ニート
温かい目で見てくれると助かります。
「もうこんな時間か」
パソコンの時計を見ながら俺は呟く。
「そろそろ仕事の時間だな……親が」
ちなみに俺は26歳の無職である。
などと思っていると玄関から母親の声がした。
「竜馬、仕事行ってくるわよー。あんたも家に篭ってないで早く仕事見つけなさいよ」
そう言って母親は仕事に行った。
「わかってるよ…」
俺だって好きでニートをしている訳じゃない。
俺がニートになった理由はただ就職に失敗したからだ。どこの会社に行っても内定がもらえなかった。
俺は大学には行かなかったが、高校での成績が悪かったわけではない。むしろあの学校の中では良かった方だ。なのに俺は就職に失敗したということはおそらく俺は就職に向いていないのだろう。そして俺は就職に対してのやる気を失いニートになった。
つまり悪いのはこの世界だ。
「そういえば今日ゲームの新作発売日だったな」
俺は自分の財布の中身をみる。
「ぎりぎり足りるか」
そう言って俺は服を着替え家を出た。
俺はゲームを買いに行くためでしばらく道を歩く。すると1人の女性が声をかけてきた。
「あれ枷くん?」
「……あ」
「やっぱり! 枷くんだ!」
「水無月さん…」
声をかけてきた女性の名前は水無月由羅。俺の高校時代の先輩で俺が所属していたバスケ部のマネージャーだった人だ。かなりの美人で当時、学校のマドンナで男子からとてつもない人気を誇っていた。
「枷くん久しぶり」
「…お久しぶりです」
相変わらず美人だなーと思っていると彼女はとんでもないことを聞いてきた。
「枷くんは今何の仕事しているの?」
まじか。どうする?正直に言うか?だが「俺ニートしてます!」なんていったら確実に気まずい雰囲気になるだろう。しょうがない。
「警備員をしてます」
「へぇ〜警備員ね。 すごいね」
「あ、ありがとうございます」
よし!すこし良心が痛むがあながち間違ってはいないだろう。そう思っていると俺はあることに気づいた。
「先輩それ…」
「ああ、これね」
そういうと彼女は自分の左手を見せてきた。その彼女の薬指には指輪がはめられていた。
「私、水無月じゃなくて、工藤になったの」
水無月さん…いや工藤さんは愛おしそうに指輪を見ながらそういった。
「そう…なんですか」
「あ、そうそう山岡くんも去年結婚したんだよ」
「ほ、本当ですか!?」
「うん。本当だよ」
山岡俊吾は高校時代の俺の友人で同じバスケ部で活躍したいわば親友だ。
「枷くんならもう知ってると思ってたんだけど知らなかったんだね」
そうだ。俺は就職に失敗して以来誰とも連絡をとっていない。…ボッチじゃないぞ。いるぞ友達、画面の中にな。
「あっ、もう時間だから行かなきゃ。 じゃあね枷くん!」
そういうと彼女はその場を去った。
「みんなもう自分の家庭を持って幸せに暮らしているんだ…」
多分俺は1人だけまだ高校時代で時が止まっているんだ。俺はそう感じた。
まぁどうでもいいんですけど。俺悪くないし。悪いの世界だし。
そうして俺はゲームを買い家に戻った。
「なんなんだこのゲームまったく面白くないな」
俺がさっき買ったゲームは戦闘のシステム、ストーリー、登場人物が絶妙に絡み合い見事にくだらないゲームになっていた。
「ここまでつまらないゲームを作ることができるのも才能だぞ」
俺はゲームをやめベットに横になった。
「あーあ、異世界転生でもしないかなー」
俺がニートなのはこの世界が悪い。この世界は腐っている。異世界なら俺はうまくやっていける自信がある。
そう思いながらニートの1日は今日も過ぎて行く。
最後までご覧いただきありがとうございます。