回らなければならないだろう。
それだけ、少年の師範は厳しいのだった。
「すみませーん、ごめんくださーい」
広場から西にある防具屋、武器屋、道具屋と並んでいるそれぞれの入り口を見て、
まず真っ先に道具屋の扉をくぐる。
「はーい」
トタトタと店の奥から前掛けに手を包んで出てきたのは道具屋の娘だった。
名前はまだ考えていない(作者が)
「ただいまぁ、えっと、頼まれてたものなんだけど……」
ゴソゴソと腰ベルトに備え付けられた小さい革鞄の中を探る。
「……?……、わたし何も頼んでないけど……?」
道具屋の少女がおとなしそうな顔で首を傾げると、
少年も「シーっ」と口に人差し指を当てて、慌てて周囲を伺い見る。
「防具屋の子に頼まれてた物だよ。
きみから渡しておいてくれないかな。
ぼく、あの子に会うのイヤなんだよ。
ほら、なんていうのかなぁ、
あの子に会うといつも服なんて来てても全然無意味のような感じがしてさぁ……」
「……な、なら、ここで何か買ってくれたら、渡してあげてもいいけど……」
「ほんと? じゃあ、なに買おっかな、なんかお値打ち品ってある?」
「お、お値打ち品っていうか……ほ、掘り出し物なら……」
「掘り出し物? じゃあ、それちょっと見せて?」
顔を俯けた少女が、
自分の服をめいいっぱいに両端に引っ張って、自分の姿を少年に精一杯に見せた。
「……いや、あの、掘り出し物……」
「……っだからっ!……んっ!」
少女がやっぱり顔を俯けて、少年に自分の姿を見せている。
「……すみません。
それはものすごく魅力的な掘り出し物なんですけど、
その掘り出し物は、他の掘り出し物と一緒の時に『買い』ます。
他の掘り出し物と一緒に、『買い』ますっ。お金を払ってッ!
わかる?
これって最低でしょ?
だから、そのもうちょっとそのものすんごく大切で大事な掘り出し物を出す時は考えた方がいいと思うんだ」
「他の掘り出し物と?」
「そう!他の掘り出し物とッ!」
合点して少年が言うと、少女はあらぬ方角を見る。
大人しそうな少女が見たのは店の窓の外だった。
店の窓の向こう、
道具屋から離れた村の東側の場所で、
なにやらトンカンと騒がしく建物を建てている音が聴こえてくる。
「……何やってるの?あれ……」
「なんかね?あの辺りの奥の方に、新しいお家ができるみたいなの。
でも、それがどうやら新しいお店でもあるみたいで……」
少女が遠くを見ている。
「そのお家に、
わたしぐらいの女の子も時々、様子を見に来てるみたいで……。
その子ね?
私たちも、みんな知らない子なの……これって、どう思う?」
少年は……黙った。
「……あ、そうそう、きみ宛てにお荷物が届いてたのっ。
ちょっとここで待っててッ」
思い出して少女はトタトタと店の奥に消えていき、
またトタトタと戻ってきた手には一冊の分厚い本があった。
少女はその本を少年に渡す。
渡された本の題名は……、
『第三惑星地球史 日本版 7月号』
(※お好きな次回予告BGMを鑑賞しながらお読み下さい)
【次回予告】
本当に書きたかった話の内容はこんな展開じゃなかった。
そんな事を作者がどれだけ悔やんでも、物語は勝手に進んでいく。
少年に話をさせるのはいい。その相手に少女を登場させるのもいい。
しかし!できれば「性的な話」だけは禁じ手にしたいッ!のが最近の本音!
……。
……戦争の話も、食事の話も、
コイバナまで禁じ手にしてしまったら人間ていったい何が残るのよ?(哲学)
次回! そうは思っても展開が読めてきた かんたんファンタジー 第22話。
『太陽系第三惑星地球史 7月号!』
来週は、活動報告でもこれからの展開に関連した重大発表を予定していますので、
そちらも乞うご期待くださいッ!(夕方ごろになるかも?)
(デン♪デンデデデン♪)




