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蛇
とおいむかし
信じていたかった子ども
夕焼けは黄昏になった
おとなたちは黙ったまま
黒い服で傘をさしていた
虹が出ると蛇が出た
誰もが恐れ誰もが大切にした
母のとき
祖母のとき
父のとき
祖父のとき
いつも青い蛇を見た
あれは静かに育っていた悲しみだろうか
あれは一匹だけ残った
残されてしまうものとして
幾冬を越え
幾夏を過ごし
冷たさは変わらぬままに
熱さはいつも忘れられた
お前はわたしを見ていなかった
いつも棺を見つめ
葬列の馬鹿馬鹿しいしめやかさを見た
何れも変わらないものたちを
またあの窪地に熱が籠り
そしてこの庭に春が来る
それでもお前は隠れているだろう
そのことが死とは関わりあわない限り
いつもそうやって繰り返した
不思議なことに冬には誰も死ななかったから
誰もが雨に送られた
その雨はぬるく生臭かった
四度の葬儀に四度蛇を見たのです。何時もの青大将が見送るのです。そしてそれは見るたびに育っているのです。