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かんたんファンタジー  作者: 挫刹
†冒険の仕方
13/66

・採取



 村を降りると、雪の残る野原に出た。

 雪よりも草の方が多い野原だった。

 広い野原の左手には大きな池があった。

 遠くを水源とする大きい池が、水辺の畔として野原に波を打っている。

 

 残念ながら、

 水辺の近くに、マンモスに似た動物はいない。


 空は曇っていた。

 今にも振り出しそうな雪雲が、南の空に垂れこめている景色。

 

 雪雲で低く埋まる南の空には、ひときわ高くそびえ立つ、切り立った凍山があった。

 暗い黒い雪雲に分厚く埋もれてそびえる凍てつく岩山。


 その南の岩山が、

 雪解けの野原から見上げる少年の、これから仕事場となる場所だった。


 世界に数多くある禁域テスタルの一つ、霊凍峰ヒグナス。

 一日も晴れることのない黒雲に包まれた頂上には何があるのか……。

 世界を滅ぼす伝説上の魔獣、神獣、幻獣が常に棲みつこうとする暗黒の霊山。


 ……吹き付ける風が冷たい。


 池の水も凍えだす雪溶けの空気の中を走って、

 今日、手に入れなければならない目的の物を探すために、

 暗い岩山の方角へと向かって行く。


 今日、受けた依頼オーダーの一つ目は、

 『白雪イチゴ』を三つ採取する、ことだった。


 初日の依頼としては簡単な部類だろう。


 この凍える凍山の周辺で、今日一日のノルマを達成しなければならない。


 雪解けの野原の脇を走り抜けながら、

 奥にある岩山へ続く道へと、分け入っていく。

 道は『当代』が既に作ってくれていた道だった。

 当代とは霊凍峰ヒグナスの現監理者のことを差して云う。

 

 少年、アズル・アズアールは当代の監理者の後継を期待されて、

 この村に呼ばれてきたのだった。

 その当代はすでに凍山の頂上付近にいることだろう。

 いったいそれだけの実力が身に付くまでに、どれだけの年月がかかるのか?


 仕事初日から途方もない、いらない事を考えて辟易としながら、

 岩山へと続く道を登って行くと、積もる雪が深くなり道も険しくなる。


 麓の野原から初心者向けの登山の標高ほども登ると、

 開けた雪高原の広場の脇で不釣り合いな『草むら』を見つけた。

 すぐに駆け寄ってゴソゴソと手をつっこんで調べてみた。


 白雪イチゴを見つけた。


 もう一度、ゴソゴソと掻き分ける。


 白雪イチゴを見つけた。


 もう一度、ゴソゴソと調べてみた。


 白雪イチゴを見つけた。


 粉雪が散らばる草むらからむしり取った、

 白い雪漬けまみれのイチゴを三つ腰カバンに大切に入れて立ち上がる。


 これで目的の収集物の依頼は完遂した。


 周囲を警戒する。


 大体こういう簡単な作業を達成させた時には決まって、

 突然、どこからともなく手に負えない強敵が現われて逃げ回らなくてはならない状況に陥ってしまうのが初日の仕事の典型的なオチだろう。


 そんな事を想像して、少年は警戒を怠らなかった。


 さてと、無事に帰るまでが『冒険えんそく』です。


 ところが、少年にはうっかり忘れているものがあった。


 今日、村から受けていた依頼は、果実の収集だけではなく……、


 『強奪』と『狩猟』も請け負っていた……ッ(超汗ッ!)






(※お好きな次回予告BGMを鑑賞しながらお読み下さい)



【次回予告】


 新社会人の為に用意された「始めてのお仕事」というモノには、

 最初は簡単なことから……、などという、夢見た「甘え」など存在しないッ!

 押し付けられた最初のお仕事には、常に「即戦力」を期待するッッ!!!

 達成困難な「新人潰し」の難関が抜け目なく用意されているもの。

 そこでふるいに掛けられて、

 初めて雇用主は自分で自分の首を絞めていくのだ……ッ!

 人手不足という自業自得の因果応報をッッッ!!(恨み)


 おっと、個人的な感情が出てきてしまった……、


 次回! ここでも深刻な労働力不足に苛まれる、かんたんファンタジー 第13話。


 『回収』


 あれだけ大変は就職活動を切り抜けて勝ち抜いて手に入れた内定だった筈なのに、

 もう退職を考えているのは、

 どこの世界でも同じなのかもしれない……(デン♪デンデデデン♪)


                         来週もまた読んでねー!!♡



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