・出発
半ば強制的な朝食も終わって自室のある民家を出た。
冷たい空気が流れている。
この村に来て初めての朝……、
昨日の散策で村の一通りのことは把握できた。
二階を自室として借りている下宿屋、
農園、道具屋、武器屋、防具屋……、
……なぜか昨日のことについて、
あまりいい思い出が浮かばないのは気のせいだろうか?
いったい昨日、自分は何をやっていたのだろうかと恨みたくなる。
悩む思念を振り払うようにして、下宿屋から走りだすと、左手の下り坂を下った。
坂を下れば一段、低くなった村の広場にでる。
下宿屋の一階にもつながる村の広場。
「お?ボーズ、今日から仕事初めかっ?」
「おやボーヤ、村の外に出るなら気を付けて行ってらっしゃいよッ」
暖かな格好をした村人たちが自分に声援を贈ってくれている。
「あーっ、昨日のキミ、これから仕事なんだ?がんばってねー」
「夕飯はなにがいい?すっごいの用意しておくよぉ」
「防具、壊れたら言ってね?いつでも癒してあ・げ・る♡」
「あ、あの、私、道具屋の子供で……」
「酒場にも寄ってってよッ?サービスしちゃうんだからっ」
「下宿屋飽きたら、いつでも宿屋に来てねー」
…………増えてる?
大小さまざまな、これから学校なのかもしれない色とりどりの黄色とピンクの声が降ってかかり、
広場の脇を駆け向けていく少年の顔は引き攣っていく。
「なんだ?きみ?そっちは反対だぞ?」
「黒圏に行くんじゃないのか?ぼく一人でどこに行くつもりだい?」
「いや、あの子は確か地元の子だ」
「地元?」
「この村に新しく就いた見習いの禁域管理者だそうだ」
「エ、エリアマイスターだってッ?
それって、あのダンジョンマスターのことかッ?
あんなガキが、
オレたち冒険者じゃなくてッ?」
特定の偉業や目的地を目標として目指して、研鑽を積みながら旅をする者。
それが冒険者。
そして、
ある特定の一つの地域を集中的に見守り、経験と知識を積み重ねつつ管理する者、
それが禁域管理者。
禁域管理者は俗にダンジョンマスターとも呼ばれ、
時には、ガリバーの対義語としてセーバーとも呼ばれる。
禁域の監理者
はしゃぐ少女たちと驚く大人たちに見守られながら……、
村を駆け下りていく、
自分の任された雪雲に覆われるそびえ立った禁域の入り口へと向かう、
マントを翻した少年は……、
そのタマゴだった……。
(※お好きな次回予告BGMを鑑賞しながらお読み下さい)
【次回予告】
村を駆けだしていく新生活を始めた少年はカッコイイ!
しかし、そこで少年に何をさせるのかはまったくもって考えていないッ!
こんな無責任な著者のカミングアウトが、
貴重な読者さまを絶望のドン底に叩き落とした時、
物語の神様は、またもや今回も適当に舞い降りてくるのだったッ!
次回! 基本的なことから新生活を始めたい、かんたんファンタジー 第12話。
『採取』
まずは見習いの仕事は、
初日で辞めたくなる下働きから始まるのが人の世の常…(デン♪デンデデデン♪)
来週もまた読んでねー!!♡




