第九十八話 結末の結末
第九十八話 結末の結末
「と、とと、止まった」
リッシュがそう呟いた。皆は唖然とただただ巨大な悪魔の巨大な火の玉を見上げた。
「来る!」
あるものは目を瞑り、あるものは見逃すまいとその状況を見ていた。
「テールーー!!!!」
しかし、ムリュウが呻き声をあげた時には、火の玉が萎んでいった。だんだんと小さくなっていく火の玉はいつの間にか消え去ったのだ。
「もしかして!」
そうリッシュは嬉しそうに声をあげた。
「麻痺、毒、眠気のどれかが効いてきた! 時間がかかったってだけだったのか」
そうして、何もなかったのかのようにムリュウは消え去った。しかし、消えたのはムリュウだけではない、輝もだった。ムリュウに供給しなければならなら魔力が増えた上に、その大技は魔力源である輝にこたえた。そうして、輝は負担のかかりすぎで機力切れになってしまったのだ。
「あれ、私勝っちゃった! やったー!」
嬉しそうに飛び跳ねるリッシュを見て、マルチリストは皆で顔を見合わせた。
「「おい、テル!」」
皆はそれぞれ思うことがあるだろうが、それが現実。そして、輝が機力を全開したころにはもちろん四国戦争は終わっていたのだ。
「(ここは!?)」
[部屋ですよ。現実です]
「(えっと、あの後どうなったんだっけ?)」
[機力切れですよ]
「(いや、そうじゃなくて戦争の結果だよ)」
[わかりませんね、サクラ先生にでも聞けば……]
「トントントン」
輝の部屋のノックが三回ほど叩かれた。
「入っていい?」
それはサクラの声だった。
「あぁ、はい!」
輝は急いでベッドから降り、溜まり込み腐りかかった食事を片付けた。そう、寮では、特にこのA組では、食事は基本部屋に届き、返却の際は扉の外に出しておくルールなのだ。
そうして入ってきたサクラは輝に興味をそそるようにいった。
「知りたいでしょ?」
「結果を! はい!」
「何、いい子じゃない。まぁ、最終決戦から話してあげるわ」
そうして、サクラによるサクラ対スカーレットの戦いを説明に入った。
「えっと、まずテルがいなくなって、リッシュが勝った事になってね、二対二でしょ。だから王どうし、つまりスカーレットと戦う事になった訳。
まず、私は彼の魔法をよくは知らないでしょ。でも、彼は私が氷を使うって知っている。その時点で彼がかなり有利だったんだけど。すぐに魔法を使ってくれてありがたかったわ」
「つまり、勝ったと?」
「待って待って。ちゃんと話を聞く事」
「ってことは、スカラが!」
「だからいってるでしょ、話を聞きなさいって」
輝は自分の好奇心を抑え殺した。
「それで彼はとにかく速かったのよ。まぁ、どんな魔法を使っても避けられたわけ。でも、それは彼にとっても攻撃ができないことは一緒だったの。だって、彼ってただ速いだけでしょ。だから、私の氷の鎧を破られなかったの。
でも、形勢はいきなり変わったの。スカーレットが取り出したのは熱を出す剣。つまり、私の魔法を知っていて対策を立ててたらしかったのよ」
「おぉ、じゃ、スカラの勝ちだな」
「最後まで聞きなさいって! 私がそんなに弱いと思う? 自分では言いたくないけど、私かなりのゲーマーよ」
「それぐらいは知ってるよ。まず、このゲームで王様やってる時点でかなりでしょ」
「それなら、スカーレットだって」
「それで結局どっちなんだ?」
「それで、私の氷の鎧を溶かしたの。まぁ、私が逃げても追い付かれてね。氷の上を滑ってたのに、本当に速いの」
「そりゃな」
「それに加えて、あなたのカプセルっていうの。あれを使ってスターテスを強化って、本当に困らされたわ」
「その言い方だと、勝ったんだな」
「わかったわよ。簡潔に言えばいいんでしょ! 最近の若い子は!」
「なんか、キャラぶれてないですか? 今更ですけど……」
「そういうもんよ。私の場合はゲームで結構変わるし、多分どの生徒もよ。結構、休みっていうのは素が出ちゃうからね。テル、あなただってこんなに敬語使わなかったわよ」
「(そうか? まぁ、とにかく)それで結果は?」
サクラは一息ついて話し始めた。
「だけどね、私にはある作戦があったの。それも、氷、冷気でだんだんとスカーレットの速さが鈍ってきたのよ」
「でも、動いているからその分温まっていそうだけどな」
「また、わざと崩して。そう、だから思った以上に時間がかかったけど、結局は体が凍り果てるほどに冷え切ったのろまなスカーレットを一撃ってわけ」
「やっぱり、サクラが勝ったのか」
「そうゆうこと」
「それで賞金か何か手に入ったのですか?」
「勝利国として幾らかのゲーム内通貨、ちなみにこれでショッピングもできるのよ」
「後?」
「後はそれぞれのなんとか賞とかがいろいろあってね。例えば、笑っちゃったのが虫を全て集めたで賞もらってたわ」
「それって……(誰だっけ)」
[タルンです]
「タルンって人か?」
「そうだったような。何知ってるの?」
「その人を手伝って百コンクを手に入れたんだ」
「へぇー、後オークションで賞とか、一番殺したで賞。私は二つもらったわ。えっとね、勝利に導いたで賞と一番早く王になったで賞の二つをね」
「えっと、それって死んでてもあるんだよな」
「そうよ、だからここにきたんじゃない」
「俺はどんな賞を!!」
「あなたは三つあったわ。悪魔と契約したで賞と正規の道を通らなかったで賞だっけ?」
「後もう一つは?」
「えっと……… そう、そう、一番機力が切れたで賞だわ」
サクラは笑って答えた。
「それで何がもらえるんだ!」
「そりゃ、ゲーム内通貨よ。それでも色々買えるのよ。後、このそれぞれの賞にはスポンサーがついてたって知ってた?」
「どういうこと?」
「つまり、街にあった店とか、レストランとか、そういうところが実際にこのゲームをサポートしてたってわけ」
「へぇー、なんか全然気にしてなかったな」
「まぁ、それで結構な額を私はもらえたけど、テルはどうかなっと思って来たってこと」
「確認すればいいんだろ」
輝はE-gameを開始した。そして、すぐに戻って来た。
「えっと、二千何たらイーグだって」
「えぇ!?」
「だから、二千何とかイーグだって。サクラはどんだけ貰ったんだ?」
「私は……千八百五十イーグ……」
「でも、サクラ勝ったよな」
「……なんでよ!」
「いや、俺に言われても……」
「それで何に使うの?」
「そんなこと言われても…… 今度考えておくよ」
「今度!? 明日から学校だよ! 授業だよ! 今まで何してたの!」
「いや、サクラ先生がこれをやれって……」
「テル、あなた勉強を舐めすぎよ、今すぐそのゲームは取り上げさせてもらうわ」
「それって、俺のゲームマネーを取ろうって思っているんじゃ?」
「何言っているの! ただ、学校が始まるから没収ということです」
「(まぁ、もともと特に興味ないからな……)どうぞ」
「何、素直ね」
そう言って、サクラは輝に渡したE-gameのイアホンを取って輝の部屋を出て行った。それも嬉しそうに……




