・ドラゴンが仲間になった!
農園の右側の崖にある採掘場所の二階の足場の一画でツルハシを振るう。
カッケコン☆。
鉱電石を手に入れた。
カッケコン☆。
鉱雷石を手に入れた。
カッケコン☆。
鉱電石を手に入れた。
カッケコン☆。
鉱雷石を手に入れた。
「……なあ、お前ってさ?
鉱電石と鉱雷石の違いって、わかってんの?」
高く組んだ足場の端に腰を下ろして、
両足をブラブラさせながら景色を眺めているパンダが話しかけてくる。
……。
話しかけてきたパンダの声を無視してツルハシを振るった
カッケコン☆。
鉱雷石を手に入れた。
「……偏る時は偏るんだよなぁ。
普通だったら水や火や風属性の鉱石も出るのにな。
でも、本当は一つに偏ってた方がいいんだぜ?その方が大量に掘れるからな?
水と火の石が一緒にあったら相殺しちまうだろ?」
せせら笑っているパンダを無視して、がむしゃらにツルハシを振るった。
カッケコン☆。
鉱電石を手に入れた。
「……なんだよ。
まだ、この前の失敗を気にしてんのかよ?
どんな大物モンスターに出くわしたか知らねーけどさ?
そんなに気を落とすんなよ?
ちゃんと生きて帰ってきたんだから、よかったじゃねえか?」
人の気持ちも知らずに好き勝手を言う。
「……村のヤツラになんか言われたのかよ?
依頼されてた事は、ちゃんとやったんだろ?
ならそれでいいじゃねぇか?」
「二つ、失敗した」
「ああ、聞いてるよ?
なんだっけ?
お前が採ってきた物が、実は村から言われてたものと違ったんだっけ?
そんで、狩った大型の魔物の狩猟した証拠も、
結局、獲らずじまいで逃げ帰ってきたってヤツ?」
「……」
「だから黙んなってッ。
最初の仕事なんだから失敗ぐらいあるさッ。
……ところでよォ?
その見逃した大物ってどんなのよ?」
「……竜」
「竜?竜って、どんな竜よ?」
「黒い、獣のような全身が毛だらけの竜……」
「そいつ、翼は?」
「……あった」
「大きさは?」
「二階、……いや三階建ての家ぐらいかな……」
「比較的、おとなしそうか?」
「竜に会ったのはあれが初めだったんだから、そこまで分かるわけないだろ。
でも、あんまり攻撃的じゃなかったかな?」
それを聞いて、
パンダがしばらく黙っている……。
「……なぁ?
それって、ひょっとして……アレか?」
パンダが不可解そうに首を傾げたまま川の対岸を指す。
農園の左側に流れている大河の反対側の岸を指差して、
採掘に没頭する少年に訊ねてくる。
パンダが指差した方角を、
少年も見ると……やっぱりツルハシを落とした。
「うおっ、と、っぶねぇな!こんな高いとこでそんな重いモン落とすんじゃねぇよっ!」
パンダは激怒するが、今はそれどころではない……。
「なんで……、あいつが……」
川の対岸、
普通のテレビゲームだったら、
まず絶対に侵入できない景観だけでしかないはずの盛り上がった陸地に、
黒い毛の竜が現われて、お座りしている。
「……あ、あーあ。
あれ、「幻獣」だな」
「……幻獣?ああいう毛だけの竜って「神獣」じゃないの?」
「いや、あいつは神獣じゃねぇ。
神獣に「黒色」の竜はいない。
神獣にだって甲殻系の表皮をもった竜はいる。だが黒がいないんだよなぁー。
幻獣の方でも同じだ。
幻獣の竜に白い色のヤツはいない。全身が毛だらけの竜はいてもだ。
……お前さん?なんか持ってねぇか?
普通、あんなおっかねぇ幻獣がこんな人里まで来ねえよ。
来たら大騒ぎだ。こいつはあのお前の親分が出張ってくるほどの大事だぞ?
ほら、上の村の方でも騒ぎがデカくなってきやがったじゃねえか……。
声が聞こえねぇか?
あれ、このままにしておくと、
すぐに村の駐在舎にいる騎士たちまで出てくるぞ?
どうすんだ?
あの竜、ジーっと、お前のこと見てるけど?」
パンダが呆れて言うと、
少年は一つだけ心当たりのある「アイテム」を取り出した。
「なんだそれ?黒い宝石だな?それを狙って来たのか?あいつは?」
「いや、実はこれ、最初、赤かったんだ。
でも村に帰ってきて改めて見たら黒くなっててさ?
それで村の人たちにも気味悪がられて……」
どのような宝石であれ、採掘後に色を黒に変える宝石は不吉である。
そんな事を言われて「依頼は失敗だ」と言われたのだった。
「……じゃあ、それだな。それで間違いない。
どうする?それ持ってるとアイツ、お前に襲いかかってくるかもな?」
「じょ、冗談じゃないぞ、そんなのッ!」
大声を出して、
握っていた黒い宝石を、いきなり思いっきって振りかぶると黒い竜に目掛けて放り投げた。
投げられた黒い宝石は大きな弧を描いて竜に向かうと、
黒い竜が待ってましたと言わんばかりに口を大きく開けて、パクリと黒い宝石を口に頬張るとゴックンチョ!と飲み込んだ。
「……あ……」
「……え?……」
「……あ~あ……やっちまったよぉ。
お前さん、いま一番やっちゃいけないことをやっちまったよ。
それ、餌付けだ。
竜に、
餌をやって、
手懐けた。
これでアイツは召喚獣だ。立派な幻獣の召喚獣。
名前、付けてやれよ?
それでアイツはお前のお仲間の一員だ。
お前がアイツに付けた名前が、召喚獣の『技名』になるっ」
パンダに大々的に言われて、
少年の思考は真っ白になって止まってしまった。
遠くで、
ファア!ファア~ア。
と嬉しそうに早くも馬車にでも駆け込みたい竜が声で鳴いた。
ドラゴンが仲間になった!
\ンデ、デデデデデデン♪ンデ、デデデデデデン♪/
\デンデケデケデケデケデケデケデェケ・デェン・デェーン♪/
(仲間になった時の音楽のつもり)
(※お好きな次回予告BGMを鑑賞しながらお読み下さい)
【次回予告】
千文字で終わらせようと思ったら二千文字寸前になってしまった悲劇。
どうする?この時点で別作品「地球転星」のお話は次回の三千文字分までしか書けていないぞッ!(あ、ネタバレ!)※2019/05/11/17:20現時点での進捗です。
一つの作品で別の作品の事を書くのはご法度中のご法度ッ!
ああ、この作品の愛読者様が、著者であるワタシを白い目で見ているこの地獄ッ!
次回! この作品の五月分は予約し終わった! かんたんファンタジー 第16話。
『世界地図』
モンスター系の仲間が増えたので、行動範囲がぐっと広がったワクテカが始まる!
(デン♪デンデデデン♪)
次回もまた読んでねー!!♡




